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最終章で本当に強いレースを/ジャパンC

  • 2015年11月28日(土) 18時00分


引退を前に評価を一変させる

 引退を前にした秋後半のレースを、このジャパンカップと、年末の有馬記念の2戦にしたゴールドシップの快走に期待したい。ここまでの通算成績【13-3-2-8】。G1を6つも制しているチャンピオンホースには珍しく、馬券に絡まない敗戦が「8回」もある。それも本格化する前ではなく、最近になって気分をそこねて素直に走る回数が少なくなり、4歳以降は、6勝に対し、馬券に絡まなかった回数が7回もある。今回は追い切り時点まで、ウソのように穏やかな気配だと言われるが、当日、ゲート入り直後(先入れが課せられる)にどんな目つきになるか、これは本人にも分からない。

 そんな馬に期待するのは間違いか、というと、ゴールドシップの成績は前述のとおり、勝率50%。キャリアの浅い3歳馬を別にすると、底力No.1であると同時に、ラブリーデイなどのライバルを大きく上回っている。今年、勝率が5割近いとか、4割に達するようなA級の日本馬はいない。

 また、出遅れくらいならいいが、仮に立ち上がって手こずらせたりすると、発走調教再審査が課せられ、有馬記念出走は不可能になってしまう。まともにレースを終えて欲しい、という希望もある。

 もし互角のスタートを切るなら、9割方スローが見えているから、自分たちでレースの流れを作ることが可能になる。ゴールドシップ(横山典弘騎手)はもう、高速上がりのレースは歓迎ではなく、だから東京向きではないのであり、その死角が出ない力の勝負に持ち込める。ゴールドシップは追い込み届かずの敗戦はいくつもあるが、直線に向いて先頭に立ちながら差されたことは一度もない。

 父ステイゴールドは、50戦7勝。オープン馬にしては少ない7勝なのに、7歳時に7戦3勝。とうとうG1を制したタフな馬だった。最後のレースを劇的に勝っている。

 母の父メジロマックイーンも負けず劣らずタフだった。3200mの天皇賞・春を2回も勝ち、3000mの菊花賞も制したが、「スピードがない」などとされ、そんなことはないと反発したメジロマックイーン(武豊騎手)は、結果として引退レースになった京都大賞典2400mを2分22秒7。当時とすれば破格のコースレコードで圧勝している。

 ゴールドシップがどちらに似た部分が多いかはともかく、父母両系から、本当に強いレースをみせてくれるのは最終章になったいまではないか、そんな期待もしてみたい。不得手ではないかとされた東京で、初めて逃げ切りを決めて、快勝するとか……。

 再三凡走するゴールドシップは、「あのムラな野郎は好きになれない」というファンも少し作ってしまったが、引退を前に、なんと愛すべき男だったのか。評価を一変させ、「メジロゴールド、ステイマックイーン」となって種牡馬になりたい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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