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スローペースで一気に先頭の好判断でホワイトフーガ/関東オークス

  • 2015年06月11日(木) 18時00分

(撮影:高橋正和)



大差勝ちの評価は今後のレースぶりに委ねたい

 芝でデビューから3連勝。GIのNHKマイルCでも2着という、この世代の牝馬ではトップクラスといってもいいアルビアーノが参戦し、単勝では1.4倍の支持を受けた。とはいえ多くの人が「初めての地方のダートはどうなのだろう」という疑問は抱いていたことと思う。その若干の疑問が、中央のダートでは実績最上位のホワイトフーガを3.9倍という、そこそこの人気に推していた。

 アルビアーノは、先行争いに巻き込まれるのを避け4番手の好位に控えての追走。やや不利になったかと思われたのが、スタンド前で一気に先頭に立ったホワイトフーガを追って行こうとしたところ、1コーナーを回るあたりですぐ前にいたトーコーヴィーナスが若干外に膨れ気味になった煽りを受け、ホワイトフーガとの差が広がった。それにしてもその後残り1000mから800mのラップが14秒台に落ちたところで挽回はできたはず。にもかかわらず3コーナーあたりではすでに手ごたえが一杯になっていた。ホワイトフーガがちぎって大差勝ちとなったのはともかく、ダート500万勝ちまでのポムフィリアに1秒2差、中央未勝利勝ちのみで南関東では勝ち星がないというトーセンマリオンから2馬身差という結果は、体調や脚元に問題がなかったとすれば、川崎のダートが合わなかったということなのだろう。あらためて競馬というものは、実際にレースをしてみなければわからないことが多い。

 勝ったのは、2番人気に支持されたホワイトフーガ。スタート後は中団だったものの、1周目のスタンド前ではペースが遅いと見て一気に先頭に立った。

 エンプレス杯や川崎記念も含め、川崎の2100m戦ではスタンド前で極端にペースが落ちることがめずらしくなく、その際に今回のホワイトフーガのように一気にハナを奪うというケースも、たまにではあるがよくあるパターン。そしてそれが無理のないペースであれば、レースを自分のペースで支配することになり、勝利につながることになる。

 そのペースが落ちる部分、最初の4コーナーを回る手前の残り1600mの地点から、1〜2コーナー中間の残り1000mまでの3Fのラップで見ると、関東オークスの過去5年のうち4回で38〜39秒台だったものが、今回は40秒8。ホワイトフーガの大野拓弥騎手は、やはりあそこで行かせて正解だった。先にも書いたとおり、先頭に立ったあとの残り1000m〜800mの地点で14秒4のラップに落として息を入れ、3コーナーあたりではまだ長手綱で楽な手ごたえ。対して2番手集団のトーコーヴィーナスと中央3頭は追い通し。これで直線独走となっての大差圧勝だった。

 ちなみに過去5年で1周目スタンド前付近3Fのラップが唯一今年より遅かったのが昨年で、42秒6。今年より1秒8も遅い極端なスローペース。それでどんなレースになったかといえば、エスメラルディーナの逃げ切り勝ち。逃げてペースを落とすだけ落とせたぶん、上がり4Fが48秒4、3Fが36秒5、特にゴール前の1Fでは11秒2という速い上がりでの7馬身差圧勝だった。仮にそのスローで、今回のホワイトフーガのようにスタンド前で行く馬がいれば違ったレースになっていたかもしれない。

 話を今回に戻す。勝ちタイムの2分18秒3は、過去10年で2番めに遅いもの。とはいえ昨年12月の開催の前に砂を入れ替えてから時計がかかるようになり、そのタイム差を2秒ほどと考えれば、それほど遅いタイムではない。ということは、昨年の全日本2歳優駿、今年の川崎記念、エンプレス杯の回顧でも繰り返し、しつこく(笑)書いていた。

 そして2着のポムフィリアに2秒3の大差をどう解釈するか。実はこの関東オークスは、勝ち馬が2着以下をちぎってという印象が何度かあり、過去10年で見てみると、2008年ユキチャンが8馬身、2009年ラヴェリータが5馬身、2013年アムールポエジーが5馬身、そして昨年のエスメラルディーナが7馬身というのがあった。このうち、その後に牝馬同士でチャンピオン級の活躍をしたのはラヴェリータのみ。エスメラルディーナは先日韓国に遠征しての交流戦を勝ったが、関東オークス後の3戦はいずれも着外だった。実力差以上に差がついてしまうのは、中央馬にとっては、地方の小回りのダートで、しかもナイターでという初めて経験する条件がいくつもあるからではないかと思うのだが、どうだろう。ホワイトフーガの2着に大差という評価は、今後のレースぶりに委ねたい。

 一方、地方馬では地元南関東の牝馬二冠の2頭が不在となり、グランダム・ジャパン3歳シーズンの女王がほぼ確定していた兵庫のトーコーヴィーナスが3番人気と注目された。結果は勝ち馬から4秒4、2着ポムフィリアからは2秒1離されての7着。兵庫ではこの世代トップツーのもう一方インディウムが、兵庫チャンピオンシップで3着のポムフィリアから1秒3差の5着。トーコーヴィーナスは3番手につけて積極的に勝ちに行く競馬をしたことを考えれば、この着差もしかたなかったのではないか。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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