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騎手がレースで“ゾーン”を体験することはあるのか!?

  • 2015年11月10日(火) 18時00分
小牧太

今回は小牧騎手ならではの繊細な感覚で、ユーザーの素朴な疑問に答えます!


「パドックや返し馬で“今日は走らないかも…”と思うことは?」「アスリートとしてゾーンを経験したことはある?」「優勝カップや賞品はどうしてる?」などなど、今回は競馬にまつわる質問特集。小牧騎手ならではの繊細な感覚で、ユーザーの素朴な疑問に答えます!
(取材・文/不破由妃子)


ありえへんところで前がパカッと開いたり…

──今回もユーザーからの質問を4つほど。まずは、「よく“馬7人3”と言われますが、小牧さんはどのようにお考えですか?」という質問です。

小牧 そうでしょうね。やっぱり走らん馬はどうしたって走らんもんね。でも、馬にもよるよ。この前、僕が勝ったテーオーイージス(10月12日・京都6R・3歳上500万下)なんか、力はあるけどズブい馬なんでね。動かさなアカンぶん、“馬6人4”くらいになるんちゃうかな。

──馬によっては“馬8人2”になる場合も?

小牧 ローズキングダムなんかはそうだったと思うよ。走る馬はそうでしょう。一番大事になってくるのは、いかに馬の邪魔をせんように乗るかだから。走る馬は、追うとか追わないとか関係ないしね。

──続いては、「パドックや返し馬で乗ったときの感触や馬の動きで、“今日は走らないかも…”と思うことはありますか?」という質問です。

小牧 あるある、しょっちゅうある。今年の夏でいえばエノラブエナ。KBC杯(8月1日・小倉11R・1番人気10着)と釜山S(8月29日・小倉11R・3番人気4着)を使って、どっちも人気してたけど、返し馬からなんか雰囲気がおかしかった。ボーっとしていて、いつもの元気がなかったっていうかね。夏だからかなぁと思ったりね。

──オープン特別なら力は上位のはずですものね。

小牧 そうやねん。2走目はそこそこ上位にきたけど、1走目はグリグリやったのにサッパリやった。あんな馬じゃないはずなのにねぇ。でも、そのときは、やっぱり返し馬の時点で、「もうひとつやなぁ」と思った覚えがあるよ。ただ、エノラブエナに限らず、そういうことはしょっちゅうある。逆に返し馬で「今日は具合が良さそうやなぁ」と思うこともあるし。この前のミッキーラブソングなんか、すごくいい返し馬やった。

──ボーっとしている以外に、今日はもうひとつだな…と思うのは、どんなときですか?

小牧 そうやねぇ、脚がスムーズに出なかったとか。パドックではそこまで状態の良し悪しはわからない。返し馬で走らせてみてわかることやね。

──続いては、「僕は学生時代、スポーツに没頭し、それなりのレベルまで頑張ってきたと自負しておりますが、過去に一度だけ、“ゾーン”と呼ばれる域に達したと感じた瞬間(プレイ)を経験したことがあります。小牧さんはこれまでたくさんのレースに騎乗されてきましたが、“ゾーン”を経験したことはありますか?」

小牧 ゾーンねぇ(苦笑)。難しいよね、競馬は個人プレイではないから。たまに行くとこ行くとこ開いたりすることはあるけど、それはゾーンというより運でしょう。

──ジョッキーでいうゾーンとは、馬との一体感ということになるのでしょうか。

小牧 う〜ん、どうなんやろ。それもそうかもしれんし、進路ひとつを取っても、調子がいいときはなんでもうまくいくもので。ありえへんところで前がパカッと開いたりするからね。

──そういえば以前、あるジョッキーが「4コーナーでヴィクトリーロードが見えた」とおっしゃっていたことがあります。それも一種のゾーンなのかと。

小牧 ああ。でも、それでいざ追い出したら閉まったりするで(苦笑)。ゾーンといっていいのかどうかわからんけど、確かに自分で“完璧やったな”と思うことはあるよ。近いところでは、レッドオーラム(9月13日・阪神8R・3歳上500万下)とか。

──内を捌いて伸びてきたレースですね。

小牧 そうそう。あの勝ち方は気持ちよかったし、すごくうれしかった。

──最後の質問は、「優勝時にもらうカップや賞品などはどうしているのですか? 何百勝、何千勝もしていると、カップや賞品だらけになってしまうのではないですか?」という質問です。

小牧 あのカップはもらえないんちゃうかな。トロフィーにしても、少なくとも家には飾ってないなぁ。賞品はいろいろあるよね。コーヒーカップとか壺とか。

──壺!?

小牧 そうそう(笑)。新潟のレースを勝ったときは、確かエビをもらったような…。

小牧太

新潟のレースを勝ったときは、確かエビをもらったような…



──ちなみに、これまでにもらった賞品のなかで、一番印象に残っているものはなんですか?

小牧 テレビかな。すっごくデッカイやつ! あれは確か、テンシノキセキでテレビ愛知オープンを勝ったときやな。まだ僕が地方に所属してるころでね、「おぉ!」と思った覚えがあるわ。ただね、あんまり賞品は意識してないよ。結果的に「ああ、もらえるんや」っていう感じで。それよりお金が大事やからね!
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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