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BTC育成調教技術者養成研修OB会

  • 2015年12月09日(水) 18時00分
BTC・OB会集合写真

BTC・OB会集合写真


悩む若者に救済の手を差し伸べることを目的として組織化されたOB会

 去る12月2日(水)、浦河にある優駿ビレッジアエルにて、BTC育成調教技術者養成研修の修了生で作るOB会が開催された。この会は昨年夏に発足し、年に二度の懇親会を通じて会員同士が親交を深めてきた。

 育成調教技術者養成研修制度は平成5年よりスタートし、当初は半年、その後1年間に研修期間が延長され、即戦力として生産地で求められている騎乗技術者を養成するために20年余にわたり続いてきた。現在、受講しているのは今春入所の第33期生17名である。

 今回のOB会は、これら33期生の現役研修生も一緒に参加し、総勢60数名の大人数による宴会となった。会に先立ち、発足当時より会長を務めてきた笹島智則さんが勇退し、新たに山崎考司さん(山崎ステーブル=浦河)が新会長に就任した。

 会場は優駿ビレッジアエル内のバーベキュー棟。これだけの大人数を収容できる会場が限られてくることと、BTC研修所及び周辺の育成牧場(OBが多い)から至近距離のアエルが会場に選ばれたのである。

 午後6時にOB会が始まった。座席は予め、現役とOBが親交を深めやすいように配慮されており、受付を済ませたところで「指定」される。できるだけ見知らぬ同士が隣り合う席に座るようにと考えられている。

 今回は、去る10月にBTCの事務所機能を東京から全面的にここ浦河へ移転したこともあり、大平俊明BTC理事長以下、役員もかけつけ、また地元浦河町から、池田拓町長も参加しての賑やかな宴会となった。

 メニューは「焼肉食べ放題」である。若い人々の食欲はかなり旺盛だ。鉄板を囲みながら飲み食いすると、自然に会話も弾んでくる。

 このOB会を結成した目的は、育成調教技術者養成研修から育った騎乗者たちの親睦を図ることが第一だが、それとともに、できるだけ縦横のネットワークを構築し、お互いに密に連絡を取り合える環境にすること、そして、できることならば、そのネットワークをフルに生かし、可能な限り、OBをこの業界から流出させないようにしたいとの思惑がある。

BTC研修生OB会風景

BTC研修生OB会の風景



 研修を終えてどこかの民間育成牧場に就職しながらも、途中で挫折してしまい、いつの間にか馬の世界からリタイアしてしまうOBが一定数いることが従来より問題視されてきた。牧場を替わるだけならまだしも、さまざまな理由により、馬の世界そのものから退出してしまう人が少なからずいるのは、何より業界にとっても大きな損失であり、それをできるだけ防ぎたいというのがOB会のもうひとつの大きな目標でもある。

 せっかく技術を身につけ、育成の世界に飛び出していながら、途中でリタイアしてしまうのは何とも勿体ない。そこで、悩む若者に救済の手を差し伸べることができたら、あるいはまた気持ちを切り替えてもう少しこの業界に踏みとどまり、頑張れるかも知れない。こうした事情から、組織化されたのがOB会だ。

 私の座ったテーブルの向いに33期生の現役研修生がいた。小竹将貴君、23歳である。札幌市出身。大学を卒業してこの研修に入ってきた。33期生では唯一の北海道出身者だ。

小竹将貴君

大学を卒業してこの研修に入ってきた小竹将貴君



 小竹君が競馬と出会ったのは中学生の頃。「ディープインパクトが最初に好きになった馬です」という。その後、高校、大学と進んでも、心の片隅には必ず馬の世界への憧憬があったようだ。それで大学時代に一念発起し、札幌市の南隣の北広島市にある乗馬クラブに「働かせて下さい」と頼み込み、無給で厩舎作業などをしながら時々乗せてもらうという約束で2年間ほど通ったという。片道2時間の道のりを自転車で週に2日〜3日通い、「駈歩まではできるようになった」のだとか。

 大学時代の専攻は英米文学。将来は得意の英語を生かして、海外で働くのが夢だという。さすがにかつての競馬ブームに沸いた頃とは比較にならないとは思うが、若者の中には競馬に魅力を感じて馬の世界で働いてみたいと考えている人が必ずいる。思い切ってチャレンジするのは若い時代でなければできないことで、彼の英断に拍手を送りたい。来春の修了式までまだ4ヶ月残っており、またどこかで研修のことを取りあげる機会も出てくるだろう。小竹君の「その後」にもしばらく注視していきたいと思う。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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