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58歳でもなお一線級の活躍

  • 2015年05月08日(金) 18時00分


◆東京湾カップでの「スゴイ」騎乗

 大型連休後半の船橋競馬場では、2日連続で重賞が行われた。5日のかしわ記念はワンダーアキュートが制し、9歳馬による初めてのGI/JpnI制覇となったことは、『交流重賞回顧、地方競馬ノート』のコラムでも触れたとおり。そして6日の東京湾カップを勝ったのはドライヴシャフト。こちらは鞍上のほうが新記録で、的場文男騎手は自身がもつ地方競馬の最高齢重賞勝利記録を更新。58歳7カ月での重賞勝利だった。

 殊勲のパートナーであるドライヴシャフトは、道中でフワフワしていたり、レースをやめてしまったりと、とても難しい馬なのだそうだ。吉原寛人騎手が騎乗したクラウンC(4月1日、川崎)では1番人気に支持されるも、スタート後100mほど行ったところで、砂を被るのを嫌がったのか、頭を上げて最後方に近いところまで位置取りを下げてしまった。4コーナーをまわったところでも14頭立ての13番手。直線大外に持ち出し、レースをしたのは映像にはほとんど映っていないゴール前だけで、それでも5着に来た。

 真島大輔騎手が鞍上となった羽田盃(4月22日、大井)では好スタートからハナを切ったが、先頭に立つと遊んでしまうこの馬には、むしろそれがよくなかったらしい。3コーナーではオウマタイムに前をカットされるような場面があり、そこからずるずると後退。バテたのではなく、どうやらレースをするのをやめてしまったらしい。で、13着という結果。

 そして東京ダービーへの出走権を賭けた東京湾カップで鞍上を任されたのが、初騎乗となる的場文男騎手。スタートのタイミングはあまりよくなかったが、それでも出ムチを1発入れて2番手につけた。そして直線を向き、単独で先頭に立ってからが的場騎手の真骨頂。決して褒められたフォームではないと思うが、激しいアクションで追い続け、ハミを抜いて遊んでしまう馬を最後までなんとかもたせ、ゴール前迫ったミッドストラーダを3/4馬身差で振り切った。まさしく的場騎手だからこそという勝利に見えた。

 これを見てあらためて思ったのが、単に58歳で重賞を勝ったからスゴイ、ということではない。58歳という年齢になってもなお、的場騎手にしかできない騎乗があるからこそ、今なお年間100勝ペースで南関東のトップジョッキーとして活躍しているのだということ。

 一方でちょっと心配になったのが、あまりにムチで叩きすぎていないかということ。日本でも近年、ムチの過剰使用については制裁を課されるようになった。しかしあらためてレース映像を見て驚いた。ムチを高く振り上げていることにはまあ目をつぶるとして、直線でムチを入れたのはわずか5発(もしくは6発。おそらくゴール直前の1発は馬には当たっていない)。激しいアクションでも、意外にムチを使っている回数は少ないのだ。

 そして的場騎手といえば、悲願となっている東京ダービーのタイトル。昨年まで33回騎乗して2着が8回。ドライヴシャフトに引き続き騎乗するのかどうか。ほかにも賞金的に出否が微妙な馬がいて、騎乗馬はまだ確定はしていないようだ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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