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育成調教技術者養成研修第32期生修了式

  • 2015年04月22日(水) 18時00分
育成調教技術者養成研修第32期生修了式

育成調教技術者養成研修第32期生修了式後の記念撮影


わずか1年間でここまで乗れるようになったことからも彼らが濃密で充実した1年間を送ってきたかが伝わってくる

 去る4月17日(金)、浦河のBTC(公益財団法人・軽種馬育成調教センター日高事業所)にて、昨春入講した育成調教技術者養成研修第32期生の修了式が行なわれた。

 式典に先立ち、まず「実技査閲」が披露された。32期生18名は、山本真維教官の先導にてグラス馬場を一列縦隊で進んでくる。午前10時半、多くの家族や関係者が見守る中を、BTC北馬場800mダートコースに入り、半数ずつ2班に分かれてキャンターで左回りにゆっくりと一周する。2つの班はそれぞれ半周の間隔をとり、キャンターの後は、速度を上げて駈歩に移り、最後はさらに加速し、2頭併走で駈け抜けた。

実技査閲

まず披露された「実技査閲」



 折から前日に降った雨のせいで馬場はかなり水分を含んでおり、後続する組は、前の馬がはね上げる泥をかぶりながら走ることになった。それでも、18名全員が無事に騎乗し、実技査閲が終わった。

実技査閲

馬場が悪く泥をかぶりながら走ることになった実技査閲



 先週この欄で紹介したように、32期生たちはすでに13日(月曜日)、JRA育成馬展示会に参加し、比較展示の後、それぞれ育成馬に騎乗してハロン12〜13秒の速度を経験済みである。むしろ緊張感の度合いでは、この修了式の実技査閲よりも、JRA育成馬展示会の方がより強いのではなかろうか。実技査閲は、乗りなれた訓練馬(すべてサラブレッド)に騎乗し、1年間苦楽をともにした仲間と乗る最後の騎乗とはいえ、どの研修生も穏やかな表情で、余裕さえ感じられた。

 昨春、入講した頃には馬に乗ったことはもちろん、触ったことさえなかったような研修生たちが、わずか1年間の訓練でここまで乗れるようになったのは、まさしく指導の賜物という他なく、いかに彼らが濃密で充実した1年間を送ってきたかが伝わってくる。

実技査閲

実技査閲終了時の挨拶



 実技査閲を終えた後、11時半より、BTC診療所内二階で、修了式が執り行われた。32期生18名の他、保護者の他、それぞれの就職先から関係者も駆けつけ、各方面からの来賓も姿を見せて、定刻通りに式典が始まった。大平俊明・BTC理事長より、修了者に1人ずつ証書とゼッケンが手渡され、その後、開講式と同様に、名取哲哉・日高振興局長、池田拓・浦河町長、山野辺啓・JRA日高育成牧場長がそれぞれ来賓として祝辞を披露した。

終了式

実技査閲終了後、執り行われた修了式



 名取局長からは「先日のJRA育成馬展示会も見せて頂いたが、皆さんはきびきびとした動きで上手に騎乗していた。ここでの研修は大きな財産であり糧となるもの。今後の活躍をお祈りします」とエールを送られた。

 池田拓町長は「ここの厳しい訓練を乗り越えられたのだから、皆さんがこれからの人生において経験するであろう試練もきっと乗り越えられるはず。浦河での1年間の生活で縁が生まれた。今後はぜひ浦河の応援団になって頂きたい」と結んだ。

 山野辺場長は「通算9年間、研修生を見てきているが、今期はレベルが高く、育成馬展示会でも全員を育成馬に乗せられたのは大きな喜び」と言いながらも「ただ、中には育成馬の騎乗供覧の際に、もっとぶっ飛ばせば良かったと発言する研修生もいた。若い馬に実力以上のものを求めてしまうことは故障の原因にもなる。あくまで主役は馬であることを忘れずに」と苦言? を呈する一コマもあった。

 来賓祝辞の後は、修了生を代表して折原貴行さん(29歳、谷口牧場に就職)が「1年間、ここで過ごし、教官を始め、教育馬たちやその他多くの方々の暖かい支えによって心身ともに大きく成長することができました。今後は新しい就職先の牧場で馬にも人にも認められるホースマンになれるよう精進したいと思います」と謝辞を述べ、修了式を締めくくった。

終了式

修了生を代表して謝辞を述べる折原貴行さん



 12時より、会場を移しての昼食会となり、その席上で、恒例の各部門の結果発表が行なわれた。皆勤賞、精勤賞、学科優秀賞、騎乗技術優秀賞などが小林光紀・BTC日高事業所次長から発表され、記念品が授与された。そして、1人ずつ前に進み、マイクを手に1年間を振り返ってのスピーチを全員が行なった。

終了式

皆勤賞、精勤賞、学科優秀賞、騎乗技術優秀賞など各部門の受賞者



 32期生18名は、すでに、社台ファーム、追分ファーム、下河辺牧場、ビッグレッドファームなどの大手を中心に、全員が就職先を決めている。うち浦河町内の育成牧場に就職するのは6名。これでようやく競馬業界のスタートラインに立ったわけで、むしろこれからの方が何倍も大変だが、何とか初志貫徹し、できるだけ長く競馬に関わり、元気に働いて欲しいと私からもエールを送っておきたい。

終了式

全員一列縦列でグラス馬場を進む32期生

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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