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日本馬不在も見逃せない今年の凱旋門賞展望

  • 2015年09月30日(水) 12時00分


中心となるのはレース史上初の3連覇に挑む「生涯最高の出来」のトレヴ

 ヨーロッパ2400m戦線におけるシーズンの総決算となるG1凱旋門賞の発走が、今週日曜日(4日)の現地時間15時55分、日本時間の22時55分に迫っている。

 今年は2009年以来6年ぶりに日本馬不在の凱旋門賞となったが、競馬ファンならば絶対に見逃せないレースであることは間違いない。なにしろ、昨年の2着馬フリントシャー(牡5、父ダンシリ)が、今季もここまで順調なシーズンを送っていながら、前売りで7〜8番人気に甘んじているという、分厚いメンバー構成となっているのである。

 中心となるのは言うまでもなく、レース史上初の3連覇に挑むトレヴ(牝5、父モティヴェイター)だ。

 昨年の凱旋門賞後に一旦は引退と繁殖入りが発表されながら、その後撤回して今季も現役に留まった同馬。シーズン当初から3連敗を喫した昨年とは一変し、今季は緒戦のG2コリーダ賞(芝2100m)、続くG1サンクルー大賞(芝2400m)、前走G1ヴェルメイユ賞(芝2400m)と3連勝。後続に6馬身差をつける圧巻の走りを見せた前走後もすこぶる順調で、陣営からは「生涯最高の出来」との声が挙がっており、空前にしておそらくは絶後になるであろう3連覇達成に死角なしと見られている。

 凱旋門賞以外の開催日は驚くほど閑散としているロンシャンだが、ヴェルメイユ賞後にトレヴがパドックに凱旋してきた時には、凱旋門賞かと見紛うほどの大歓声が上がったのを見てもわかるように、トレヴは今やフランス国民にとってのヒロインとなっている。彼女が大記録を達成した後の競馬場がどんな雰囲気に包まれるか、出来うるならば体感したいものである。

 ブックメーカー各社が2番人気に推しているのが、地元の3歳勢を代表して出走する形となるニューベイ(牡3、父ドゥバウィ)だ。春のG1仏ダービー(芝2100m)勝ち馬で、2着となった3冠緒戦のG1仏2000ギニー(芝1600m)を含めて、春は「最後方一気」という派手な競馬を展開していた馬が、早めの夏休みをとって戦列復帰して以降の2戦は、いずれも好位抜け出しで楽勝。有力馬の中には道悪を嫌う馬が多い中、雨をまったく厭わないのがこの馬で、馬場が悪化するようならこの馬の2番手評価も不動なものになりそうだ。

 7月はじめの段階ではトレヴに接近する2番人気に浮上しながら、8月以降は評価が揺れ続けているのがゴールデンホーン(牡3、父ケイプクロス)である。ご存知のように、デビューから無敗でG1英ダービー(芝12F10y)を制した馬で、古馬との初対決となったG1エクリプスS(芝10F7y)も快勝すると、凱旋門賞でトレヴを止めることが出来るのは「この馬しかいない」とまでの評価を受けた。ところが、G1インターナショナルS(芝10F88y)で、道中折り合いを欠く場面があり、単勝オッズ51倍の伏兵アラビアンクイーン(牝3、父ドゥバウィ)の2着に敗れて連勝がストップ。前走G1愛チャンピオンS(芝10F)では逃げるという予想外の手に出て連敗は阻止したものの、残り1Fの地点で外に大きく寄れるというお行儀の悪さを露呈。陣営は、凱旋門賞では末脚を活かす競馬をすると言明しているが、名手フランキー・デトーリがこの馬をどう御すかが、今年の凱旋門賞の行方を占う上で大きなカギとなりそうである。

 そのゴールデンホーンとの対戦成績は2戦2敗である一方、ゴールデンホーン以外の馬には負けたことがないのが、ジャックホブス(牡3、父ホーリング)だ。今季緒戦となったサンダウンの条件戦(芝10F7y)が12馬身差、G1愛ダービー(芝12F)が5馬身差、前哨戦のG3セプテンバーS(AW12F)も弱敵相手だったとはいえほとんど馬なりで3.1/4馬身差と、勝ちパターンに嵌った時に見せる破壊力には相当のものがある。ここに出てくれば、当然争覇圏だが、陣営は10月17日のG1チャンピオンS(芝10F)に廻る可能性も示唆している

 愛国調教の古馬を代表しての参戦となるのが、フリーイーグル(牡4、父ハイチャパラル)だ。今年のロイヤルアスコットでG1プリンスオヴウェールズS(芝10F)を制したのがG1初制覇で、前走G1愛チャンピオンSでは、斜行したゴールデンホーンに進路を妨害される不利があって、3着に敗れている。すなわち、成績の字面だけみれば、この顔触れに入るとやや物足りないのだが、管理するダーモット・ウェルドが早くから期待していたポテンシャルの高さはここまでのレース振りから確かに感じ取ることが出来、充実の4歳秋を迎えた今ならば、ここでもうひと皮むけた競馬をしてもおかしくはない。ことに馬場が乾いた際には、トレヴに続く2番手評価に挙げたいと思っている。

 3歳世代の牝馬を代表しての参戦となるのが、ファウンド(牝3、父ガリレオ)だ。昨年秋から今年春にかけてのシーズンオフの間、G1英オークス(芝12F10y)へ向けたアンティポストで圧倒的1番人気に支持されていた馬である。開幕直前に熱発を発症した影響からか、春シーズンは今一つ物足りない競馬が続いたが、建て直しを図って出走したここ2戦は、悪くないパフォーマンスを見せている。3歳牝馬が過去10年で3勝しているという近年の傾向も踏まえれば、馬券的にぜひ押さえておきたい馬である。

 G2ニエル賞(芝2400m)では道悪をこなせず4着に敗退したものの、G1パリ大賞(芝2400m)の勝ち方が印象的だったのがエルプ(牡3、父ドゥバウィ)だ。そして、ブックメーカーの人気ではこれに次ぐのが、冒頭で触れた昨年の2着馬フリントシャーである。

 パリは先週の半ばから好天が続いているが、レース前日の土曜日に雨が降るとの予報が出ている。有力馬の多くの馬がGood to Softより悪くなって欲しくないと希望しているだけに、果たしてどれだけの雨量になるかがおおいに気懸りである。

 なおレースの模様は、グリーンチャンネルで生中継(22時30分〜23時30分)される他、関西ローカルになるが関西テレビでもディレイでの中継(25時15分から25時45分)があるので、日本の皆様もぜひご覧をいただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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