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オーナーもぜひ会見に

  • 2015年11月14日(土) 12時00分


「爆買い」か「五郎丸ポーズ」か、それとも「マイナンバー」あたりか。

 新語・流行語大賞がどれに決まるのか、気になる季節になった。

 競馬界では、数カ月や1年足らずのうちにある言葉が急に使われだすことはそう多くない。専門用語が幅を利かせているぶん、新語・流行語ができにくい業界なのである。しかし、今年はひとつだけ、流行語大賞候補がある。「まつり」だ。

 キタサンブラックで菊花賞を勝った北島三郎オーナーが、レース後、異例の馬主インタビューに応じた。そして、「公約」どおり、即興で「まーつりだ、まつりだまつりだ、キタサンまつーり。これが競馬のまつりだよー♪」と歌った。

 そのキタサンブラックの次走は、有馬記念になるという。もしグランプリを制し、また北島オーナーの「まつり」を聴くことができたら、誰にとっても忘れられないグランプリになるだろう。

 先に「異例」と記したように、GI終了後のスタンド前でのインタビューや、その後の共同会見に馬主は参加しないのが普通だ。私の記憶にある限り、馬主が出席したのは、ディープインパクトの菊花賞と、引退レースとなった2006年の有馬記念終了後の共同会見に臨んだ金子真人オーナーだけだ。

 レース直後のインタビューは、最終レースまでの時間の都合もあるので難しいかもしれないが、その後に行われる共同会見には、毎回オーナーに出席してもらうようにしてもいいのではないか。北島オーナーが京都競馬場の5万人ほどを盛り上げるシーンを見て、つくづく思った。

 実は、今年2月22日、フェブラリーステークスをコパノリッキーが勝ったあとの共同会見の前も、マスコミ関係者から「オーナーの会見はないのかな」という声が聞こえた。同馬のオーナーは、「Dr.コパ」こと小林祥晃氏である。

 小林オーナーや北島オーナーのような、メディアに頻出する、いわゆる有名人ではなくても、オーナーが会見に出てくれると、メディアとしても、ファンにより有益な情報を届けることができる。

 会見で必ず出る質問が、「次はどこを使う予定ですか」というものだ。訊かれた調教師は、多くの場合、「オーナーと相談してから決めます」とか「オーナー次第です」と言ってかわすのだが、そこにオーナーがいれば、その場で即決、ということになるかもしれない。オーナーも「調教師と相談してから」と答えた場合は仕方がないが、ともかく、ファンに伝えるべき情報(それも馬主という重要な人物から発せられる情報)が増えることは絶対にいいことだ。

 騎手や調教師のように、必ず応じる、ということではなく、了承してくれた場合は参加する、という形で充分だと思う。

 さて、話はがらっと変わるが、今、東京競馬場フジビュースタンドのイーストホールで、「Number創刊35周年×第35回ジャパンカップ特別企画展〜翔けよ、世界へ。日本競馬 最強への軌跡〜」というパネル展が開催されている。

 日本でずば抜けたクオリティとセールスを誇るスポーツ総合誌『Number』は、1990年代に毎年、春競馬特集、ダービー特集、秋競馬特集、有馬記念特集を組み、綿密な取材に基づいた記事と美しい写真とで、華やかな競馬ブームを彩ってきた。

 90年の秋競馬特集から寄稿してきた私は、物書きとして同誌に育ててもらった。

 例えば、本稿と同じ日にアップされている「NumberWeb」の原稿に、「イスラボニータ、ロゴタイプという新旧の皐月賞馬」と記したのだが、普通なら、先輩に敬意を評して「ロゴタイプ、イスラボニータという〜」と書きたくなるところだ。しかし、以前、同じようなパターンの記述でNumber編集部の校閲から「『新旧』となっているので、新しいほうの馬から先に記すべきでは」と指摘があってから、そう書くようになった。

 一事が万事。すべてにおいてそうした細かなところまでリファインしながらページをつくっている。

 先週は、急きょ帰省したため展示を見ることができなかった。

 週末、競馬場に行くのが楽しみである。

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作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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