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藤田伸二騎手の引退に寄せて

  • 2015年10月07日(水) 18時00分
小牧太

今週の太論は、藤田伸二騎手の引退がテーマ


今週の太論は、藤田伸二騎手の引退がテーマ。「同じ40代として、藤田騎手の引退をどう思いますか?」「小牧さんから見て、どんなジョッキーでしたか?」「藤田さんがエージェント制度を批判していましたが、小牧さんはエージェント制度についてどう思われますか?」などなど、ユーザーからのさまざまな質問に答えます!
(取材・文/不破由妃子)


40代がまたひとり…ホンマに寂しいねぇ

──9月は藤田伸二騎手の引退について、たくさんの質問がきたのですが、まずは「率直に藤田騎手の引退について、どういった感想をお持ちですか?」という質問から。

小牧 だいぶ前からトレセンにも来てなかったし、やる気も薄れていたように見えたから、それやったら辞めたほうがいいのにな…とは思ってた。北海道に引っ越していたらしいしね。

──以前、調整ルームでちょくちょく話をするとおっしゃっていましたよね。

小牧 そうそう。ご飯を食べるときにね。でも、他愛のない話やで。深い話はしたことがない。藤田くんは、調整ルームの食堂で飲んでいるもんやから、若手がそれを嫌がってね。最後は自分の部屋で食事をとるようになってた。ちょっと可哀そうやったな。

──「小牧騎手から見て、どんなジョッキーでしたか?」という質問も。

小牧 バリバリの頃は、しっかり追ってくるジョッキーやなぁと思って見てたよ。あとは何より、制裁が少なかったのはスゴイ。徹底してたからね。特別模範騎手を二度も獲ったけど、実際には馬の癖とかが影響してくることもあるから、なかなか無制裁なんてできないよ。だから、本当にスゴイことやと思う。それだけ厳しかったけどね。

──厳しかったというのは、人に対して?

小牧 自分に対してもね。危ない騎乗をする後輩に対して厳しくするのは、当たり前やからね。当たり前のことができないときは怒っとったけど、理不尽なことは言わんかったと思うよ。邪魔をされたり、危ない騎乗をしたときは怒っとったけど。それは当たり前のことやし、大事なことやから。

──確かにそうですね。それにしても、また40代がひとり減ってしまって…。

小牧 そうやねん、それはホンマに寂しいねぇ。野球選手でも、40代の引退が相次いでるしね。谷(佳知・42)、谷繁(元信・44)、和田(一浩・43)、小笠原(道大・41)…。一方で、ゴン中山は47歳で復帰したからね。僕と同級生(笑)。そういうニュースはうれしいね。

──そういえば武豊さんも、「100回目のダービーまで頑張る」とインタビューで答えていらっしゃいましたよ。18年先ですから、60歳を超えますが。

小牧 そんな(笑)。乗せてもらえるだけで奇跡やん。でもまぁ、そのくらいの気持ちでっていうことやね。

──続いては、「藤田さんがエージェント制度を批判していましたが、小牧さんはエージェント制度をどうお考えでしょうか」という質問です。

小牧 ん〜、僕の場合、中央にきてからはエージェントがいる環境しか知らんし。ただ、エージェントで決まってしまうところはあるよね。それはもう、どうしようもないですわ。園田では自分が自分のエージェントやったけど、やっぱり馬の取り合いやったからね。今はエージェントがいるおかげでそういうのがないから、楽といえば楽やけど。

──確かにジョッキーの仕事量は減ったと思います。

小牧 ただ、なかなかねぇ…。いいエージェントさんが付いている人は安泰、っていうのはあるよね。もちろん、僕のエージェントも頑張ってくれてるけど、どうしてもいい馬が(一定のエージェントに)固まってしまうからね。それは嫌やね。ま、勝負の世界やから、それが当たり前なんやけど。

──藤田さんの引退文は読みましたか?

小牧 うん。スポーツ新聞で読んだよ。そこにも、「年明けにリーディングの顔ぶれが決まってしまう」みたいなことが書いてあったね。確かに…毎年、何人かに絞られるよね。

──個人的には、エージェント制度もそうですが、時代の流れというか、馬主さんの力が強くなったことも大いに関係があるのではないかと思うのですが。

小牧 それはあるね。調教師が乗り役を決めづらくなったからね。

──では、藤田さんの気持ちがわかるところもあると。

小牧 うん、そうやね。でも、しょうがないですやん。僕らは与えられた環境のなかでやっていくしかないわけで。ただ、中央に来てから今のエージェントさんで4人目やけど、僕の場合、良くも悪くもエージェントさんによって成績が大きく変わった実感はないからね。もちろん、愚痴は言うけど(笑)。関西でいうと、ベスト10あたりをチョロチョロしてるわけですやん。だったら、もうちょっといい馬が回ってこうへんかなぁ…と思ったり。結局は、自分で権利を取った馬でばかり勝ってるしね。ま、エージェントさんが一生懸命やってくれてるのはわかってるし、気持ちを強く持って頑張りますわ。
小牧太

僕らは与えられた環境のなかでやっていくしかないわけで



【次回の太論は!?】
「競馬場までの交通費は、馬主さんが払うと聞いたことがありますが、本当ですか?」「同じレースに複数の騎乗依頼がきたとき、どのように騎乗馬を決めるのですか?」などなど、競馬界の裏側(?)についての質問が。小牧騎手のぶっちゃけトークをお楽しみに!
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太論 / 小牧太
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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