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エアグルーヴ最後の産駒ショパン

  • 2015年11月25日(水) 12時00分
アカンパニスト(牝 美浦・佐藤吉勝 父ダノンシャンティ、母ピアニスト)
 初年度産駒からスマートオーディン(15年東京スポーツ杯2歳S-GIII)を出して注目を集めるダノンシャンティ。NHKマイルC(GI)をJRAレコード(1分31秒4)で制したスピードと瞬発力をしっかりと産駒に伝えている。スマートオーディンの場合、母方にSir Ivorが入り、これは父ダノンシャンティが3×3で持つHaloと相似な血なので、Halo≒Sir Ivor 4・4×4。本馬は母方にダンシングブレーヴが入り、その母の父DroneはやはりHaloと相似な血なので、Halo≒Drone 4・4×5。スマートオーディンと配合の骨格がよく似ている。半兄ピンポン(父ハーツクライ)はダートでオープンクラスまで出世しているものの、配合全体から受ける印象はパワー型ではないので、芝でもやれるだろう。

ショパン(牡 栗東・角居勝彦 父キングカメハメハ、母エアグルーヴ)
 母エアグルーヴは牝馬ながら年度代表馬に輝いた女傑で、繁殖牝馬としてもアドマイヤグルーヴ(父サンデーサイレンス/03、04年エリザベス女王杯-GI)、フォゲッタブル(父ダンスインザダーク/09年ステイヤーズS-GII、10年ダイヤモンドS-GIII)、ルーラーシップ(父キングカメハメハ/12年クイーンエリザベス2世C-香G1など重賞5勝)、グルヴェイグ(12年マーメイドS-GIII)など次々と活躍馬を送り出している。さらには孫の代からも二冠馬ドゥラメンテを出しており、その血の重要性は年を追うごとに高まっている。エアグルーヴ自身は13年4月、キングカメハメハの子を出産した際、内出血のため20歳で死亡した。本馬はルーラーシップの全弟で、ドゥラメンテの4分の3同血(父が同じで母同士が親子)にあたる。このファミリーはやや完成の遅いところが見られるが、ルーラーシップもドゥラメンテも3歳春時点ですでに一流だったので問題はないだろう。デビューが待ち遠しい。

ハットプレイ(牡 栗東・森田直行 父ハットトリック、母Soleil Lady)
 父ハットトリック(05年香港マイル-香G1、05年マイルCS-GI)は引退後アメリカへ渡って種牡馬となり、初年度産駒のDabirsimはジャンリュックラガルデール賞(仏G1)やモルニ賞(仏G1)を制し、カルティエ賞最優秀2歳牡馬、仏年度代表馬に選出された。Dabirsim以外にも、アメリカでKing Davidが、アルゼンチンでZapataとGiant KillingがG1を制しており、海外におけるサンデー系の最も活力あふれる系統となっている。日本に入ったハットトリック産駒は現在3頭が出走を果たしており、勝ち上がった馬は出ていない。本馬の3代母Fit to ScoutはジョンA.モリスH(米G1)など4つの重賞を制した活躍馬。母は「Forestry×Wild Again」とパワーが感じられるので、芝・ダート兼用のマイラーだろう。

ムーチャスエルテ(牡 栗東・藤原英昭 父ヴィクトワールピサ、母ラグジャリー)
 半兄ショウナンマイティ(父マンハッタンカフェ)の重賞タイトルは大阪杯(GII)のみだが、安田記念(GI)で2、3着、宝塚記念(GI)3着など、大舞台でも僅差の勝負に持ち込んでおり、その豪快な差し脚と相まって高い潜在能力を感じさせる馬。母ラグジャリーは「Storm Cat+Affirmed」という配合構成で、これはゴスホークケンの父Bernstein、アユサンの母バイザキャットと同じ。“サンデーサイレンス、Storm Cat、Affirmed”のトライアングルを持つ馬は意外なほど走っており、ショウナンマイティとアユサンのほか、アルキメデス、エンリル、アストロロジーなどがいる。ヴィクトワールピサ産駒はいまのところ、瞬発力で勝負するタイプはあまり見られず、持続力タイプが目に付き、ダートは上手い。半兄ショウナンマイティのような瞬発力が伝わっていればおもしろそうだ。芝向きの中距離タイプ。

ワンアームドシザー(牡 栗東・奥村豊 父ワークフォース、母テイラーバートン)
 母テイラーバートンはフェアリーS(GIII)とクイーンC(GIII)でいずれも3着となったマイラー。母の全兄にタスカータソルテ(重賞3勝)、半姉にジェミードレス(02年府中牝馬S-GIII・2着)、近親にネオヴァンドーム(10年きさらぎ賞-GIII)がいる。本馬の父ワークフォースは現役時代に英ダービー(G1)、凱旋門賞(仏G1)などを制した典型的な欧州芝2400m血統。現2歳世代が初年度産駒で、これまでに勝ち上がった10頭中4頭がNureyevクロスを持っている。本馬はこのパターン。3代母ジェヌインダイアモンドは手堅いスピードを伝える血なので、サンデーサイレンスが入らない配合でもやれそうだ。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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