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最近では記憶にないくらい役者が揃った今年のケンタッキーダービー

  • 2015年04月15日(水) 12時00分


今年のケンタッキーダービーを、「バファートVSプレッチャー」という図式で捉えるメディアも多い

 11日にケンタッキー州のキーンランド競馬場で行われたG3レキシントンS(d8.5F)と、アーカンソー州のオークローンパークで行われたG1アーカンソーダービー(d9F)をもって、ケンタッキーダービーへの出走枠をかけたポイント指定競走がすべて終了。5月2日にチャーチルダウンズで行われる決戦へ向けた勢力分布が、ほぼ明らかになった。

 当日1番人気に推されるのはおそらく、昨年の全米2歳チャンピオン・アメリカンフェイロー(牡3、父パイオニアオヴザナイル)になろう。

 エンパイアメーカーの後継馬として期待の高いパイオニアオヴザナイルの2世代目の産駒となる同馬は、ファシグティプトンサラトガセールにて30万ドルで購買され、西海岸の名門ボブ・バファート厩舎に入厩。2歳8月にデルマーのメイドン(AW6.5F)でデビューし5着に敗れたにも関わらず、次走はいきなりG1デルマーフューチュリティ(AW7F)に挑み、ここを4.3/4馬身差で快勝してG1で初勝利を挙げる離れ業を成し遂げている。続くG1フロントランナーS(d8.5F)でも初ダートを難なく克服して連勝を飾った後、出走すれば1番人気が予想されたG1BCジュヴェナイル(d8.5F)を、左前肢の挫石のために出走を取り消して、2歳シーズンを終えた。そのBCジュヴェナイルを勝ったテキサスレッドを、フロントランナーSで破っている実績を評価した投票者が多かったか、アメリカンフェイロー126票、テキサスレッド111票という接戦の末に、アメリカンフェイローは2歳チャンピオンに選出されている。

 今季緒戦は3月14日にオークローンパークで行われたG2レベルS(d8.5F)で、ここは久々に加え、初めてだった道悪馬場を克服して6.1/4馬身差で快勝。そして4月11日に同じくオークローンパークで行われたG1アーカンソーダービー(d9F)を8馬身差で制し、3つのG1を含む重賞4連勝の成績をひっさげケンタッキーダービーに向かうことになった。

 ハナを切るスピードもあるが、行く馬がいれば2番手で折り合えるという、競馬の上手な馬で、言うまでもなく能力は高い。ただし、今季の2戦は相手に恵まれたことは否めず、骨っぽい相手が揃うケンタッキーダービーでは、直近2走のような楽な競馬にはならないと見る。

 2番人気は、アメリカンフェイローと同厩で、ここまで負け知らずで来ているドルトムント(牡3、父ビッグブラウン)になろう。

 ファシグティプトン・ミッドランティック2歳セールにて14万ドルで購買されたドルトムント。デビューは昨年11月で、サンタアニタのメイドン(d6.5F)を4.3/4馬身差で快勝。その後は西海岸に適鞍がないとのことで、ケンタッキー州のチャーチルダウンズに遠征し(すなわち、チャーチルダウンズのコース経験あり)、条件戦(d8F)を7.3/4馬身差で連勝。本拠地に戻って出走した次走G1ロスアラミトスフューチュリティ(d8.5F)で、重賞初制覇をG1で果たして2歳シーズンを終えている。

 今季はここまでサンタアニタで3戦し、G3ロバートルイスS(d8.5F)、G2サンフェリペS(d8.5F)、G1サンタアニタダービー(d9F)をいずれも白星で通過し、6戦6勝の成績でケンタッキーダービーに向かうことになった。

 ここ2戦ほど逃げて勝っているが、G1ロスアラミトスフューチュリティは好位から差し切っており、競馬は自在だ。また、G1ロスアラミトスフューチュリティやG3ロバートルイスSにおける2着馬との差はわずか「頭」で、並んでの渋太さと勝負強さを持った馬である。

 3番人気も、東海岸の大御所トッド・プレッチャーが管理するカーペディエム(牡3、父ジャイアンツコーズウェイ)でほぼ間違いないと思う。

 G1ブリーダーズフューチュリティ(AW8.5F)勝ち馬ジェイビーズサンダーの半弟という良血馬で、昨年のOBSマーチセールにて最高値タイの160万ドルで購買されたカーペディエム。2歳9月にサラトガのメイドン(d5.5F)でデビュー勝ち後、いきなりキーンランドのG1ブリーダーズフューチュリティ(d8.5F)にぶつけ、ここを制して兄弟制覇を達成。アメリカンフェイローの出走取り消しで1番人気の座が廻ってきたG1BCジュヴェナイル(d8.5F)は、テキサスレッドの大駆けにあい、2着に敗れて初黒星を献上している。今季はここまで2戦し、G2タンパベイダービー(d8.5F)、G1ブルーグラスS(d9F)をともに白星で通過。東海岸の代表馬としてチャーチルダウンズに乗り込むことになった。好位差しという安定した脚質を持っており、本番でも大崩れする局面は想像しづらい。

 4番人気は、マテリアリティ(牡3、父アフリートアレックス)か、ムブタヒジ(牡3、父ドゥバウィ)か。ともに、未知の魅力に惹かれるファンの支持を集めそうな馬たちである。

 ドルトムントと同じファシグティプトン・ミッドランティック2歳セールにて40万ドルで購買されたマテリアリティ。カーペディエムと同じトッド・プレッチャーの管理馬で、1月11日のデビューから無敗の3連勝で3月28日にガルフストリームパークで行われたG1フロリダダービー(d9f)を制している。

 ここまで紹介した4頭は、2頭がボブ・バファート厩舎で、2頭がトッド・プレッチャー厩舎だ。今年のケンタッキーダービーを、「バファートVSプレッチャー」という図式で捉えるメディアが多いのも、無理からぬ情勢となっている。

 ムブタヒジは、3月28日にドバイのメイダンで行われたG2UAEダービー(d1900m)を8馬身差で圧勝した馬で、日本の皆様にも既にお馴染みである。

 6番人気以下にも、G1BCジュヴェナイル3着馬で、直近のG1フロリダダービー2着のアップスタート(牡3、父フラッター)。東海岸の最終プレップ・G1ウッドメモリアルS(d9F)を制したフロステッド(牡3、父タピット)。フェアグラウンズでG3ルコントS(d8F70y)、G2リズンスターS(d8.5F)、G2ルイジアナダービー(d9F)と直前3連勝しているインターナショナルスター(牡3、父フサイチペガサス)など、ノーマークには出来そうにない馬たちが目白押しだ。

 これだけ役者が揃った年は最近では記憶になく、久しぶりに見応えたっぷりのケンタッキーダービーとなりそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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