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場内飲食店がなくなる理由は…

  • 2015年04月24日(金) 18時00分


 今回は久しぶりに競馬場内飲食店の話題を……。先日、佐賀競馬場に行って、とっても残念なことがあった。指定エリア内にあるカウンターの洋食やさん『クルミ』が閉まっていて、「しばらくの間、休ませていただきます」というような貼り紙があったのだ。

 いくつかのところで競馬場グルメを紹介している関係で、気に入ったお店やメニューがあっても、何か新しいメニューはないか探さなければという、ある種の義務感から、一度食べておいしいと思っても、なかなか同じものを食べるという機会がない。それゆえ『クルミ』も1年以上ごぶさたしていたのだった。主催者の方に聞いたところ、「休む」とは書いてあったものの、事実上の閉店だろうとのことだった。

 閉店したのは、競馬場の来場者自体が減って指定エリアにもあまり人が入らなくなったこともあるが、最大の理由は、経営されていたご夫婦が年齢的に続けていくのが難しくなったからとのこと。

 なるほど、近年は馬券の売上がどんどんネットや場外に移行していることもあって、競馬場に足を運ぶファンが減り、飲食店の経営も厳しいだろうなあとは思っていたが、たしかにその中には後継者がいないために余儀なく閉店というお店もかなりあるのではないかということに気づかされた。

 実際、各地の競馬場の飲食店を思い浮かべてみても、かなりベテランの方がやっているというお店も少なくない。4月21日に名古屋競馬場に行ったときに久しぶりに入った『中華料理えびす屋』というお店のご主人も、街中でやっていたお店を昭和55年に競馬場内に移し、当時は毎日お客さんが一杯だったという思い出話を聞かせてもらったばかりだった。あのご主人も、競馬場内だけで35年やってるわけだから、それなりの年齢になるのだろう。

 ただ佐賀では新たな発見もあった。空き店舗になっていたところに昨年オープンしたという『亭謝馬(ていしゃば)』というお店だ。もともとレストランの厨房で働いていて、引退したおばちゃんがオープンさせたという。欧風なカレーが抜群においしかった。老後の楽しみということではじめたらしい。

 なるほど、競馬場は毎日やっているというわけではないので、毎日働かなくてもいい。常連客がつけば、話し相手にもなる。

 調理師免許を持っているけど定年で退職した、それでもまだ働きたいという人は、おそらくたくさんいるはずだ。競馬場内の飲食店が空き店舗ばかりで寂しくなっているところは、そういう人を積極的に募集してみてはどうだろう。

 最後に、もう一度食べたかった『クルミ』のハンバーグ定食の写真を。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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