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休み明けでも盤石の強さを見せたホッコータルマエ

  • 2015年06月25日(木) 18時00分

(撮影:高橋正和)



自身の大井2000mの持ちタイムを更新

 ホッコータルマエの強さは自在にレースをコントロールできるところにある。速いペースで逃げる馬がいれば控えるし、逆に行く馬がいなければハナに立ってみずからペースをつくる。それは幸騎手のペース判断でもあるのだろうし、また馬との相性ということもあるのだろう。

 今回のメンバーで明らかに逃げそうなのはクリノスターオーだけ。しかしそのクリノスターオーは8番枠ゆえ、無理に主張しなければ1番枠に入ったホッコータルマエが逃げることも考えられた。果たしてホッコータルマエは、控えて5番手からの追走となった。それは前半のラップを見ればわかる。好スタートを切ったホッコータルマエが一瞬、先頭に立ちかけたが、クリノスターオーがハナを主張する勢いでダッシュ、ニホンピロアワーズも行く気を見せた。さらにスタートこそ互角だったクリソライトだが、ゴール前200mの標識のあたり(スタート後200mほど進んだところ)でかかり気味にクリノスターオーに並びかけて行った。で、3Fまでのラップが12秒3-11秒4-11秒5というもの。勢いがつく2F目の11秒台は普通だが、3F目の11秒台というのはめずらしい。クリソライトがかかっていって、すでに内目をキープしていたクリノスターオーが譲らずという形になっての3F通過が35秒2。4F目が12秒6とやや落ち着いたものの、5F目が12秒1で、前半1000m通過は59秒9。

 調べてみたところ、近年の大井2000mのGI/JpnIで前半1000m通過タイムが60秒を切っていたのは、2010年東京大賞典(58秒9)、2011年帝王賞(59秒8)、2011年東京大賞典(59秒5)。いずれもスマートファルコンが逃げて勝ったときのペースで、60秒を切ったのはそれ以来のことだった。ようするに、大井2000mで前半が60秒を切るというのは、明らかにビュンビュン飛ばしていくハイペースなのだ。さすがにそのペースでホッコータルマエは逃げるはずもなく、直後で追いかけるということもなかった。1000m通過のあたりでホッコータルマエの位置取りは先頭から4馬身ほどのところ。推定の通過タイムは60秒7あたりだろうか。近年のGI/JpnIでの1000m通過タイムが61秒前後から、ときに62秒台になることを考えると、5番手のホッコータルマエあたりでもかなりいいペースだった。

 3コーナーでクリソライトが先頭に立つと、ホッコータルマエはそれを目標にしての追走。直線半ばでクリソライトをとらえると、最後は3/4馬身差だったが、まずは横綱相撲といってもいい危なげのない勝ち方だった。勝ちタイムの2分2秒7は、ホッコータルマエ自身の大井2000mの持ちタイムでは最速の決着となった。

 ホッコータルマエは、休み明けで勝ったことがないという不安が指摘されたが、今回はドバイからの帰国後も順調で、100%とまではいわないまでも9割以上の力が発揮できる状態にはあったのだろう。今回の勝利でGI/JpnI・9勝目とし、ヴァーミリアン、エスポワールシチーの国内GI/JpnI最多勝記録に並んだ。このあとは一旦放牧に出して、秋はJBCクラシック(大井)から始動するとのこと。おそらくその後、順調であれば、チャンピオンズC、東京大賞典というローテーションになるのだろう。GI/JpnI最多勝記録更新の可能性はかなり高いといえそうだ。

 クリソライトは最後までホッコータルマエに食い下がり、よく2着に粘ったものと思う。逃げたクリノスターオーを半馬身〜1馬身ほどの差で追走していたから、先頭に立つ3コーナーまでの通過タイムの差はコンマ1〜2秒程度。向正面でもまだ武豊騎手は行きたがるのを抑えているようだった。かかり気味の1000m通過が60秒ほどというペースで、走破タイムはホッコータルマエからコンマ2秒遅れただけの2分2秒9は優秀。さすがに同じ舞台ではジャパンダートダービーを圧勝した経験があり、さらに昨年のJBCクラシック(盛岡)で2着という底力を示した。とはいえクリソライトは、昨年の東京大賞典では8着、かしわ記念では勝ったワンダーアキュートから1秒4離されての4着という成績もあり、依然として流れに乗れないともろい面はある。

 そしてクリソライトから2馬身半差、勝ったホッコータルマエからはコンマ7秒差で3着に入ったのが大井のハッピースプリント。道中はホッコータルマエからさらに差があっての6番手を追走。4コーナー手前で一気に仕掛けて先団の直後にとりついたときは、そのまま突き抜ける勢いだったが、さすがに直線では脚色が前2頭と同じになってしまった。予想原稿で、「かしわ記念は、昨年のジャパンダートダービー2着以降では、初めてといっていい見せ場のあるレースぶり」と書いたが、そのときがこの路線の2強(ホッコータルマエ、コパノリッキー)ともに不在での3着で、今回が2強のうち1頭がいての3着ということでは、確実に調子は上向いていた。メンバー次第で、2歳時以来のGI/JpnIタイトルは手の届くところにある。

 2番人気に支持されたクリノスターオーはハイペースで逃げたこともあっただろうが、それ以上にパドックからイレ込んでいて、さらに発汗がひどく、力を発揮できる状態にはなかったようだ。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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