スマートフォン版へ

角川厩舎が圧巻のワンツー/エーデルワイス賞

  • 2015年10月16日(金) 18時00分

(撮影:田中 哲実)



道営の上位3頭は紙一重の実力差

 ここまで重賞2勝ずつと星を分け、しかも直接対決では1勝1敗だった2頭、タイニーダンサーとモダンウーマンの強さがやはり際立っていたというレースだった。

 逃げたモダンウーマンが直線でも単独先頭だったが、中団の内からラチ沿いを通って位置取りを上げてきたタイニーダンサーが直線で外に切替えると、モダンウーマンをとらえ突き放しての完勝。JRAのディーズプラネットが3着で、4着にはマックスガーデン。この道営勢上位3頭は、着順こそ違うものの9月3日のリリーCでも3着までを独占。そのレースぶりからこの3頭は同世代の牝馬では相当にレベルが高いと思っていたが、モダンウーマンとマックスガーデンが抜けた9月22日のフローラルCではそのとおり、タイニーダンサーの大差圧勝となっていた。今回のエーデルワイス賞では、その3強の実力の高さをあらためて確認することとなった。

 今シーズンの門別は同じ馬場状態でも日によってタイムが1秒以上違うこともあり、単純なタイム比較はなかなか難しいのだが、稍重のリリーCをモダンウーマンが逃げ切った時の勝ちタイムが1分14秒0で、今回は良馬場で差し切ったタイニーダンサーが1分14秒1と、勝ちタイムはほぼ同じ。

 リリーCのときはモダンウーマンが後続を引きつけての逃げで前半3Fが36秒0。前半に溜められたぶん、4コーナーから直線を向いたところでマックスガーデン、タイニーダンサーが直後に迫っても、それを振り切ることができた。

 対して今回は、逃げたのは同じくモダンウーマンだが、単独での先頭。直後にJRAのスズカプリズムが続き、3番手以下はやや離れていた。その前半3F通過は35秒5。馬場が乾いていたことも考えれば、モダンウーマンにとってはリリーCのときよりも厳しいペースだった。中団に控えたタイニーダンサーが差し切ることができたのは、そのペースの違いによるものだろう。それゆえ道営の上位3頭は、展開やペースひとつで着順が入れ替わる紙一重の実力差と考えられる。ただ脚質的には、距離が伸びてということならタイニーダンサーに分がありそうだ。

 JRA勢最先着となったディーズプラネットは、タイニーダンサーよりさらに後ろという位置取り。そして直線大外からよく伸びての3着。ただその伸びにしても、タイニーダンサーの上り37秒9に対して38秒6だった。それにしてもこの馬、デビュー戦の馬体重が466kgで、2戦目の札幌2歳Sが+8kgの474kg。そして今回、そこから40日ほどでさらに20kg増やしての494kg。馬体が増加したぶん、充実してきたということなのだろうか。

 そしてJRA勢では唯一ダートで勝ち星を挙げ、単勝では1番人気に支持されたチェストケリリーだが、スタートでタイミングが合わず痛恨の出遅れ。新馬戦でも出負けしていたように、スタートに難があるのかもしれない。3コーナーで中団うしろまで上ってきたところですでに脚を使っていて、それでも最後はディーズプラネットと同じ上り38秒6での5着。互角にスタートしていればもう少し最後に脚が使えたかもしれない。

 予想の時にも触れたが、タイニーダンサー、モダンウーマンは、角川秀樹厩舎、生産&馬主がグランド牧場、父サウスヴィグラスのワンツーという結果。さらに3着のディーズプラネットの生産者もまたグランド牧場だった。

 角川調教師が2歳戦で傑出した成績を残しているのはすでに知られるところだが、今シーズンのホッカイドウ競馬の2歳重賞でもここまで8戦のうち6勝と、独占に近い状態。特に牝馬での活躍が目立っていて、エーデルワイス賞は2008年から今年までの8年間で、角川調教師が4勝、JRAが4勝。角川調教師 vs JRA勢という様相となっている。

 ホッカイドウ競馬のこの世代の上位何頭かは、例年よりレベルが高いのではないかと見ていたが、4着のマックスガーデンまで含めての牝馬3強は、今後の活躍が大いに期待できそう。余談にはなるが牡馬についても触れておくと、強風のため10月13日に延期して行われたサンライズCを1番人気で制したタービランスは、もし出走することになればタイニーダンサーとともに、北海道2歳優駿JpnIIIでは間違いなく中心的な存在となるだろう。さらにそのタービランスにしか先着されていないという成績のトロヴァオは、大井に移籍しての初戦となった14日のハイセイコー記念を快勝している。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング