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【調教の新トレンド!美浦編】今春GI4勝!堀宣行厩舎の調教のヒミツ

  • 2015年06月08日(月) 18時01分
東京競馬場の5週連続GIも終わり、残すビッグレースも宝塚記念のみ。この春のGI戦線、最も目を引いたのは堀厩舎の大活躍でしょう。皐月賞、ダービー、安田記念に、海外GIも勝利という堂々の実績。そしてもうひとつ、池江厩舎がオークスで牝馬GI初制覇。実はこの活躍の裏には、ある共通点がありました。それが『調教』です。結果を出している厩舎は、調教に工夫があったのです。時代とともに変化している調教。従来のスタイルと変遷、そしてトップ厩舎が取り入れている話題の“半マイル調教”とは。調教の新トレンドを、美浦・栗東の両トレセンから2日間連続でお届け。調教の“今”が見えてきます!

(美浦担当:馬サブロー・加藤剛史記者/栗東担当:調教Gメンこと井内利彰氏)



■美浦編■

2014年の坂路改修、効果は絶大


 2009年ロジユニヴァース以来となる、ドゥラメンテによる関東馬の日本ダービー制覇。関東馬による皐月賞、ダービーの2冠馬誕生は1997年のサニーブライアンまでさかのぼる。

 関東馬の強さが際立つ現3歳世代だが、坂路馬場改修後にこのような成果が上がっている現状を見る限り、その効果は絶大な要因となっていることを疑う余地がない。

 栗東坂路に比べ勾配が緩い美浦の坂路では、より負荷の掛かる構造へと、2014年初めに改修工事が入った。

 ウッドチップを細かく砕き、深い馬場にすることで同じ運動量でもより乳酸値(数値が高いほど効果的な調教であったことを示し、運動効率を図るため、多くの厩舎でこの数値を確認している)を高められるように成功。時には散水もして、力必須の馬場状態を作っている。

 追い切り時計は出さなくても、普段からこの馬場で乗られていることで、確実なトレーニング効果が現れているのだ。

 2007年の開場当初は大盛況だったニューポリトラックコースだが、今ではすっかり閑古鳥が泣いている。リーディング上位の厩舎でこの馬場を主流としているところは皆無と言えよう。

「力のない馬が格好をつける時計を出すため」と言うような関係者もおり、脚元にはいい馬場だが、トレーニング効果はもう一つ。追い日の約6割はウッドチップコース、3割が坂路、残りがポリ、芝、ダートコースといった現状となっている。

調教の新トレンド!"

▲美浦の調教コース、外からダート、ポリトラック、芝、ウッドチップ、ダート


全国リーディング堀厩舎の調教方法


 さて今年のダービー上位馬がどのような最終追い切りで大一番を迎えたのか振り返ってみよう。

・ドゥラメンテ(美浦・堀厩舎) 南W 4F53秒9-12秒3(馬なり)
・サトノラーゼン(栗東・池江厩舎) CW 4F53秒5-12秒8(馬なり)
・サトノクラウン(美浦・堀厩舎) 南W 4F54秒1-12秒1(馬なり)

※サトノラーゼンの解説は、明日公開の栗東編で!

 我々競馬記者の中では『もろ半』と呼ばれる半マイル(4F)調教であることに気がつく。ひと昔前なら、GIに挑む仕上げとしては軽すぎると危惧されてしまう数字ではなかろうか。

 しかし、関東リーディング、全国リーディング(6月7日現在)の堀厩舎では、未勝利馬にせよOP馬にせよ、直前の追い切りはウッドコースでもろ半が基本。息を整えるために中間で長めの距離を追うことはあっても、直前の追い切りだけはこのスタイルが徹底されている。

 阪神牝馬Sを07、09年と2勝したジョリーダンス。開業当初の堀厩舎を支えた名牝だが、堀厩舎では、開業当初は短距離馬に限ってもろ半調教がとられていた。おそらく短い距離でトップスピードを磨き上げ、反応面を良くすることがこの調教方法の目的だろう。

 しかし、現在はレースで使う距離は全く関係なし。森林馬道、普段の運動などで体は作り上げ、追い切りでは実戦を想定した調教を課すことがメイン。テンの入りは意識して気合を付けても、中盤でペースを落とさせ、そこでハミを噛まないようにする。そしてしっかりたまった脚を、最後の直線で爆発。

 スローペースからの瞬発力勝負がレースにおいて当たり前となっている時代に、完璧にマッチする手法ではないだろうか。好成績を残す要因はしっかりと追い切り内容に詰まっていた。

『追い切りでの距離は縮められる』


 美浦のウッドコースには3つの入り口がある。ゴール手前から馬をだし6Fからを乗られる厩舎と、5F標識手前から出発し正味4Fの追い切り時計をだす厩舎。3F標識から半周キャンターでおろして6F手前から追い切る厩舎などがある。

 調教に正解は決してなく、個々それぞれ個性があるのは当然とも思えるが、今年度の関東リーディング上位に注目してみると

(1位)堀宣行厩舎、(2位)木村哲也厩舎、(5位)高柳瑞樹厩舎、(8位)久保田貴士厩舎、(19位)小島茂之厩舎、(22位)栗田徹厩舎
※いずれも順位は6月7日現在

 など、若手と言われる厩舎がもろ半調教を主体とし、実際に結果を残している事実は見逃せない。

 ある新鋭調教師によると、「極論、追い切りでの距離はもっと縮めることができる」との言葉が飛び出してきた。長い距離を乗ればその分スタミナを消費して最速の脚を使うことが難しくなる。いかに最高速度で走らせるかを目的とした場合、短距離で調教を課すことは理にかなっていると言える。

 数字だけでは伝えきれない追い切り時計だが、参考にしていただきたい部分は、最速ラップがどこに刻まれているか。今のもろ半調教において上記の通り、やはりラスト1Fの数字は重要になってくる。レースに挑むにあたって、短い距離で乗られるのに、最後にラクをさせると言うことはまれ。手応え、数字(馬なりで12秒台前半が理想)である程度の良さを知ることが可能だ。

 毎回同じスタイルで時計を出しているだけに、数字を比較して好不調を見極めることも可能。無論そればかりではないが、着目点として間違いではない。

 思い通りに調整できない繊細なサラブレッドにおいて、理想の調教をこなすこと自体が難しいのだが、西高東低と言われた時代を覆すべく、工夫を凝らして進化を見せる関東勢。ウッドコースにはゴール前に坂があり左回りの調教は不可能という常識を乗り越えて、最近では左回り調教の試走を試みている。

 施設、人間の手腕も日々進歩し、馬のレベルも確実に向上。来年のダービー馬もすでに美浦に在厩している気がしてならない。

(馬サブロー・加藤剛史)

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