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ばんえい記念

  • 2015年03月25日(水) 18時00分
ばんえい記念直前のスタンド

ばんえい記念直前のスタンド


帯広競馬場の一年をしめくくる「ばんえい記念」

 帯広競馬場の一年をしめくくる「ばんえい記念」が、3月22日に行なわれた。この日は、前日の好天とはうって変り、未明から霧雨そして夜明けとともに小雪の舞うスタートになった。午前6時の調教見学になっても、どんよりと曇り、朝日は拝めない。

 調教見学には熱心なファンや取材陣など20数人が参加し、約1時間半かけて、調教場で朝調教を見学していた。この季節になると、日の出が早くなるので、午前6時にはすでに明るくなっている。12月〜1月のように、真っ暗な中からスタートして見学の途中で顔を出す太陽光線をバックに写真を撮るということはできないが、その代わり厳冬期のような気温の低さもない。ばんえい記念観戦に遠征してきた本州方面からのファンは、前日入りし、この調教見学を申し込む人が大勢いるので人気が高い。間近で馬たちの息遣いを感じられるので毎回好評である。

 開門はいつもより早い10時半。入場門の前には30分前くらいからファンが集まり始めた。門が開くと一斉に人々が入場してくる。場内では、保存会による法被姿の「音更駒太鼓」の子供たちが演奏を披露し迎える。リッキーも馬車を曳いて待機している。スタンド入口では甘酒のサービスもある。特別なこの日を盛り上げようという雰囲気が伝わってくる。

法被姿の「音更駒太鼓」

法被姿の子供たちが「音更駒太鼓」を演奏を披露し迎える



 第1レースの発走は11時半。3歳C-2戦で幕を開けた。この日は、個人協賛レースはなく、企業団体のみの受付となっているようで、UHB(北海道文化放送)、釧路や地元十勝などの馬事振興会青年部、十勝毎日新聞社、北海道新聞社、オッズパーク、楽天などの名前がレースの冠に並んでいる。

 メインの「ばんえい記念」は今年で第47回を迎える。第10レースに組まれており、発走予定時刻は5時10分。それまでの間、著名人による予想検討会や、ばんえい記念に出走する騎手紹介などがレースの合間に行なわれる。

 小雪は幸いにも午後になり止んだが、どんよりと厚い雲に覆われてなかなか気温が上がらない。そのせいか、スタンド内部はぎっしりで、暖房も効いているので汗ばむほどだ。しかし、外は寒く、埒沿いで声援を送る熱心な人々は、多くが本州方面からのファンであった。

 全11レース中、後半の6レースがすべてオープンクラスによるレースであった。3歳以上の牡牝にはそれぞれ地元の新聞社杯がついていた。

 第9レースが終わり、いよいよメインの「ばんえい記念」に出走する10頭がパドックに姿を現す。パドックには多くの人垣ができている。かなりの人々が手にカメラを持っている。1番人気は昨年、このレースを制した1.インフィニティー(鈴木恵介騎手)。続いて8.キタノタイショウ(大河原和雄騎手)、そして昨年2着のフクドリ(安部憲二騎手)という順である。ただ、抜けた存在がおらず、人気は割れている。1着賞金は800万円。朝方より降り続いた小雪のために馬場水分は高めに推移したが、メインの頃にはそれでも2.4%まで“回復”していた。

 レースは1.インフィニティー、10.フジダイビクトリー(松田道明騎手)、6.ニュータカラコマ(藤野俊一騎手)が先に第二障害を超える中、4番目に坂を上がった8.キタノタイショウが、最後の直線で怒涛の追い込みを見せ、念願の初優勝を成し遂げた。勝ちタイムは3分49秒9。2着は6.ニュータカラコマ。3着は昨年の覇者インフィニティー。外枠で逃げ粘ったフジダイビクトリーはゴール前で止まり、5着に敗退した。

キタノタイショウ

念願の初優勝を成し遂げたキタノタイショウ



 また4.ファーストスター(西将太騎手)は第2障害で躓き、大きく遅れたものの、13分27秒でゴールインすると、場内から大きな歓声や拍手が巻き起こった。重さ1トンを曳く「ばんえい記念」は、こうして最後の馬がゴールするまで応援するのが恒例で、むしろ優勝馬がゴールした時よりも大きな歓声が上がっていたほどだ。

フジダイビクトリー

ゴール前で止まり5着に終わったフジダイビクトリー



 優勝したキタノタイショウは、牡9歳栗毛。父ダイヤキンショウ、母優奈という血統で馬主は木下英三氏。大河原和雄騎手は01年サカノタイソンに続いて同レース2度目の勝利。また管理する服部義幸調教師は、同レース初勝利であった。レース後、大河原騎手は「昨年、怪我(アキレス腱切断)でこのレースに出られず、悔しいのと申し訳ない思いを抱えながらおりました。何とか借りを返せたような気がします」と語った。

大河原和雄騎手

2度目の勝利となった大河原和雄騎手



 また、初制覇となった服部調教師は「正直なところ、何とかして勝ちたいレースでした。今回は大河原騎手や厩舎のスタッフがみんなで私に勝たせてくれたのだと思います」と安堵の表情を浮かべた。

 服部調教師は、ばんえい振興にひじょうに熱心に取り組む人であり、リッキーやミルキーのいる場内のふれあい動物公園でファンサービスをずっと続けてきた縁の下の力持ちである。今回の優勝に関しては「この先、あまり長くない競馬人生(68歳)ですから、本当に勝てて良かったです」と語る姿が印象的であった。

服部義幸調教師

ばんえい記念は初勝利となる服部義幸調教師



 なお、当日は4176人が入場し1億1963万円を売り上げた。入場人員、売り上げともに昨年よりも微減だが、ばんえい競馬は今年、売り上げを伸ばしており、すでに帯広市単独開催以降、最高金額を記録している。今週末に2日間開催した後、4月18日(土)より新年度の開催がスタートすることになっている。
キタノタイショウの口取り風景

キタノタイショウ関係者の口取り風景

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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