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「人が入れ込みすぎないようにリラックスすることが大事」宮本調教師にインタビュー

  • 2015年11月17日(火) 18時00分
競馬の職人

宮本調教師と記念撮影



宮本調教師「厩舎みんなでいい馬を送り出せるように頑張っています」

 近代競馬の発祥の地の英国。世界中には英国の女王、エリザベス女王の名を冠したレースがいくつもある。強く美しき牝馬たちの秋の女王決定戦「エリザベス女王杯」牝馬3冠戦線を歩んできたお嬢様の戦いは、女子力の底力を見たような気がしました。マリアライトの抜け出しから最後の追い込みは牝馬とは思えない力強さを感じましたね。

 4歳の熟年期を迎えこれからの活躍が楽しみです。皆さんはどう見られましたか? 僕は、パドックを陣取ってじっくり見ていたのですが大外れでした。道悪も大きく影響したのかな。

 道悪と言えば土曜日に行われたデイリー杯2歳Sはもっとひどい道悪でしたが直線で早々にシュウジをとらえ、見事抜け出し馬なりで3馬身半差の完勝したエアスピネル号。

 豊騎手が今楽しみな2歳馬がいると言ってたとおりの勝利はさすがですね。「おめでとうございます」

 笹田先生も「もし勝ったら朝日杯やな」と話されていました。笹田先生ゆかりの血統でGIレースの有力馬になってきました。

 12月20日に行われる朝日杯フューチュリティSは有力馬がモリモリです。フューチュリティとは「未来」というそうですよ。国際競走にもなり来年のクラシック戦線の主役を狙う馬たちの誕生が楽しみです。名馬が誕生していますよね。

 11月7日に行われた京王杯2歳Sの勝ち馬ボールライトニングも強い競馬をしましたよね。早速宮本厩舎を訪ねようとスタンドを出ると宮本先生にばったり。

常石 京王杯おめでとうございます。あの馬強いですね。

宮本 久しぶりやけど元気にしてる? ありがとうございます。そうやろ強いね。器が違うって気がするわ。

常石 はい、ちょうど厩舎へお祝いの手紙をもっていこうと思っていたんです。取材もお願いします。

宮本 手紙書いてくれたのー。ちょっと先に読むわ! いつも手紙くれるね、ありがとう。今日は取材してくれるんですか? うれしいな。うちの奥さんつねちゃんファンやから喜ぶわ(笑)。何でも話しますよ。

常石 お祝いの手紙書いて厩舎訪問するのが楽しみなんです。

宮本 それは、いいことですよ。ありがとう。

常石 ボールライトニングを見ると2歳馬とは思えないくらい成長しているように見えますが調整は難しかったですか?

宮本 9月4日に入厩してきたんだけどわりとおとなしくてね。牧場ではかなりうるさい面もあるって聞いていたので気をつけていました。今でも念のためにメンコはつけています。まだ体が太かったので徐々に調整していきました。17日によその厩舎の馬と一緒だったんですがゲート試験を受けスムーズにクリアしてくれました。中々のセンスを持ってるなと思いました。

競馬の職人

飼い葉を黙々と食べるボールライトニング



常石 まずはゲート試験がクリアできるかが大きな課題ですからね。うるさいと聞いていたら慎重になりますよね。

宮本 立ち上がるかと心配していましたが、無事クリアしたので坂路調教を開始してデビューに向けて絞り込んでいきました。ゲート試験など、高倉騎手に乗ってもらったんですが、「いい乗り味です」と言ってもらえてうれしかったですね。この馬のいいところはまだ若いのに自分でONとOFFをはっきりさせるんですよね。古馬みたいやろー。

常石 デビュー戦も強い勝ち方をしましたよね。馬体がしっかりしている気がします。

宮本 デビューに向けて調整してきましたが見た目はちょっと太いかなと思うくらいでした。それでも走っているから(体型が)がっちりしているんでしょうね。併せ馬をしてからはガラッと変わり、時計も出るようになってきました。調子のいい時にデビューさせたいと思っていたので10月12日(月)京都の芝1400mに出走し、1馬身半の差をつけて勝ってくれました。

常石 気持ちのいい勝ち方でしたよね。浜中騎手は今絶好調でしょう。1番人気に応えてくれましたよね。

宮本 強い競馬でしたね。前に3頭ほど置き4番手からの競馬で直線に入るとサッと外へ持ち出し快勝してくれました。浜中騎手の手綱さばきもうまかったですね。

常石 京王杯2歳Sも強かったですね。これで2戦2勝、今後の予定は?

宮本 京王杯2歳Sも強い勝ち方をしてくれたので来年の春に向けてまずは朝日杯フューチュリティSに出走予定です。馬体は出来上がっているのでやりすぎるとスイッチが入ってしまうので山(坂路)1本で調整をしていきます。併せてプール調教もしています。馬房にいるときは結構うるさくしていますが、調教では落ち着いています。

常石 調教がスムーズにできその分しっかり覚えているんですね。かなり賢く能力の高い子ですね。乗役にとって一番うれしいです。能力のある馬って跨ると違いがわかるんですよね。「オー、ちょっと違うな」って感じでね。僕も跨って感触を楽しんでみたくなります。

宮本 ボールライトニングは厩舎に初めての重賞をプレゼントしてくれた「デグラーティア」の弟なんですよ。お姉さんは3戦3勝しているのでライトニングにも3戦3勝してほしいと思っています。その上でお姉さんが果たせなかったGIも勝ってくれるとよりいいですね。

 ノーザンファーム空港ではうるさいと評判の馬だったらしいですが、厩舎では落ち着いています。注文のつけようがない馬ですよ。馬格があってどっしりと構えて落ち着きも十分ありますね。デイリー杯2歳Sからも強いメンバーが朝日杯に出てくるので頑張ってほしいと思っています。

常石 ダイワメジャー産駒は強いですよね。この馬も風格があるのでダイワメジャー級の大物になってくれそうですね。楽しみです。

宮本 そうなってくれたらいいですね。

常石 同じ厩舎のノーブルマーズもデイリー杯2歳Sに使っていますよね。では朝日杯は2頭出しですね。(11月14日デイリー杯2歳S3着)

宮本 上手くいったらですよね。人が入れ込みすぎないようにリラックスすることが大事だと思うね。

常石 ファンにメッセージをお願いします。

宮本 厩舎みんなでいい馬を送り出せるように頑張っているので応援してください。

常石 ありがとうございました。朝日杯の時ウイナーズサークルで待っています。

宮本 行くからね(爆笑)。

☆彡続いて担当の長谷川助手にもライトニングの“いいね”を聞いてきました。
競馬の職人

長谷川助手と仲良く一緒にパチリ



常石 netkeiba.comの常石です。よろしくお願いします。

長谷川 こちらこそよろしくお願いします。いい馬を担当させてもらって嬉しいです。楽しみにしています。先生にも言われていますが人が入れ込みすぎないようにして馬と付き合っています。

常石 プールを利用しているそうですが効果はありますか?

長谷川 馬体が出来上がっているので調教は山(坂路)1本にしてプールでの運動をいれてストレスの解消につなげています。馬は本来、水や狭いところは苦手なのでそれにも慣れるとゲートもスムーズに入れるようになるし、心肺機能も強くなりますね。

常石 牧場ではかなりうるさかったと聞きましたが厩舎ではどうですか?

長谷川 馬房に入るといろいろやってますが調教に行くとONとOFFの切り替えができているので落ち着いてしっかり走っています。後ろ脚が立派で太目なんですよね。だから蹴りが強いんだと思います。競馬に行ったら粘り強く伸びてくれますからね。こんな強い馬を担当するのが初めてなのでワクワクしています。

 名前もいいんですよね。ボールライトニングって強いエネルギーの光の玉とか塊とかいう意味だそうです。名前通りの馬ですよ。レースでも体が沈み込んでからグワーンって力強く抜け出すパワーがすごいですよね。センス抜群ですから文句のつけようがないですよ。

常石 ライトニングにぞっこんですね。

長谷川 わかりますか? 骨格ががっちりし重量感がある。でも2歳馬なので馬房の中では砂遊びをしてるような仕草もある。飼い葉もしっかり食べ周りを気にしないので精神面でも落ち着いています。
競馬の職人

長谷川助手とボールライトニング



常石 担当するスタッフが馬を信頼するってとっても大切なことだと思います。馬がとっても落ち着くんですよね。

長谷川 調教の時、前に馬がいたら必死で追い越し追い越したらもう頑張ったからいいやろー、ってリラックスして走っています。人のできることはほんのわずかしかできないからこの馬の持ってる力を信じて邪魔をしないようにしたいと思います。

常石 最後にファンにメッセージをお願いします。

長谷川 こんな馬がGIに連れて行ってくれるんだろうなー、と感じさせてくれる馬です。人が入れ込まないようにレースに出せることを楽しんでいるので応援してください。

***

宮本調教師、長谷川助手ともにありがとうございました。宮本厩舎はとってもアットホームで「♪あったかいんだから〜」僕も一緒に楽しませてくださいね。橋口厩舎が最後に送り出す2歳の有力馬シュウジ、豊騎手のGI完全制覇がかかるエアスピネル、そして宮本厩舎のボールライトニングなど2歳王者から翌春のクラシック戦線につながる大事な1戦、朝日杯が楽しみです。

 競馬の最高峰、凱旋門賞が行われるフランスで悲劇が起こりました。悔しい思いでいっぱいです。合掌。つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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