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宝塚記念でのゴールドシップの出遅れ、太が本音でズバリ!

  • 2015年07月28日(火) 18時00分
小牧太

今回の太論では、小牧騎手が批判を覚悟で本音をぶっちゃけます!


宝塚記念でのゴールドシップの出遅れについて、評論家や記者、競馬ファンの間でいろいろと議論が巻き起こっているようです。しかし、出遅れの難しさを一番痛感しているのは、実際に乗っているジョッキー。はたして小牧騎手は、あの出遅れをどうとらえているのでしょうか。今回の太論では、小牧騎手が批判を覚悟で本音をぶっちゃけます!
(取材・文/不破由妃子)



競馬関係者に聞く“ゲート問題”の本音と解決策&ユーザーアンケート

批判を覚悟の上で…これは書いておいてください!

──ゴールドシップの宝塚記念の出遅れについて、netkeiba内でいろいろと議論が巻き起こっているそうです。評論家、記者などが持論を展開している一方で、現役の調教師や騎手も、匿名ですが、意見を寄せています。そこで、小牧さんにもあの一件について、ご意見を伺いたいと思いまして。

小牧 あれはもう、しょうがないでしょ。しょうがないと思う。なんせ生き物やから、出遅れることがあるのは、ある意味、当たり前やと思う。ゴールドシップの場合は、確かに(出遅れ方が)ひどいと思うけど、GIの1番人気やったから、こないしてワーッとなってるんでしょ? 僕から言わせれば、普段のレースでも普通にあることやで。たまたまゴールドシップが注目されたというだけで。

──とくに騒ぎ立てることではないと。

小牧 そうそう。何が起こっても“それが競馬”だと思っておかな。そもそもゴールドシップなんて、馬券を買うこと自体がものすごくギャンブルやん。

──ゲートで終わる可能性もありますからね。それこそ究極のギャンブルです。

小牧 そうやろ? 普通の馬より、何をしでかすかわからんのやから。でも、それが競馬であり、馬券を買う醍醐味でもあるんとちゃう?

──118億円が一瞬にパーになったという現実を前に、ゲート内で立ち上がった時点で、もうちょっと待てなかったのかという意見があるようなんです。スターターの技術といいますか、ああいうことがあると、ファンは馬券を買わなくなるのではないかと。

小牧 いやいや、それはおかしいよ。その馬1頭のために待つなんて、公平じゃないですやん。誰が言うてるのかしらんけど、もし、ゴールドシップの馬券を買った人がそんなこと言うてるんなら、なんだか腹が立つわ。ああいう馬だって分かっていて買ったんやろ? 買った人の責任やん。1番人気だからって、その馬のタイミングまでいつまでも待たされたら、それこそ公正じゃないやん。

──小牧さんにしては珍しく、強いご意見ですね。

小牧 だってそうやろ? 批判がくるのを覚悟で言うけど、「出遅れ云々をごちゃごちゃ言うのなら」ということを前提に、ゴールドシップの馬券を買った人が悪い。これは書いといてください。大抵のファンは、ガッカリしつつも納得してるんやろうけどね。なんせ、あの馬が出遅れるかもしれないことは、みんな最初からわかってるんやから。さっきも言ったけど、GI以外のレースでも、1番人気の馬が出遅れることなんて、よくあることや。

──ジョッキーとして、ゲートで「待たせる側」と「待たされる側」のどちらも経験されていると思いますが、改善策はあると思いますか?

小牧 勝ったとき(天皇賞・春)は、「なんでもっと早く入れんかったんやろ?」って思ったけどね。ほかの馬が待ってたでしょう。ただね、ゲートが悪い馬は試験を受けて、その都度、合格してるからレースに出られるわけで。そうなれば、もうどうしようもないやん。

──たとえば、ゲートボーイを付けるとか、馬券を払い戻すとか、そういう措置はないのかというご意見も。

小牧 そんなもん、そういうハプニングも込みやんね。ボートは返金があるかもしれんけど、あれは人間がやっていること。こっちは馬やもんね。前にもいましたやん、ラガーレグルスとかルーラーシップとかヒシアマゾンとか。何をしたところで、出ない馬は出ない、出ないときは出ないんや。僕も昔、なんていう馬やったかな…、橋口厩舎の血統馬で、5馬身くらい出遅れて、中山で野次られたなぁ…。

──レジェンダロッサですね(2005年10月2日・中山10R・外房S)。

小牧 そうそう! ローズバドもゲートで暴れとったし、あの一族はそういう傾向にあるね。だから、血統も関係あるよ。

──天皇賞のときのゴールドシップは、確か4分くらい入らなかったと思うんですが、そのほかの馬の負担になりませんか?

小牧 4分は確かに長いよねぇ。でも一生懸命、自分の馬をなだめるしかない。負担という意味では、待たされたことで逆にボーッとしてしまう馬がいるね。それはそれで出なくなるから。でも、そういうことも含めて競馬なんと違う? 他の人がどう思うかはわからんけど、僕はそう思うね。

──ちなみに、古馬になってからゲート難を解消することは難しいのですか?

小牧 若いうちにやっておいたほうがいいのかもしれんけど、古馬でもきっちり練習すれば、おとなしくなる馬はいるよ。逆に、若いころはちゃんとゲートを出ていたのに、古馬になってから出なくなる馬もおるしね。ゴールドシップは別やけど、「その日はたまたま出なかった」というケースだって山ほどあるわ。なんせ生き物なんやから。スターターのせいでもないし、厩舎のせいでもないし、ジョッキーのせいでもない。そういう癖のある馬については、みんな普段から改善すべく、一生懸命やってると思いますよ。予想をするとき、馬券を買うときに、そういう馬は出遅れも加味して考えればいいわけで。僕らジョッキーとしたら、難しい馬をきちんと出すことも技術やとわかってるから、みんなそれぞれに策を講じてるはずやしね。ただ、それでも出ない馬は出ないんや。

──生き物を思い通りに動かす難しさは、ジョッキーが一番わかっていますよね。

小牧 そうやね。ジョッキーもそうだけど、スターターさんも大変やと思うよ。16頭とか18頭いるなかで、1頭だけの動きに合わせるわけにもいかんし。

──「待って!」とか、ジョッキーも声を出すそうですね。

小牧 言います。座り込んだりしたら、「ちょっと待って!」とか言うよ。そうすれば待ってくれるし。

──スターターがスイッチを押してから、ゲートが開くまでにタイムラグがあると聞いたことがあるんですが、ジョッキーはそのタイミングを計れるんですか?

小牧 計れん。だって、見えんようになってるもん。「待って!」って言ったところで、スターターに聞こえていないこともあるし、僕だって暴れているときにスタートを切られれば、「何で今やねん!」と思うことはあるけど、それも含めて“競馬”やねん。
小牧太

「何で今やねん!」と思うことはあるけど、それも含めて“競馬”やねん

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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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