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遠征も坂も渋馬場も乗り切った快勝/高松宮記念

  • 2015年03月30日(月) 18時00分


秋に向けて日本馬はパワーアップを

 中京の芝状態の変化は激しい。9R岡崎特別(古馬1000万下)が芝1200m1分08秒6で決着したころは、発表通りの稍重でまだ大丈夫と思えたが、それは「34秒7-33秒9」で差し切り3戦3勝となったビッグアーサー(父サクラバクシンオー)が、オープン級の素質を秘めていたからだった。メインのころには表示は稍重馬場でも、もう明らかな重馬場。かなり走りにくいコンディションに思えた。

 明らかに内枠不利と変化した馬場を、前半はコースロスを避けてインでがまんし、直線は斜めに外に出したZ.パートン騎手のエアロヴェロシティ(父トムフール直父系のピンズ)が粘るハクサンムーン、外から伸びるミッキーアイルの間を割って、力強く差し切った。

 香港の7歳騙馬エアロヴェロシティは、7歳といってもここを勝ってまだ17戦【9-4-1-3】であり、強くなったのは日本のストレイトガール、スノードラゴン、リトルゲルダが挑戦した昨2014年12月の香港スプリントを勝ち、初G1制覇を達成したあたりからのこと。

 香港シャティンの1200mでは、目下4戦連続して「1分08秒57-99」を記録するほど安定して能力を発揮できる。遠征競馬も、坂も平気だった。過去の例からして、高速の中山なら楽に「1秒0以上」は速い時計で乗り切る能力があると推測できる。改めて秋に対戦することになるはずの日本馬はさらにパワーアップしたい。

 P.オサリバン調教師は、1989年、オグリキャップと死闘を展開し驚異の2分22秒2を記録した芦毛のホーリックスで、共同管理していた父のD.J.オサリバン調教師とともにジャパンCを勝っている。騎手は、弟のL.A.オサリバンだった。日本のG1は大好きである。やっぱり、今回の快勝でさらに自信を深め、10月のスプリンターズS(中山)にも参戦してくる気がする。グローバルスプリントチャレンジは、12月の香港スプリントまであと7戦もある。ボーナスの生じる3カ国での優勝は、エアロヴェロシティならさして不可能ではないだろう。

 内寄りをみんなが避けるようになった渋馬場とはいえ、18頭立てで先行馬までみんな外に回ることはあり得ない。好ダッシュで飛び出したアンバルブライベンはそのまま内を通って前半「34秒0」。馬体を離してずっと外を回る形になったハクサンムーンが34秒1。この馬場とあって2頭ともにムリなハイペースで競らなかったから、アンバルブライベンは内で失速したが、外のハクサンムーンは後半も「34秒5」でまとめることができた。

 快速ハクサンムーン(父アドマイヤムーン)は、出遅れた昨年の高松宮記念で5着に差を詰めたくらいだから、渋馬場の宝塚記念を制した父の特徴を受けつぎ渋った馬場も下手ではない。直線、巧みに外から先頭に立った時点では勝ったと見えたが、内から外に出してきたZ.パートン騎手はハクサンムーンを見ながら、さらにその外に回ったのだから、役者が1枚上だったということだろう。しかし、ハクサンムーン(酒井学)は惜しかった。不振は完全に脱した。

 ミッキーアイル(父ディープインパクト)はハクサンムーンを見ながら好位の外。2戦目に京都1600mを1分32秒3で圧勝してNHKマイルまで4連勝したから、快速マイラーとされてきたが、2戦目は馬場差が1秒5はあった超高速馬場であり、本質はどうやら母の父ロックオブジブラルタルの影響で、粘り強いしぶとさを前面に出すスピード系。前哨戦の阪急杯(不良の1400m)をひかえて抜け出したあたり、渋馬場はディープインパクト産駒ながら全然苦にしない。

 浜中騎手も、音無調教師も、そろって「力んで行きたがってしまう」のが敗因で一致している。上位をベテランホースが独占した中、4歳ミッキーアイルにかかる期待は大きい。このあとは「安田記念の予定(音無調教師)」とされるが、その内容しだいでは、秋はスプリンターズS1200mに回ってくることも十分考えられる。これから総合力をつける成長株だからなんともいえないが、1200-1400mに対する適性も非常に高い。

 4着サドンストーム(父ストーミングホーム)は、中団でもまれながらうまく外目に出してきたが、良馬場の場合とあまり変わらず善戦止まり。好状態でもパンチ力もう一歩だった。

 13着に沈んだストレイトガールは、めったに崩れない安定した能力を持ち、昨年の不良馬場でも3着に押し上げた。遠征した香港でエアロヴェロシティとわずか0秒2差だったことが買われ、外枠有利が判明するにつれ評価があがり、1番人気になった。ただ、いつもより出脚が良くない。好仕上がりとはみえたが、狙いの春の大目標のG1に休み明けで出走になったあたり、必ずしも順調ではないローテーションが不利だったろう。

 体調一歩といえば、昨年の勝ち馬コパノリチャードも今年は好調ではなかった。昨年はここを圧勝し、つづく京王杯SCは58キロで7着失速でも、他を圧するような動きを示していたころの迫力がなかった。内のリトルゲルダは、残念ながらこの枠順では道悪馬場に対応できなかった。

 ダイワマッジョーレは、デビューしてずっと1600m以上に出走していた中距離タイプにも近いマイラー。1600mで高い総合力を示していたから、スピード競馬の鉄則通り、1ハロン短い1400mへの短縮では総合力を生かし、見事に結果が出た。ただし、1400mに対応できたから、では今度は1200mというのはさすがに無理だったかもしれない。「スタートはいつもあまり良くない。1200mは短かった(M.デムーロ騎手)」のコメントがある。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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