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“ファンサービス委員長”後藤騎手の思い出/トレセン発秘話

  • 2015年03月04日(水) 18時00分


◆現役時代に魅せてきた騎乗、振る舞い、言動など、実際に見てきた人間がそれを後世に伝えていくのは必要なことだと思う

 亡くなった後藤浩輝騎手の思い出を振り返ってもらおうと、ある関係者に話を伺ったところ、返ってきた答えはこうだった。

「彼のことはもう思い出さないようにしている。僕らは勝負師。後ろばかり振り返っているわけにはいかないから」

 確かに、いつまでも過去のことを引きずっているのは後ろ向きな生き方だし、勝負師としては適していないのかもしれない。しかし、あれだけのジョッキーが、現役時代に魅せてきた騎乗、振る舞い、言動など、実際に見てきた人間がそれを後世に伝えていくのは必要なことだと思う。

 競馬パーソナリティーの鈴木淑子さんから聞いた話がある。東日本大震災と福島原発事故で1年5か月もの間、休止していた福島競馬が「復興祈念競馬」として再開した2012年4月7日。午前中最後の第5Rの勝ち馬を表彰する時、突然歓声と拍手が起きたのだという。

「会いたかったぜ、福島ぁ〜」

 ウイナーズサークルに自前の応援幕をファンに向けて掲げる後藤騎手の姿がそこにあったのだという。

 震災を乗り越え、待ち望んでいた地元の競馬をやっと見ることができた福島のファンにとって、このメッセージはたまらなかっただろう。

 ネットには今、昨年の有馬記念前に徹夜をして並ぶファンのため、後藤騎手がプレゼントしたというサイン入りカイロの画像が出回っている。

 果たして今、日本のジョッキーの中でここまでファンサービスができる人間がいるのだろうか?

 自ら「ファンサービス委員長」と名乗っていたという後藤騎手。日本の競馬界にとって、かけがえのない人間を失ってしまった。
 (栗東の坂路野郎・高岡功)

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