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サマーセール終了

  • 2015年09月02日(水) 18時00分
今回のセール4日間を通じての最高落札馬785番「ユニ」

4日間を通じての最高落札馬、785番「ユニ」の落札場面


思い思いにセリに参加し、声をかけて落札する。セリ本来の姿にかなり近づいてきているような印象を強く持った

 8月24日(月)より27日(木)の4日間の日程で開催されていたサマーセールが終わった。3日目、4日目は、売却率が63.1%、62.46%で、それぞれ前年比では-1.08%(26日)、-3.66%(27日)とやや伸び悩みがあったものの、前半2日間の“貯金”が大きく、最終的には昨年を4.20%上回る65.54%の売却率を記録した。

 1239頭(牡684頭、牝555頭)が上場され、812頭(牡499頭、牝313頭)が落札された。ほぼ3頭に2頭が売れた計算である。牡は72.95%、牝が56.4%の売却率である。

 売り上げ総額は、4日間を通じて、37億8820万8千円(税込)。前年より7億200万円の大幅増となった。上場頭数が106頭増えた以上に売却頭数も117頭増加し、同市場史上では空前の売れ行きとなった。

 ただ、平均価格は牡544万3936円、牝342万3911円で、全体では466万5281円と、前年比22万4694円の伸びにとどまった。

 とにかく数だけは次々にどんどん売れて行くセリであった。購買者登録も史上最多だった由で、前年より67人多い743人に達したという。

 市場を見ていると、初めて聞くような落札者名が目についた。それぞれが、予算と都合に合わせて思い思いにセリに参加し、声をかけて落札する。セリ本来の姿にかなり近づいてきているような印象を強く持った。かつて、20%台、30%台の売却率で推移し、場内の取引よりも、むしろ場外での“商談”の方がにぎやかだった頃から比べると隔世の感がある。

 3日目は、この市場で最も注目の高かったディープインパクト産駒が登場した。785番「ユニ」(母ユニバーサル、母の父ブライアンズタイム、牝黒鹿毛)で、母は中央3勝、祖母はエリモエクセル(オークスなど6勝)という名血馬で、お台は3000万円とのことだったが、一声で(株)吉澤ステーブルが落札した。生産は(有)様似渡辺牧場。飼養管理者は(有)様似木村牧場。結局、この馬が4日間を通じての最高落札馬であった。

785番「ユニ」

この市場で最も注目の高かった785番「ユニ」の立ち姿



 初日、2日目と売れに売れた印象だったので、3日目はやや失速気味の気配がないでもなかったが、しかしこの日が最も上場頭数が多く、328頭中207頭が落札されて、税込10億1779万円を売り上げた。初日からほぼ10億円ずつ売り上げを積み上げてきて、3日目が終わった段階ですでに、29億4516万円に達しており、昨年の4日間の売り上げ(税込30億8620万円)に近いところまで数字を伸ばしていた。

 4日目は、最も上場頭数が少ない日だったが、それでも285頭中178頭が落札され、売却率は6割をキープした。4日目の売り上げ分がほぼそっくり「プラスアルファ」になった形である。

 4日目の最高価格馬は1060番「フローリストライフの2014」(父ファルブラヴ、母の父ネオユニヴァース、牡鹿毛)の1696万6千円。新ひだか町三石本桐の佐藤陽一氏の生産馬で、飼養管理者は沖田忠幸氏、落札したのは国本哲秀氏。

1060番「フローリストライフの2014」

4日目最高価格馬1060番「フローリストライフの2014」の落札場面


1060番「フローリストライフの2014」

4日目最高価格馬1060番「フローリストライフの2014」の立ち姿



 ほぼ望み得る最高の結果となったことで、主催者を代表して日高軽種馬農協の木村貢組合長は「90点を付けられるセリでした。この数字が出てしまうと、今後この水準を維持させて行くのが大変だと嬉しい悲鳴を上げています。6割を超えた昨年よりもさらに売却率が伸び、売り上げも7億円増え、購買された皆様に感謝申し上げます」と表情を和らげた。

 その一方で、「想定外とも言うべき購買登録者の数になり、宿泊や食事など、いろいろと問題も生じてきており、今後の課題として考えて行かなければなりません」とも付け加えた。現実問題として、新ひだか町の地元だけでこの購買者を全て受け入れるだけの宿泊施設はなく、隣接する他町の他、シャトルバスを運行して苫小牧、千歳などからも足の確保をせざるを得なかった。

 賑わうのはとても良いことで、上場馬が数多く落札されるのは何より喜ばしいことだが、ここにきて新たなホスピタリティの課題が浮上してきている。宿泊施設は急激に増やせるわけではなく、何とも頭の痛い問題だ。当面は、他の町へ分散して宿泊して頂く以外に方法がなさそうだ。

 また、史上最多頭数が落札されたことにより、セリの所用時間も延びた。とりわけ好況だった初日は午後7時までセリが行われ、2日目、3日目も、午後6時を過ぎていた。

 だが、購買者からの強い要望で5日間開催が4日間に短縮された経緯もあり、当面はこの日程でサマーセールを実施する方向だという。年々微減し続ける日高のサラブレッド生産頭数だが、その一方でセリ上場馬はむしろ増えており、明らかに「良い馬は市場に出す」傾向が一段と顕著になってきている。そして、多くの人々の前で価格が決められるセリこそが、本来あるべき取引の理想形なのは言うまでもないこと。後は個々の価格をいかに上げて行けるかが大きな課題になってくる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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