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週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

  • 2004年03月09日(火) 12時19分
 3月2日(火曜日)にカリフォルニアのフェアプレックスパークで行われたバレッツ・マーチセールのレポートをお届けしたい。

 まず、通例の2歳セッションに先立って行われたサラブレッドコーポレーションの現役馬ディスパーザルは、52頭が総額645万ドル、平均価格124,100ドルで売却された。最高価格は、セールのわずか2週間ほど前にサンタアニタのG2ラカナダSを制したばかりの4歳牝馬キャットファイターに付いた135万ドルだった。

 サラブレッドコーポレーション・ディスパーザルにおける日本人購買馬は、G1ハリウッドダービー勝馬ポリティカルアンビションの姪にあたる4歳牝馬ヤサラム(父グランドスラム)と、母がG1ゲイムリーH勝馬オーリエッタという3歳牝馬イラストレイト(父キングマンボ)の2頭。ともに未出走馬のため、規約上は日本で走らせることも可能だが、おそらくはともに繁殖牝馬として供用することを目的とした購買と思われる。

 さて、メインとなる2歳セッションだが、こちらは総売り上げが前年比12.3%アップの1,372万ドル、平均価格が前年比22.3%アップの173,772ドル、中間価格が前年比66.7%アップの10万ドル。前年48.5%だったバイバック・レートが今年は38.3%と、すべての指標が前年より向上する盛況に終わった。欲を言えばバイバック・レートがもう少し下がって欲しいところだが、中間価格の上昇が平均価格の上昇を大きく上回ったという事は、中間以下の価格帯が活発で市場が下支えされた事を意味しており、中間価格の伸びが平均価格の伸びを大きく下回った1週間前のファシグティプトン・コールダーに比べて、市場としては遥かに健全であったと思う。

 最高価格は、上場番号81番の父オウサムアゲインの牝馬。牝馬としては2歳セール史上のワールドレコードとなる200万ドルで、シェイク・モハメドの代理人ジョン・ファーガソン氏が購買した。血統的にはさして見どころのある馬ではないが、時計の出づらかった1回目の公開調教で1F=10.2秒の好タイムをマーク。5月10日生まれでまだまだ成長が見込めることもあって、この高額となった。

 日本人によると見られる購買は、昨年と全く同じ11頭。日本人による購買馬の最高価格は、30万ドルであった。前週のファシグティプトン・コールダーに比べると、随分ショボイと思われるかもしれないが、実はファシグティプトン・コールダーだって、異次元の世界からやってきたかの如き関口房朗氏による購買馬を除くと、日本人購買者の最高価格は32万5千ドルだったのだ。

 ここへ来てようやく、未曾有と言われた大不況の出口が見え始めたと言われる日本。回復基調にあるとは言え、現在の経済的状況は、ブラッドストックマーケットにおいては概ねその辺りの価格帯が購買対象となる段階にあるようだ。見方を変えるならば、投機的マネーゲームへの参加は控え、よりリアリスティックに、よりスマートに市場をさばいたのが日本人購買者と言えるだろう。先週のファシグティプトン・コールダー同様、バレッツにおいても、日本人購買馬はコスト・パフォーマンスという点で非常に優れたレベルにあることは間違いなさそうだ。

 中でも、上場番号84番の父プルピットの牡馬、上場番号110番の父ミスターグリーリーの牡馬、上場番号133番の父ジェントルメンの牡馬、上場番号216番の父インディアンチャーリーの牡馬らは、追い切りで抜群の動きを披露。また上場番号218番の父ジャイアンツコウズウェイの牝馬のように、母がG1勝馬という良血馬もおり、今年のバレッツ出身馬は、POG戦略上見逃せない逸材を数多く内包していそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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