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少ない園田の短距離重賞

  • 2015年09月11日(金) 18時00分


◆バランスが悪い重賞数

 先週、9月4日に行われた園田チャレンジカップのゴール前は、見応えのあるレースだった。逃げていたマルトクスパートが直線半ばあたりまでは逃げ切ったかと思えたが、ゴール前で後続4頭ほどが一気に迫り、そのうちの1頭、ヒシサブリナが見事に差し切って見せた。鞍上は川原正一騎手。

 前々回のこのコラムで、『がんばれ、兵庫の若者』と題して、「兵庫の若い騎手たちは奮起してほしい」というようなことを書いたが、いや、この騎乗を見せられると、56歳のこの人を超えろというのは相当に難しいかなと、あらためて思わされた。

 さて、ここからが本題。以前から指摘されていることだが、現在、兵庫で行われている古馬(3・4歳以上)の重賞で、ダートグレードの兵庫ゴールドトロフィーと牝馬限定戦を別とすると、1400m戦はこの園田チャレンジCしかない。兵庫で行われているレースでは1400m戦が圧倒的に多いにもかかわらずだ。ちなみに昨年1年間に園田競馬場で行われた古馬の距離別レース数は以下のとおり(ちなみに、姫路競馬場での開催は2012年を最後に行われていない)。

 820m=1
 1230m=141
 1400m=1241
 1700m=179
 1870m=8
 2400m=1

 園田の古馬のレースでは、1400m戦がじつに全体の8割近くを占めているのだ。にもかかわらず、短距離の範疇に入る古馬重賞(ダートグレード、牝馬限定戦を除く、以下同)は、園田チャレンジCのほかには、古馬のレースでは1年に1度だけこのレースしか行われていない特異な距離(820m)の園田FCスプリントがあるのみ。

 そのほかの古馬重賞は、1700mが2レース(摂津盃、姫山菊花賞)、1870mが3レース(新春賞、兵庫大賞典、園田金盃)、2400mが1レース(六甲盃)となっている。

 近年は距離別のレース体系を意識する主催者が増えてきたものの、地方競馬ではかつて重賞の多くが長距離戦で、しかも距離が長いほど格が高いという時代が長かった。兵庫の重賞の距離体系は、その名残りと思われる。

 しかし全体の約8割が1400mで行われているからには、その距離を得意とする馬が多く出てくるはず。それで近年目立っているのが、名古屋・笠松へ遠征しての活躍。両競馬場で地方の広域交流として行われている1400mの古馬重賞(同じくダートグレード、牝馬限定戦は除く)は計4レースあり、今年までに行われた過去10年の兵庫所属馬の成績を見てみると、名古屋の東海桜花賞で3勝、以下は笠松で、白銀争覇3勝、サマーC3勝、笠松グランプリ(このレースだけ地方全国交流)2勝となっている。兵庫所属馬にとってはアウェーであることを考えれば、相当な活躍といえるのではないだろうか。

 ある程度距離に融通がきく馬であればいいが、1400m前後に特化した強い馬は、地元園田の大レースでは活躍の機会が限られてしまうことになる。

 繰り返しになるが、古馬戦全体の8割近くが1400m戦であるにもかかわらず、重賞では1700m以上が6レースなのに対して、1400m以下は2レースのみというのは、いかにもバランスが悪い。

 兵庫では年末に1400mのJpnIII、兵庫ゴールドトロフィーが行われているが、おおむねその3週前に行われている園田金盃(1870m)を、ひとまず地元の前哨戦として1400mにするというのはどうだろう。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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