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ちょうどいいペースで逃げ馬を追撃/天皇賞・秋

  • 2015年10月31日(土) 18時00分


走破タイムを推測してアプローチ

 春の3200m、秋の2000mを合わせ天皇賞成績【11-7-8-23】の武豊騎手は、あと1勝で不滅の金字塔G1「70勝」に到達する。今回は、レースを自分で作るエイシンヒカリに騎乗するが、98年のサイレンススズカの競走中止もあり、G1を「ハナに立って」そのまま押し切ったことは1度もない、という不思議な記録がある。逃げ切りはないのである。

 不思議といえば、おそらく逃げの手に出るだろうエイシンヒカリは、デビュー戦が1800m「1分45秒7」。前回の毎日王冠が「1分45秒6」。ここまで1800mを6勝もしているのに、うち5勝が「1分45秒4-7」に集中する、普通はあり得ない記録を続けている。もちろんペースは同じではないが、勝ちタイムは同一にも近い。

 おまけに、2000mは2戦2勝だが、自己最高は、東京2000mを1800m通過「1分45秒5」で行った際の「1分58秒3」である。

 まだ全容を現したとはいえないが、異常なほど1800mを1分45秒5前後の同じタイムで走破し、その延長が2000m1分58秒3であり、この2000mには全体ペースの整合性もある。

 しかし、エイシンヒカリの今回の2000mがどういう時計になるのか推測するのは、ここまでと同じでは天皇賞で足りる可能性が低くなるから、難しい。でも、エイシンヒカリは自分でレースを作る逃げ馬であり、とりあえずの相手は自分自身のレース内容(時計)である。

 決して、快速馬ではない。一定の平均ペースで行って、できるだけラップを落とさないで粘り込もうとするエイシンヒカリは、おそらく単騎の逃げ。走破タイムを(少し強引でも)推測したい。そうしないと、今年は勝ち馬にアプローチできない。

 武豊騎手である。天皇賞でまず変なペースの逃げはない。スローも、危険なハイペースも、ここまでのエイシンヒカリの内容では、勝利に手が届かないと考える気がする。みんな推測の数字は異なるだろうが、エイシンヒカリの現時点での能力を100%発揮するには、「59秒0-59秒0」=1分58秒0では天皇賞では足りないはずである。毎日王冠のように、前半スローの59秒9(約60秒)では、前回の上がり45秒7-34秒0が、ほぼ精いっばいだったから、後半1000mは約58秒0近くになり、やっぱり足りない。(58秒7-58秒7)=1分57秒4くらいに限りなく近づくとき、平均ペース型のエイシンヒカリに勝機が訪れそうだが、問題は、エイシンヒカリが1分57秒前半でホントに乗り切れる能力があるか、である。

 一方、自分でレースを作るエイシンヒカリを見ながらレースを進めるグループは、エイシンヒカリが快速馬で、あまり離れずに追撃しては自分の方が危なくなると考えている人馬は、自分でチャンスを小さくしてしまいそうだが、平均ペース型のエイシンヒカリはそう怖くはない。ここまでのレースを見たり、戦ってきて、1分58秒くらいがいいところではないかと、武=エイシンの現時点の能力を高く評価していない人馬に勝機が高くなるように思える。

 前半58秒7くらいで行くエイシンヒカリを最初から射程に入れ、3馬身差くらいで追撃して行けば、その馬の前半1000m通過は、60秒3-4。好位差しを狙う馬にとっては、2000mの全体時計がもっとも速くなる形に持ち込める。差し馬にとっては、このくらいの前半なら、後半を57秒0くらいでまとめることは不可能ではない。

 エイシンヒカリの粘り込みではなく、ちょうどいいペースで追撃できることになりそうな好位差しに期待する。

 置かれては可能性が低くなるが、強気に好位につけそうなラブリーデイディサイファが、エイシンの逃げるペースを利せると考えたい。スローだったが、前回のラブリーデイは、2400mの後半1000mを推定「56秒8-44秒2-32秒3」で上がっている。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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