スマートフォン版へ

新ローカルの帝王へ! 千直の支配者・西田雄一郎

  • 2015年07月07日(火) 18時00分
西田雄一郎騎手

西田雄一郎騎手




赤見:西田騎手って、千直得意ですよね?

西田:得意というか、千直は数をけっこう乗っているのでそういう風に思ってもらえるのかもしれませんね。騎手で、このコースが得意って言われることってあまりないじゃないですか。だから売りだとは思っています。

赤見:千直ってコーナーもないし、乗り方が難しいイメージです。

西田:僕の持論では、競馬自体は距離が長くなればなるほど、どっから仕掛けるかとか色んな要素が増えて、短くなればなるほどパターンは決まるんじゃないかって。何ハロン目が速くて、どこが遅くて、前半の位置取りからどこから追うっていうのを決めてる。自分なりの経験の中でパターンがあるので、そのパターンに個々の馬がどう当てはまるかです。

赤見:パターンが決まっているんですか?

西田:僕の場合はおおまかに言うと2つのパターンです。ハナっぱやい馬の千直と、そういう馬たちの弱点を突く乗り方。大半は後者になりますけど。僕が千直に乗ってたら何かやるんじゃないかって思ってもらえたら嬉しいですね。特に乗り替わりの馬とか、初めての千直の馬はワクワクします。千直って、走ってみないと本当に適性がわからなくて。それまでの経験がダートでも芝でも関係ないし、かなり特殊なレースですよね。

2010年アイビスサマーダッシュ(撮影:下野 雄規)

西田雄一郎騎手がケイティラブで復帰後初重賞制覇を果たした2010年アイビスサマーダッシュ(撮影:下野 雄規)



赤見:春の新潟開催では、乗り替わりで初の千直だったフレイムヘイローで韋駄天ステークスを快勝。15番人気を見事勝利に導きました。

西田:正直、返し馬の雰囲気では千直っていうイメージではないなと感じましたね。どっちかっていうと千直って、返し馬に行くとガーッとハミを取って行くタイプが多いんですけど、フレイムヘイローはけっこう物見してて、フワフワしてて。「あれ? 大丈夫かな?」と。自分で止めてしまうようなところがあると聞いていたので、返し馬で一発ムチを入れて気合を入れました。千直の返し馬でムチを入れることってなかなかないんですけど、止め際にちょっと入れました。レースもなるべく気を抜かせないようにしようと思いましたね。

赤見:中団くらいから進みましたけれども。

西田:オープン馬だから、もしここでいい競馬できればアイビスサマーダッシュを視野に入れられるなと思って、適性を見たいなというのがまずありました。テンからガツガツ行かせるというよりも、最後確実に脚を使わせるため前半は取っておこうと思って、取っておく中で脚を溜めたいなと。人気馬のネロやセイコーライコウがいたのでマークされる立場じゃなかったですし。

赤見:けっこう早めに追い出したように見えたんですけど。

西田:そうですね、自分が描いていた追い出しのポイントよりも早く追い出すことになってしまいました。それは最初に言った気性の問題、馬が止めちゃう前に追い出したんです。ただ、その時はあんまり手応えが良くなかったので、このまま脚がなくなっちゃうかなって思いました。まぁ、この時は手は動いているけど、準備の段階というか、そろそろ行くんだよ、という合図だったので、本気で追い出したわけではないんです。その後もう一回ハミを掛け直して追い出したら、グンと伸びてくれました。

赤見:人気薄、そして乗り替わりで勝つとインパクトも大きいですよね。

西田:あの時は15番人気でしたけど、千直は本当に特殊な競馬なんで、どの馬にもチャンスはあると思っています。人気薄で勝つと、もちろん頑張ってるのは馬ですけど、自分が思った競馬でハマってくれるとしてやったりですよね。韋駄天Sの時は、パドックで跨った時、「西田3着でいいぞ」って声を掛けて来た人がいて。ワイドとか複勝買ってるのかなって思ったんですけど、多分行き過ぎちゃったんでしょうね(笑)。ウイナーズサークルに来て喜んでくれるかなって思ったけど、そのおじさんはいなかったです(笑)。1着じゃダメだったんじゃないかな、3連単とかだったのかなって。乗り替わりで結果を出せると、それも嬉しいですね。前の乗り役と違う乗り方してみようかなって思って、ワクワクします。全部が全部いい結果を出せるわけじゃないけど、いい結果に繋がることが嬉しいです。

新潟直線1000m

西田雄一郎騎手が「どの馬にもチャンスはあると思っています」と語る直線1000m



赤見:今年はすでに9勝。去年の11勝よりかなりペースが上がりましたね。

西田:自分としては特に変わったことはないんですけど、中舘さんが引退したことは大きいです。ローカルには絶大なる逃げ巧者の中舘さんがいて、中舘さんが逃げればすごい上手だし、無茶な逃げもしないし、なかなかつけ入るスキがなかった。でも最近のローカルは、けっこう雑に逃げてるジョッキーが多かったんです。このジョッキーが逃げたら内は開くなとか、ステッキを持っている手の方へめがけて行けば、ステッキを叩いた時にヨレて開くだろうなとか。そういうところで冷静に見れて、その辺りが例年とは違うのかなと思います。

西田雄一郎騎手

西田雄一郎騎手「そういうところで冷静に見れて、その辺りが例年とは違うのかなと思います」



赤見:やはり中舘さんの存在は大きいですよね。

西田:大きいですよ! 本当に逃げるのが上手いし、その馬に合った最高のペースでレースを作れる、レジェンドですよね。今までは中舘さんを目指してレースすると負けちゃうけど、今はひょいっと差せる可能性が増えたので。今まで中舘さんたちと戦って来たことが活きているのかなと思います。今年の夏は福島と新潟で、いつものパターンで遠征します。その中で1つでも多く勝つように、レジェンドがいなくなった穴は埋められるように、時折思い切った競馬をしつつがんばります!

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング