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競馬界のホリケン? 丹内祐次騎手の素顔

  • 2015年05月26日(火) 18時00分
丹内祐次騎手

丹内祐次騎手




赤見:今年に入って初重賞制覇(マイネルクロップ/佐賀記念)と思ったら、すぐにJRAでも初重賞制覇(マイネルクロップ/マーチステークス)しましたね!

丹内:デビューして12年も勝てなかったのに、勝つ時っていうのはこんな感じなんですかね。マイネルクロップにも、乗せてくれたマイネルさんにも、本当に感謝しています。

赤見:しかも佐賀記念は1番人気ですもんね。

丹内:本当ですよね。実はね、佐賀は緊張したことしか覚えてないんですよ。初めて行ったんですけど、コースに関しては交流でけっこう小回りに乗っていたので特に心配していなかったし、競馬場に着いた時は全然普通だったんですけどね。でも途中でオッズを見たら1番人気で…。いつもの悪い癖で、緊張してしまいました。

20015年佐賀記念

初重賞制覇となった2015年の佐賀記念



赤見:そうなんですか? パドックで乗るとき、いつも通りの表情に見えましたけど。

丹内:もうめちゃくちゃ緊張してたんですよ。あの時、川田(将雅)と(三浦)皇成がいたんですけど、2人がわざと緊張させるようなことばっかり言ってくるから、余計に緊張しちゃって…

赤見:絶対勝てますねとか? これで負けたらヤバいでしょとか?

丹内:そうそうそう! わざとプレッシャーかけるようなことを言ってきて、まんまとそれで緊張しちゃって(苦笑)。これ負けたら絶対笑われると思って、最後はもう意地でした!

赤見:ゴール前はソリタリーキングとハナ差でしたもんね。

丹内:人間のハナ差なら絶対に勝てるんですけどね(笑)。佐賀記念は本当にいい経験になりました。1番人気での重賞っていうのは、重みがありますよね。それで勝てたのは自信になりました。

赤見:表彰式でのインタビューがまた印象的だったんですけど。「今日で佐賀競馬が大好きになりました!」っていうから、また乗りに来たいと言うのかと思ったら、「今度はお客さんとして来ます」って高らかに宣言してて、お客さんたちもズコーってなってましたよ(笑)。

丹内:あの日が月曜日だったから、今度馬券買いに来ようと思ったら平日やってないし! 基本的には土日開催ということで、みんなから「騎乗停止にでもなるつもりか?」って突っ込まれました(笑)。

赤見:いや〜丹内騎手にはいつも笑わせていただいてますけれども、東京競馬場で勝った時に、ゴール後に何もないところで落馬したこともありましたよね?

丹内:ありました(笑)。それもマイネルさんの馬(マイネピアチェ)だったんですけど、ちょっとずつマイネルさんの馬を乗り出した頃(2009年)で。その日は1鞍しか乗ってなかったので、その馬を死ぬ気で目一杯追って来ようって思ってて。直線に入る前からグイグイ追い出していたんですよ。で、ふと横を見たらいつの間にか1、2着争いをしてて、あらららららって!! それまで自分のスタミナを考えないで全力で追ってて、しかもその頃地方に修行しに行ってて、地方の追い方をやってみようと思ってて。

赤見:より力の要る追い方ですよね。

丹内:そうそう。それでなんとか勝ったんですけど、ゴールした時には体が前に潰れてて、脚が『くの字』の状態になってて。スタミナも切れてるし、モンキーのバランスが崩れてて、そこから姿勢を戻せなくて落ちちゃったんです(笑)。

丹内祐次騎手

スタミナも切れてるし、モンキーのバランスが崩れてて、そこから姿勢を戻せなくて落ちちゃったんです(笑)(撮影:佐々木 祥恵)



 落ちた時には、「馬が物見した」って言おうかなと思ったけど、絶対バレるなと。じゃあこのまんま寝たふりしようかなと思ったら、馬が戻ってきて近くに立ってるんですよ。「え? どうしたの?」って感じで! それなら乗って帰ろうかなと思って、結局乗って帰りました。裁決にも呼ばれて怒られたし、周りにも笑われるし怒られるしで…。でも単勝万馬券だったんで、喜んでくれた方もいるはずです!

赤見:そんな笑い話もありつつ…、一時期は騎乗馬がなかなか集まらなかった時期もありましたが、そこからよく盛り返しましたね。

丹内:本当にマイネルさんのお陰です。上に行くとなかなか下がんないけど、一回下がると上に行くのは難しいじゃないですか。それに勝てない、乗り馬がいないってなると焦ってくるし。焦ると競馬も上手くいかないという悪循環で。その中で原動力になったのは、やっぱりマイネルさんの存在が大きいです。積極的に動いて行って、指示通りに乗ることを心掛けました。例えば、ペースが遅くて後ろにいたら絶対勝てないじゃないですか。馬券を買っててもつまんないですもんね。

 あと、去年の秋から体のメンテナンスをしてもらうトレーナーを付けたんです。その人とはすごく合って、体も絶好調だし、考え方にも刺激を受けました。目標を立てて、そのためには何をすればいいか逆算して考えて。GI乗りたいですって言ったら、そのためには重賞勝たないとGIに出られるような馬に乗れないし、中央開催で乗れるようにならないといけない。そのためにはローカルでリーディングを獲らないと、ってどんどん考えて行って。意識が変わりましたね。

赤見:では、今の目標というのは?

丹内:今年の目標は40勝って、トレーナーさんと一緒に頑張ってきたんですけど、正直ペースがキツくなってきてるんです…。あと、獲得賞金を二倍にする、GIに乗る、重賞を勝つ、あと地方交流のリーディング目指してます。今のところ重賞は勝てたし、地方交流は4勝で、岩田さんと2勝差です。

赤見:重賞を勝ったことで、GIへの騎乗も近づいたんじゃないですかね。

丹内:そうですね。このまま順調にいきたいですね。マイネルクロップに関しては、京都でのレースがターニングポイントになったと思います。初めて乗せてもらったんですけど、今までは好位からもうひと伸び足りないというレースが多くて、この時はたまたま内枠で出られなかったこともあって途中で動かなかったんですよ。そうしたら脚が溜まって、ものすごく切れた。僕と同じで、集中力が長く続かないんですよ(笑)。どっかで遊ばせないと、肝心なところで切れちゃう。その辺りのコミュニケーションを大事にしていきたいです。

赤見:それでは、ファンの方にメッセージをお願いします。

丹内:今までは初重賞っていう言葉に弱くて、気持ちばっかり焦ってしまっていたんですけど、1番人気で勝たせてもらって自信になりました。ファンの方が面白いと思うようなレースをしていきますので、これからもよろしくお願いします!

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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