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障害シーズン前半戦の大きな山場となるクリスマス明けの英国開催

  • 2015年12月23日(水) 12時00分


中でも最も大きな注目を集めるのがG1キングジョージ6世チェイスだ

 1年を通じて毎日のように競馬開催がある英国だが、クリスマスだけは例外だ。23日、24日、25日の3日間は開催が全くなく、競馬関係者もファンも静かに聖なる時を過ごす。

 その代わりと言っては何だが、クリスマス明けは開催ラッシュで、ボクシングデイと呼ばれる26日の祝日には、英国内だけでも8競馬場で開催があり、3場で開催のある隣国・愛国を含めると、なんと11もの競馬場で開催が組まれている。更に翌27日は英愛合わせて6場、28日が5場、29日が7場と、開催ラッシュが続く。

 開催があるだけでなくプログラムも豪華で、26日のケンプトン競馬場でG1競走が3つ行われるのを筆頭に、26日から29日までの4日間で英愛合わせて12ものG1競走が組まれ、障害シーズン前半戦の大きな山場となっている。

 中でも最も大きな注目を集めるのが、26日にケンプトンで行われる、スティープルチェイス3マイル路線の大一番、G1キングジョージ6世チェイス(芝24F、障害数18)だ。

 第1回競走の施行は1937年の2月。この年の5月に国王となったジョージ6世の戴冠を記念しての創設だった。現在の同競走はスティープルチェイス3マイル路線において、チェルトナムゴールドCに次ぐ存在となっており、デザートオーキッドが4度、コートスターが5度制するなど、過去の勝ち馬には歴代の名馬の名がずらりと並んでいる。つまりは、平地のキングジョージに匹敵するか、あるいはそれ以上のレースが、障害のキングジョージなのである。

 今年の同競走は、「三つ巴」というのが下馬評だ。そんな中、ブックメーカー各社が3.0〜3.5倍のオッズを掲げて横並びの1番人気に推しているのがドンコサック(セン8、父ショロコフ)である。

 独国産馬で、4歳5月に愛国のエドワード・ヘイルス厩舎からデビュー。パンチェスタウンのナショナルハントフラットで5着となった後、マイケル・オラーリー氏のギギンズタウン・スタッドが購買し、同時にゴードン・エリオット厩舎に転厩して今日に至っている。

 緒戦を含めてナショナルハントフラットを4戦、ハードルを4戦した後、13/14年シーズンからスティープルチェイス路線を歩み、ここまで16戦10勝の成績を残している。転入初年度に、フェアリーハウスのG1ドリンモナノーヴィスチェイス(芝20F)に優勝。しかし本格化したのは14/15年で、このシーズンは7戦して6勝。パンチェスタウンのG1ジョンダーカンメモリアルチェイス(芝20F)、エイントリーのG1メリングチェイス(芝19F200y)、そしてG1パンチェスタウンゴールドC(芝25F)と3つのG1を制覇。チェルトナムフェスティヴァルのG1ライアンエアチェイス(芝21F)で3着となったのが、このシーズン唯一の敗戦だった。

 今季初戦となったパンチェスタウンのG3アイリッシュデイリースターチェイス(芝23F)を12馬身差で、続くダウンロイヤルのG1チャンピオンチェイス(芝24F)を8馬身差で制し、好調を維持したままG1キングジョージ6世チェイスに臨んでくる。

 これに続く2番人気が、各社3.5〜4.0倍のオッズを掲げるヴォートゥール(セン6、父ロバンデシャン)だ。

 仏国産馬で、祖国でハードルを2戦した後、愛国在住の米国人馬主リッチ・リッシ氏が購入し(登録は夫人名義)、愛国の名門ウィリアム・マリンズ厩舎に転厩したヴォートゥール。13/14年シーズンもハードルを走り、5戦5勝のパーフェクトな戦績を残した。それも、チェルトナムのG1シュプリームノーヴィスハードル(芝16F87y)をはじめとして3つのG1を制するという、内容的にも極上の成績を挙げた後、昨シーズンからスティープルチェイスに転入。このシーズンは4戦し、チェルトナムフェスティヴァルのG1ゴールデンミラーノーヴィスチェイス(芝19F198y)を15馬身差で圧勝したのを含めて3勝を挙げ、この路線のトップホースの仲間入りを果たした。

 こうして迎えた今季の緒戦となったのが、11月21日にアスコットで行われたG2ザ1965チェイス(芝21F8y)で、ラチにもたれる場面があったり、11号障害で拙い飛越と見せたりと、”らしからぬ”面を散見させながらも勝利を収めて、キングジョージ6世チェイスに向かうことになった。

 ブックメーカー各社が4〜4.5倍のオッズを掲げて3番手評価としているのが、キューカード(セン9、父キングズシアター)だ。

 ナショナルハントフラットを2戦、ハードルを5戦した後、11/12年シーズンからスティープルチェイスを走っているキューカード。2シーズン目の12/13年シーズンにG1アスコットチェイス(芝21F8y)、チェルトナムフェスティヴァルのG1ライアンエアチェイス(芝21F)を制して、この路線の最前線に躍り出た。翌13/14年シーズンは、ヘイドックのG1ランカシャーチェイス(芝24F24y)を制した後、G1キングジョージ6世チェイスがシルヴィニアーココンティの2着。その後、G1チェルトナムゴールドCへ向けての調教中に骨盤の圧迫骨折を発症し、休養に入ることになった。

 14年11月に復帰したものの、14/15年シーズンは4戦して未勝利に終わり、キューカードの時代は終わったとの声もあがったが、今季はここまで2戦2勝。前走ヘイドックのG1ランカシャーチェイスでは同世代の好敵手シルヴィニアーココンティに7馬身差をつける完勝で、完全復活をアピールしている。

 オッズを御覧になってお分かりのように、3頭の人気にはほとんど差がなく、多くのファンが当該週に入った今も、頭を悩ませているのが実情だ。

 日本の競馬界は今週、2015年の最終決戦・有馬記念に向けて大きな盛り上がりを見せているが、G1キングジョージ6世チェイスをはじめとした欧州の障害戦にも、ほんの少しだけ、箸休めのような思いで、ご注目をいただければ幸いである。

【更新スケジュールのお知らせ】
いつも当コラムをご愛読いただきありがとうございます。年内の更新は今回が最後となり、年明けの初回は1/13(水)になります。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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