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「ちょっと使いすぎじゃないか?」と思われる言葉

  • 2015年08月29日(土) 12時00分


スポーツ中継で気になるフレーズ

 以前、当コラムに、競馬実況で「かわす」を使うのは、本来の意味からすると間違っている、という話を書きました。

「交わす」は、向こう(反対方向)からくるものと交差する、「躱す」は、身を翻して避ける、という意味の言葉。したがって、同じ方向に向かっているものを追い越すのは、本当は「抜く」、「追い抜く」などと言うべきなのです。しかし競馬では、「かわす」も「抜く」の意味で広く浸透しています。もうフツウに使ってかまわないのでは?というような話でした。

 その一方で、「私は絶対使わないぞ」と心に決めているのが「態勢完了」。「態勢」なら「整いました」、「完了」なら「ゲートイン」とか「準備」とかにくっつけて使うべき、と思うのです。実は、初めて(?)「態勢完了」という言葉を聞いたとき、かなりの違和感がありました。よく考えてみると、昔の競馬実況では使われていなかったような気もします。この記憶が正しいとしたら、最初に使い始めたのは誰なのでしょうか?

 ほかにも、最近のスポーツ中継で、「ちょっと使いすぎじゃないか?」と思われる言葉やフレーズがあります。例えば、「なるほど」と「ということになります」です。

「なるほど」は、よほど新鮮で得心する解説を聞いたときに使う言葉。そこには、「それは初耳ですね」とか「へぇー、そんなことがあるんですか」という意味が込められているはずです。

 ところが、「この話、そんなに目新しいか?」という解説に対しても「なるほど」を連発するアナウンサーさん、最近目立ちませんか?これって、自分の認識の甘さをさらけ出しているだけでなく、解説者や視聴者をバカにしているように聞こえてしまうのですが。

「ということになります」も“大量増殖中”。「〇〇投手、今回が〇回目の登板ということになります」、「次は〇〇との対戦ということになります」などなど、レストランの「こちらがハンバーグランチになります」と同じで、どれも「です」と言えば済む話でしょう?

「勝ち越しに成功」や「逆転に成功」の「成功」も不要と言えば不要。「振り出しに戻る」も、本当の意味で言えばスタートからやり直すことでしょうから、同点になったときに使うのは誤用とされてもおかしくないと思います(これはちょっとこだわり過ぎ?)。

「オマエだって時々言ってるだろう」って? はい、確かに。でも、なるべく使わないようにしているつもりです。もちろん、ついうっかり言っちゃったときには、「あっ、しまった!」と心の中で反省していますよ。

 さて、この場をお借りしてお知らせを1つ。31日発売の「週刊競馬ブック」に、競馬場と鉄道駅との関係にスポットを当てた私のコラムが掲載されます。ハッキリ言って異色のテーマですが、ぜひご一読ください!

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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