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がんばれ、兵庫の若者

  • 2015年08月28日(金) 18時00分


◆トップツーが揃って不在

 あらかじめおことわり。今回は騎手名が何度も繰り返し出くるので、普段は名前のあとに付けている「騎手」は割愛させていただいた。

 兵庫では7月16日から田中学が腰痛のため騎乗を取りやめているのに続き、木村健も8月14日の開催中に発症した腰痛(腰堆椎間板ヘルニア急性憎悪との診断)で騎乗を取りやめている。ともに復帰まではかなりの期間を要するようで、兵庫ではトップツーが揃って不在になるという非常事態。

 8月27日現在、地方所属騎手の全国リーディングでは、1位が船橋の森泰斗で191勝とやや抜けていて、2位が川原正一164勝、3位が木村健160勝と、兵庫のベテラン2人が続いている。少し前まで2位は木村だったが、療養に入って川原が浮上した。

 近年の地方全国リーディングを振り返ると、一昨年は54歳(当時)の川原が267勝で地方の全国リーディング・トップとなり、3位が田中で、4位が木村。そして昨年は276勝の田中がわずか2勝差で木村をしりぞけて全国のトップに立ち、やや離れて3位が川原と、兵庫のベテランがトップ3を独占。2012年まで全国リーディングでダントツだった大井の戸崎圭太が中央に移籍したあとの2年は、兵庫のリーディング争いが、すなわち全国のリーディング争いとなっていた。兵庫4位の騎手の勝利数はかなり差があり、つまりはそれだけ兵庫ではトップ3に勝ち星が集中していたということになる。

 たしか昨年の春頃だったか、「兵庫トップ3の活躍はスゴイ!」というようなことを、騎手として1900勝以上を挙げ、現在は兵庫県騎手会の広報事業部代表をされている三野孝徳さんに話したところ、意外にも三野さんはあまりいい顔をされなかった。ようは、「若いの、もっと頑張らんかい」ということだった。

 あらためて、56歳の川原が今年ここまでに(8月27日現在)164勝を挙げているということもスゴイが、田中41歳、木村40歳である。たしかに、年齢的には世代交代の雰囲気があってしかるべきだろう。三野さんの浮かない表情は、そろそろイキのいい若手が台頭してこないと……という、兵庫の将来を案じてのことのようだった。

 トップツーの戦線離脱は、ファンにとっては残念なことだし、騎乗を依頼する調教師や馬主にしてみれば「困ったなあ」という思いに違いない。もちろん一番悔しい思いをしているのは本人たちだ。しかしそうなってしまったものは仕方ない。トップツーが稼ぐはずだった勝ち星は、当然誰かのところに行くことになる。そこで奮起すべきは若い騎手たちだ。

 そこで、木村の離脱後、8月19日から27日まで、5日間の園田開催の勝利数を調べてみたところ、川原と下原理(37歳)が7勝、永島太郎(41歳)が6勝で続き、あとは4勝が松浦政宏(41歳)、吉村智洋(30歳)となっている。

 わずか5日間で状況が劇的に変化することもないだろうが、トップツー不在で勝ち星を伸ばしているのは、やはり川原であり、ツートップに次ぐ実績を残してきた騎手たちだ。唯一、吉村は今年兵庫リーディングで目下5位と躍進がうかがえるが、それにしてもまだ上を脅かすほどの数字でもない。

 ツートップ不在によって浮いた勝ち星はこのあと誰のところに行くのか。特に兵庫の若い騎手たちは、この機会をチャンスと思って奮起してほしい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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