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春の嵐

  • 2015年03月11日(水) 18時00分
爆弾低気圧の影響で3月としては異例の悪天候に見舞われた北海道

爆弾低気圧の影響で3月としては異例の悪天候に見舞われた北海道


そうは簡単に行かないのがこの時期の北海道の気候だ…

 今年の日高の冬は、例年よりも暖かく経過し、積雪も少なかった。1月、2月はいずれも例年の平均気温を上回っていた。その後も順調に雪融けが進み、このまま順調に春を迎えられるのではないか、とつい数日前まではみんなぼんやりと考えていたのだったが、どっこいそうは簡単に行かないのがこの時期の北海道の気候だ。

 昨日(3月10日)は雨で始まり、3月にしては結構な雨量を記録したのだったが、午後になってから徐々に雨が雪へと変わり、それがだんだん激しくなって、見る見る間に積り始めた。

 海岸に近い牧場の放牧地には、先月下旬あたりからほとんど雪が消えており、連日の暖気で表土が露出し、日中などはぬかるみになっていたりするほど。本来ならば、この後、日増しに少しずつ乾いてきて、やがて枯色の間から牧草の新芽が出てきて、馬たちはそれを摘んで食むようになる。

 だが、今回は、季節外れの爆弾低気圧が、いつもと違うコースで北海道上空を通過し猛烈に発達したことから、日高では、3月としては異例の悪天候に見舞われることになった。

 昨日の午後を中心に、重く湿った雪が降り続いて止まず、新ひだか町〜鵡川にかけての国道は、大渋滞になったという。

 浦河などの日高東部もかなりの積雪だったが、新ひだか町以西が今回はより多く積ったらしい。新冠町の大狩部(おおかりべ)から日高町厚賀にかけて、時ならぬ大雪のために坂を上がれなかった大型トラック(トレーラー)が国道を塞ぐ形になったらしく、それで渋滞がさらにひどくなったと聞く。また事故も多発したらしい。言うまでもなく、日高の場合は、門別以東は海岸沿いの国道一本に頼らざるを得ない道路事情なので、ひとたび国道で足止めされると影響がひじょうに大きい。

 知人によれば、苫小牧から厚賀まで、通常ならば1時間程度で走れるところを、昨日は5時間もかかったとか。下手に出かけていたら、帰り道はとんでもない目に遭うところであった。

 いつもならば、日高の場合は、真冬に降る雪はサラサラのパウダースノーである。湿った雪質が大量に降るのは、この時期だと主として十勝地方で、日高は背後に日高山脈が立ちはだかっているため、風も弱く雪も少ない。道東が大荒れの場合でも、割に平穏に済むことがほとんどだ。しかし、今回は、日高沿線に沿う方向で南東から強風が吹き込み、雪雲が次々に侵入して沿線に大量の湿った雪を降らせた。平取町旭では一気に70センチ以上の積雪となったらしいし、新冠のサラブレッド銀座周辺でも40〜50センチは積っているという。

 昨夜は、遅くなってからようやく雪が小降りになったものの、時々、停電も発生した。電線に湿った雪が付着したまま溶けないため、重みで垂れ下がり、切れるというような二次被害も発生したのであろう。停電になると、普通の家庭は暖房も止まってしまうことになるので、冬は日常生活への影響がことのほか大きい。

 一夜明けた今朝、昨日とは逆の西寄りの強風に変わっており、気温が一気に低下していた。どんよりと曇っており、昨日積った雪が溶けずにそっくり残っている。除雪しようにも湿った雪は水分を含んでいて異様なほど重く、厄介なことこの上ない。

 いずれ溶けるとはいえ、これだけ一気に積ってしまうと、馬業界にも影響が出てくるだろう。すでに早い牧場では交配が進んでおり、国道は馬運車が行き来するようになっている。昨日などは大渋滞に巻き込まれた馬運車も出たはずだ。また生まれたばかりの当歳を放牧するにしても、大量に積もった雪が邪魔になる。

 こうして一進一退を繰り返しながら春に近づいて行くのが北海道の3月の気候の特徴だとはいえ、それにしても、近年は天候の荒れ方が尋常ではないような気がする。ひとたび低気圧が発達すると、予想を超える猛烈なレベルまで成長し、生活や仕事を直撃するほどの厄災をもたらす。

 昨夜は千歳空港で1000人以上が足止めされ、空港ターミナル内で夜を明かしたらしい。2本ある滑走路が除雪のため閉鎖されたことにより、欠航が相次いだのが原因だという。

 真冬に逆戻りしたような寒さで、今回の雪は当分消えそうにない。来週からは門別競馬場で2歳馬の能力検定も始まるが、予想外の積雪に戸惑うばかりである。予報では明日まで吹雪模様だとか。日高の春はいつになることだろうか。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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