スマートフォン版へ

フランケル産駒が18頭上場される「タタソールズ・オクトーバー1歳セール・ブック1」

  • 2015年08月12日(水) 12時00分


フランケル産駒を巡っては、各国のセール主催者の間で激しい争奪戦が展開された

 ヨーロッパにおける最高水準の1歳馬が上場されることで知られる「タタソールズ・オクトーバー1歳セール・ブック1(10月6日〜8日、英国・ニューマーケット)」の上場馬が発表になった。

 今年は3日間で513頭が上場予定。主催者発表によれば、このうち37頭がG1勝ち馬、もしくはクラシック勝ち馬の弟妹で、これらを含めて重賞・準重賞勝ち馬の弟妹が、上場馬のほぼ半数を占める248頭もいるという、トップマーケットならではの品揃えとなっている。

 このコラムでもこれまで何度か書いたことがあるが、1歳市場に足を運ぶ際の大きな楽しみの1つが、フレッシュマンサイヤーの初年度産駒を見ることにある。父と似た仔が多いのか、そうでなければどんなタイプの仔が多く出ているのか、ある程度まとまった頭数を見ることが出来るせり市場は、新種牡馬に関して自分なりの判断材料を持つ絶好の機会となる。

 ましてや、である。

 今年のヨーロッパにおける1歳セールには、14戦14勝の成績を残して引退した「史上最強馬」フランケルの初年度産駒が上場されるのだ。怪物の初年度産駒がイヤリング・マーケットでどのような評価を受けるかは、関係者はもとよりファンにとっても、大きな関心事となっている。

 タタソールズ・オクトーバー・ブック1にフランケル産駒が18頭上場を予定している。これも主催者発表によると、各地で開催される1歳馬セールに上場されるフランケル産駒を合算しても、18頭には満たないそうだ。フランケル産駒を巡っては、各国のセール主催者の間で激しい争奪戦が展開されたのだが、結果は、現役時代のフランケルが拠点とし、現在も種牡馬として繋養されているニューマーケットで行われるセールが圧勝することになった。

 18頭のフランケル産駒の中でも目玉商品となりそうなのが、初日に登場する上場番号148番の牡馬になろうか。ウォーターシップダウンスタッドから上場される本馬は、牡馬を撃破したG1ドバイシーマクラシックを含めて3つのG1を制したダーレミの3番仔で、祖母ダララがG1ヴェルメイユ賞勝ち馬。G1プリンスオヴウェールズS勝ち馬リワイルディングを筆頭に、叔父に3頭のG1勝ち馬がいるという超名門牝系を背景に持っている。

 この他、母がG1ビヴァリーディーSなどG1・2勝のダイナフォースという上場番号174番の牡馬、母がG1パーソナルエンスンS勝ち馬アイコンプロジェクトという上場番号241番の牡馬、母がG1モーリスドゲスト賞などG1・2勝馬リーガルパレードという上場番号339番の牡馬、G1モルニー賞勝ち馬アルカノの半弟にあたる上場番号487番の牡馬など、見逃せないフランケル産駒が目白押しである。

 注目がフランケルに集中し、ともすれば陰に隠れがちだが、今年の1歳が初年度産駒となるフレッシュマンサイヤーは、なかなかに粒が揃っている。

 例えば、11年のG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスSや12年のG1エクリプスSを制したナサニエル(父ガリレオ)に、初年度産駒が1歳を迎え、この市場にはフランケルと同数の18頭がエントリーしている。母がG1オペラ賞勝ち馬キネアードという上場番号267番の牡馬、G1サンチャリオットS勝ち馬スピニングクイーンの半妹にあたる上場番号367番の牝馬、G1カナディアン国際勝ち馬サラリンクスの半弟にあたる上場番号472番の牡馬など、各々購買者の注目を集めそうだ。

 カタログを見て、想像以上に上質の牝馬が集まっているなと感じたのが、この世代が北半球における初年度産駒となる豪州産種牡馬のシーポイ(父イルーシヴクオリテイ)だ。

 豪州で12戦し、G1ゴールデンスリッパーSなど4つのG1を含む10勝をマーク。2歳時・3歳時と2年連続で豪州チャンピオンの座についたのがシーポイである。その後、ドバイで1戦、英国で1戦した際には、環境の変化や競馬の質の違いに対応出来ず、本来の力を出せずに敗線を喫している。12年に豪州で種牡馬入りし、半年後の13年春に英国にシャトルされ、14年春に生まれた北半球における初年度産駒が今年1歳を迎えている。

 このセールには16頭のシーポイ産駒がエントリーしているのだが、短距離G1・5勝のソールパワーの半妹にあたる上場番号156番の牝馬、母がG1EPテイラーS勝ち馬フロイラインという上場番号209番の牡馬、G1ブリティッシュチャンピオンズ・フィリーズ&メアズ勝ち馬シールオヴアプルーヴァルの半弟となる上場番号225番の牡馬、G1コロネーションSなどG1・2勝のリジーナの半弟となる上場番号436番の牡馬など、錚々たるラインナップがスタンバイしているのである。

 豪州産というだけで一枚割り引く傾向があるのがヨーロッパで、なおかつ、ヨーロッパで唯一の出走経験となったG1ジュライCは11着と大敗を喫しているシーポイに、これだけ上質の牝馬が集まっているというのは想定外で、逆に言えばシーポイには、ヨーロッパの生産者にとって食指をそそられる魅力的な要素があるのだろう。それが何かを見極めるのが、今年の1歳市場における1つのテーマとなりそうである。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング