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JRAブリーズアップセール

  • 2015年04月29日(水) 18時00分
JRAブリーズアップセールでの展示風景

JRAブリーズアップセールでの展示風景


2000万円以上の落札馬が今年は3頭にとどまり、価格的にはやや落ち着いた市場であった

 今回初めてJRAブリーズアップセールに行って来た。2005年より始まったこのセールは数えて今年で11回目。JRAが行う2歳馬セールとして高い信頼性が評価されており、売却率は毎年驚異的である。昨年まで、過去5年間を見ても、主取りに終わったのは2011年に1頭いるだけで、後はいずれも100%の完売となっている。

 27日(月)、午後1時。本番を翌日に控えたこの日は、前日展示が行われた。皐月賞の週で開催を終えた中山競馬場に、日高と宮崎の両育成牧場からJRA育成馬たちが輸送されてきたのは21日。その後一週間かけて体調を整え、騎乗供覧のリハーサルなどを繰り返してきた。

前日展示

前日展示時のマルカジュリエットの13



 この日、関東地方は季節外れの暖気となり、朝から気温が急上昇した。昼下がりには25度を超え、半袖でも汗ばむほどの陽気であった。上場予定馬は名簿上79頭に上るが、うち10頭がすでに欠場となる旨発表されている。しかし、後述するが、それ以外にも、急きょ上場を取り止めになる育成馬が出てきて、最終的には67頭になった。

 前日展示は、全体を8班に分割して行われた。2時間で8班だから、1班あたり15分程度の展示時間である。装鞍所の広場を利用して、二列に展示される。調教師や馬主がそれを熱心に見て歩く。前日なので、人はそれほど多くない。

 前日日程はこれだけで終了した。

 セール当日。この日も前日同様に朝から上天気であった。午前9時から騎乗供覧が実施されるため、8時半に競馬場入りした。スタンド4階が馬主や調教師などの見学スペースとして開放されているが、撮影陣は外で撮る。炎天下の日だまりにいると、じっとしているだけで焦げてきそうなくらいに紫外線が強い。湿度が低いのでまだましだが、日焼け止めを塗っていないと、露出している肌が焼けつくように暑い。帽子を持っていかなかったことを後悔した。

 騎乗供覧は、単走で行われる。上場順に7班に分けられており、10〜12頭ずつのグループで馬場入りしてくる。騎乗するのはJRA職員(日高、宮崎の両育成牧場)の他、競馬学校生徒や大下智、長岡禎仁、高田潤などの現役騎手も乗る。

公開調教

サイキョウロマンの13の公開調教



 24日(金)に実施したリハーサル時の調教タイムが参考記録として台付け価格表に記載されている。また上場馬リストには、欠場馬のそれぞれの事由が明記されており、「右前深管骨瘤のため」○日発表というように、すべて情報が開示されている。中には、この供覧を済ませた後に跛行が見つかり、午後の上場を見合わせることになった馬もいた。少しでも異常が見つかれば、その時点で上場取り止めの判断が下される。結局、前述したように、セリにかけられたのは67頭であった。

 騎乗供覧は向こう正面からスタートし、4コーナーの残り2ハロンから計時される。走破タイムはその都度発表され、供覧終了後ただちに印刷されて配布されるのは、他のトレーニングセールと同様である。

 去る4月13日の日高育成牧場展示会において、好タイムをたたき出した上場馬を追ってみた。まず16番「ホーマンソレイユ」は父エンパイアメーカーの牡馬で、この日は12.7、12.6の25秒3が供覧のタイムである。同じく牡馬では39番「ゴールドコイン」(父アドマイヤムーン)が12.7、11.8の24秒5。64番「アーバンライナー」(父タニノギムット)が12.1、11.8の24秒0。71番「シラタマ」が12.4、12.0の24秒4であった。

 また牝馬で出色の好タイムを出していた25番「マルカジュリエット」(スウェプトオーヴァーボード)は11.9、11.5の23秒4と好調をキープしていた。

公開調教

マルカジュリエットの13の公開調教



 なお、騎乗供覧の最高タイムは宮崎育成牧場からきた22番「キウィダンス」(牡、アドマイヤムーン)で11.4、11.3の22秒7。2ハロン22秒台で走破したのはこの馬だけであった。

 昼食をはさんで午後1時よりセリが始まった。例年、セリ会場は寒いことが多いらしく、今回も前日から職員が灯油ストーブを用意したり、ひざかけ用ブランケットなども準備されていたが、今年に関してはまったく暖房の必要がないくらいの暖かさであった。上着すら不要な気温で、半袖姿が多かった。

 セリでは上記の馬たちもやや明暗を分けた形になった。最高落札額馬は、牝馬の25番「マルカジュリエット」で、仕上がりの良さと余裕残しの供覧が評価され、本体価格3000万円で三田昌宏氏が落札した。また牡馬の最高価格馬は、40番「サイキョウロマン」(父クロフネ)の2300万円であった。

落札場面

マルカジュリエットの13の落札場面



 一方で、日高では好時計をマークした16番「ホーマンソレイユ」は、最初の上場時に声がかからず、「再上場」にて750万円で落札された。お台付け価格は今年の上場馬中最も高い1500万円からのスタートだったが、これは仕入れ価格(税込1944万円)から設定されたもので無理のないところ。だが、父エンパイアメーカーの評価が今一つ芳しくないことが影響したのか、案外な結果に終わった。

 他の39番「ゴールドコイン」は1700万円、64番「アーバンライナー」は1000万円、71番「シラタマ」は1500万円でそれぞれ落札された。上場馬中最速タイムを計時した22番「キウィダンス」は1400万円であった。

 結局、67頭が上場され全馬落札されたものの、売り上げ合計は税込6億6593万9千円で、1頭平均では993万9385円と、総売り上げ、平均価格ともに昨年よりもやや減少した。

 昨年は2000万円以上の落札馬が7頭いたが、今年は3頭にとどまり、価格的にはやや落ち着いた市場であった。

落札場面

サイキョウロマンの13の落札場面



 なお、今回欠場となった12頭の大部分は、立て直しされた後、来る5月26日に札幌競馬場にて開催予定の「HBAトレーニングセール」に上場されることになる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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