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世界の競馬関係者とファンの目が集まる香港ウィーク

  • 2015年12月09日(水) 12時00分


「香港国際競走」4競走の総賞金はおよそ13億4700万円とリッチなイベント

 日本が国際競走のセンターステージとなった2週間が終わり、今週は世界の競馬関係者とファンの目が、香港に集まっている。

 具体的には、9日(水曜日)にハッピーヴァレイで、日本から戸崎圭太騎手が参戦するインターナショナル・ジョッキーズ・チャンピオンシップがあり、11日(金曜日)には香港国際競走へ向けた公式晩餐会があり、13日(日曜日)にシャティンで行われる香港国際競走で香港ウィークのクライマックスを迎える。

 11日に香港島北部のワンチャイにあるコンベンション&エキジビション・センターで行われる公式晩餐会での場で、正式発表されるのが、国際競馬統括機関のIFHAが主催し、時計メーカーのロンジンが後援する「ワールド・ベスト・ジョッキー」である。

 日本を含む世界12か国を舞台とした主要G1・100競走に、1着12点・2着6点・3着4点というポイントシステムを設け、1年間(14年12月1日から15年11月30日まで)の通算ポイントで競う「ワールド・ベスト・ジョッキー」。今年の受賞者は、イギリスを拠点に騎乗するイタリア人騎手のフランキー・デトーリ(44歳)と決定している。

 G1勝利の数では、アメリカンフェイロー(牡3)で制した3冠を含めて6勝した北米のヴィクター・エスピノーザが、ゴールデンホーン(牡3)で制した英ダービーや凱旋門賞を含めて5勝のデトーリを上回ったが、2着4回、3着4回と多くの入着を重ねて通算ポイントを100まで積み上げたデトーリが、90ポイントのエスピノーザと、同じく90ポイントを獲得したライアン・ムーアを上回ることになったものだ。

 ちなみに日本を拠点とした騎手では、ドゥラメンテで2冠を制した他、2つのレースで入着を果たして34ポイントを獲得したミルコ・デムーロが、ランキングの12位に入っている。

 そして、13日にシャティンで開催されるのが「香港国際競走」である。4競走のうち、総賞金2500万香港ドルのカップ、2300万香港ドルのマイル、1850万香港ドルのスプリントは、それぞれ、芝2000m戦、芝1600m戦、芝1200m戦としては世界最高賞金レースとなっており、4競走を合わせた総賞金が8300万香港ドル、日本円にしておよそ13億4700万円という、リッチなイベントとなっている。

 今年の日本勢は、スプリントに3頭。マイルに3頭、カップに4頭、合計で10頭という、過去最大のデレゲーションで挑む予定だ。

 その、スプリント、マイル、カップについては様々なメディアが展望記事を掲載しているので、日本の競馬ファンの皆様にも充分に情報が行き渡っていると思うが、日本馬不在の香港ヴァーズは、芝2400mという大変重要な距離のG1にも関わらず、半ば無視された格好になっているので、ここでしっかりと展望しておきたいと思う。

香港ヴァーズで抜けた1番人気に推されているフリントシャー

 ブックメーカー各社の前売りで、各社が揃って抜けた1番人気に推しているのが、フランスから遠征しているフリントシャー(牡5、父ダンシリ)である。

 ハープスター、ジャスタウェイ、ゴールドシップの3頭が参戦した14年のG1凱旋門賞で2着となり、カレンミロティックが参戦した14年のG1香港ヴァーズを快勝し、今年3月にはワンアンドオンリーやハープスターに先着してG1ドバイシーマクラシックで2着になっている馬だから、日本の競馬ファンにもお馴染みのことと思う。つまりは、このレースのディフェンディングチャンピオンで、なおかつ、3歳時にはG1パリ大賞を、今年8月には北米に遠征してG1スウォードダンサーSを制しており、前走のG1凱旋門賞でも前年に続いて2着に入っているフリントシャーは、今年の香港ヴァーズ出走馬の中で1頭ずば抜けた実績を残している「格上」と言えよう。ブックメーカーの人気が被るのも、致し方のないところである。

 実はこの馬、ジャパンC参戦が有力視された時期があり、ことに馬主サイドは日本遠征に前向きだったのだが、管理するアンドレ・ファーブル調教師が日本行きに難色を示し、結局は昨年同様に香港へ向かうことになった。ジャパンCに出走していてもおそらくは好走したであろうが、対戦相手は明らかに香港ヴァーズの方が楽で、こちらに廻ったのは賢明な判断だったと言えそうである。

 逆に混戦となっている2番手グループの中で、頭1つだけ抜けた存在となっているのが、イギリスから遠征しているキャンノックチェイス(牡4、父レモンドロップキッド)だ。デビュー2戦目から3連勝でロイヤルアスコットのG3ターセンテナリーS(芝10F)を制し、重賞初制覇を果たした同馬。その後は小さな故障が続き、3歳シーズンの残りを全休。今季4戦目となったニューマーケットのLRゴドルフィンS(芝12F)で1年3か月振りの勝ち星を挙げると、前走はカナダに遠征してG1カナディアン国際(芝12F)を制し、G1初制覇を果たしている。

 大手ブックメーカーのコーラルやラドブロークスがキャンノックチェイスと横並びの2番人気に推しているのが、アイルランド調教馬のハイランドリール(牡3、父ガリレオ)だ。G1仏ダービー(芝2100m)2着馬で、夏には北米に遠征してG1セクレタリアトS(芝10F)を制覇。G1愛チャンピオンS(芝10F)でゴールデンホーンの5着に敗れた後、前走は豪州に遠征しG1コックスプレート(芝2040m)で3着に入っている。

 これに続くのが、フランス調教馬で、前走G2コンセイユドパリ賞(芝2400m)で重賞初制覇を果たしたミングダイナスティー(牡3、父キングズベスト)。同じくフランス調教馬で、7月にメゾンラフィットのG2ユージンアダム賞(芝2000m)を制し、前走ドーヴィルのG2ギュームドルナーノ賞(芝2000m)がニューベイの2着だったダリヤン(牡3、父シャマーダル)となっている。

 日本馬不在の香港ヴァーズだが、例えば来年のドバイシーマクラシックや凱旋門賞に日本馬が出走した場合、相手となりうる顔触れが出走しているだけに、日本の皆様にもぜひご注目いただきたいと思う。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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