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ハッピースプリント快勝でひと安心/浦和記念

  • 2015年12月03日(木) 18時00分
ハッピースプリント

(撮影:武田 明彦)



「勝たなければならないレース」を勝利

 ハッピースプリント陣営にとっては難しい判断だったに違いない。今年のかなり早い時期から目標としていたチャンピオンズCへ行くべきか、浦和記念にするべきか。チャンピオンズCは、補欠1番のアウォーディーの動向もはっきりせず、補欠2番のハッピースプリントにとっては繰り上がれるのかどうかということもあった。アウォーディーは浦和記念への出走を決め、11月26日(木)には中央枠4頭が確定した。一方のハッピースプリント陣営はアウォーディーについての情報をどこまで把握していたかはわからないが、森下調教師によると、中央馬がチャンピオンズCへ向けての1週前追い切りを行う、同じ26日(木)に浦和記念への出走を決断したとのこと。

 しかしその後、報道によると、アウォーディーはフレグモーネを発症して回避。浦和記念に出走する中央馬は3頭となり、ますますハッピースプリントにとっては勝たなければならないレースになった。最終的に単勝1番人気は、中央勢で唯一重賞勝ちのないドコフクカゼで2.6倍。ハッピースプリントは2.8倍と僅差だったが、連勝系のオッズを見ても、やはりドコフクカゼのほうが人気の中心だった。少し前までならおそらくハッピースプリントのほうが人気になっていたと思われるが、地方競馬IPATでの発売が始まってからは中央競馬ファン(という言い方が正しいかどうかはわからないが)の馬券への参加が増え、中央勢に人気が偏る傾向にある。しかし勝ったのはハッピースプリントで、さすがにこのメンバーならという強いレースを見せた。

 予想通りのサイモンロードとリアライズリンクスの逃げ争いは、リアライズリンクスの左海誠二騎手が主張し、サイモンロードが引く形で決着。2頭のうしろではサミットストーンとハッピースプリントも行く気を見せ、サミットストーンはリアライズリンクスに並びかけて行くような勢いで進出、ハッピースプリントも3番手に続いた。

 その後リアライズリンクスが徐々に後続との差を広げ、2周目向正面に入ると、2番手のサミットストーンとの差は6〜7馬身ほどにまで広がった。600m通過36秒5、1000m通過61秒5(良馬場)は、例年の浦和記念との比較からはやや速いペース。そして向正面での差からリアライズリンクスより1秒ちょっと遅れていたと思われるサミットストーンが、おそらく平均的な流れ。つまりサミットストーンにとっては実質、マイペースの単騎逃げに持ち込めたのと同じ。そこから3馬身ほど離れた3番手のハッピースプリントは、さらに楽なペースでレースを進めることができた。

 その結果、リアライズリンクスが失速した3コーナー過ぎからは2頭の一騎打ちとなった。直線半ばでサミットストーンを交わしたハッピースプリントが2馬身差をつけて勝利。そのうしろの中央勢は差を詰めることができず、中央最先着は、地方で堅実に走るソリタリーキング。1番人気のドコフクカゼは4着だった。ドコフクカゼは、準オープン以降の4勝がすべて東京2100m戦だったが、同じ左回りでも小回りコースは勝手が違うようだった。まずスタートでやや出負けし、外に持ち出すとコーナーはずっと外々を回ることになった。2周目向正面から進出を試みたが、勝負どころの3〜4コーナーでまくっていくことができず。さすがに最後の直線ではいい伸びを見せ、上り3Fは勝ったハッピースプリントと同じ37秒3を記録したが、時すでに遅し、だった。

 ハッピースプリントの勝利には、陣営のみならず、地方競馬関係者の多くがほっとしたことだろう。中央のトップクラスが激突するチャンピオンズCよりも、先々のことを考えれば、むしろここを使って正解だったのではないか。予想でも触れたが、今年ここまでに地方馬でダートグレードを勝っているのは、3歳以上ではユーロビートただ1頭。中央との交流が盛んになって以降、NARグランプリの年度代表馬には、少なくともGII(GII級、JpnIIも含む)以上のタイトルがあった。今年ここまで、2歳馬も含め地方馬にはJpnIIIのタイトルしかなく、そういう意味でハッピースプリントは、年度代表馬に選ばれる最低限の資格を得たといえる。

 昨年の覇者サミットストーンは6番人気ながら2着。復帰後の2戦は今ひとつのレース内容で、前走JBCクラシックでも5着ハッピースプリントから1秒1も離されての7着だった。とはいえそのJBCクラシックでは、スタート後に先頭に立とうかという行く気を見せての3番手追走は、今思えば復調気配と見るべきだった。今回、スタート後リアライズリンクスに並びかけて行こうかという勢いは、JBC以上のものを感じさせた。

 2歳戦は別にして、今年苦戦を強いられてきた地方勢だが、JpnIIとはいえようやくここに来て、一昨年、昨年の年度代表が揃い踏みとなった。東京大賞典では、このあとのチャンピオンズCに出走する中央のトップクラスとの対戦になるのだろうが、年末の大一番に向けて期待が持てる浦和記念だった。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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