スマートフォン版へ

第44回ばんえいダービー

  • 2015年12月23日(水) 18時00分
センゴクエース

第44回ばんえいダービーを制したセンゴクエース


センゴクエースは親子二代にわたるダービー馬

 先週20日(日)、“日本一遅いダービー”の「ばんえいダービー」が行われた。

 今年は数えて44回目を迎える。帯広地方は先月下旬に異例の大雪となり、帯広空港では65センチもの積雪を記録して、11月としては68年ぶりの豪雪になったというニュースが流れた。久々に十勝地方に出かけてみたが、その後、暖冬傾向が続いているせいか、国道や高速道路は完全に雪が溶けて路面が露出しており、通行に支障はない。だが、帯広市内は、未だに路肩に積み上げられた雪山が残っていて、左端の車線が半分近くまで埋もれているところがある。

 この日は、割に暖かく、日が暮れてからもそれほど気温が低下せずに済み、助かった。ダービーは第10レース。発走時間は午後7時5分となっている。以前ならばとっくにナイター開催から日中開催へ切り替わっている季節だが、帯広競馬場は中央競馬の場外発売も実施しており、夕方になり中央競馬のレースが終了してからばんえい競馬を観戦して馬券を購入してもらうために、発走時間は、ナイター開催に近い。第1レースは2時15分。最終11レースは7時40分に設定されている。

 日曜日の夜とあって、ダービーだというのに、華やいだ雰囲気はない。いつもの通常開催と変わらない風景で、淡々とレースが消化されて行く感じだ。

 場内のファンの姿もそれほど多くなく、スタンドもレースの合間はほぼ人影が消える。帯広の冬は、気候が一段と厳しくなることから、多くの人々は、ファンファーレが鳴り響いても場内から出て来ずに、スタンド内で観戦する。埒沿いまで降りて、馬とともに歩きながら声援を送るのは一部の熱心なファンと観光客などで、常連は暖かい場所に陣取ったまま動かずにいる。

 日の短いこの時期、北海道は日没が早く、午後4時にはかなり暗くなってくる。4時半にもなるとほぼ真っ暗で、これ以降は実質的にナイター競馬となる。

ばんえいダービー

ばんえいダービーのパドック



 ダービーには、3歳の一線級10頭がエントリーしてきた。人気はセンゴクエースが断然で、キンメダルがそれに続く。センゴクエースは11月1日のばんえい菊花賞を制しており、前走の知床賞で古馬オイドンに敗れたものの、ここでは実力が抜けているとの評価だ。ここまで16戦11勝。ばんえい競馬の場合、3歳のこの時期にもなればどの馬もかなりの出走回数を経てきているのが普通だ。例えば1番タキニシサンデーは44戦、2番バウンティハンターが48戦、3番コウシュハスパークは56戦というようなキャリアになっている。その中にあってセンゴクエースの16戦というのはかなり少なく、実力馬だけに大事に使われてきたということなのかも知れない。

 レースは、センゴクエースが前評判通りの圧倒的な実力を発揮した。手綱を取った鈴木恵介騎手は「第2障害に上ったところで勝利を確信した」というほど、余裕の脚色で坂を下りると、見る見る間に他馬を引き離し、難なく先頭でゴールインであった。

 2着は2番人気のキンメダル、3着にコウリキと入り、単勝150円、枠連と馬連ともに160円、三連単でも670円という配当であった。

 優勝したセンゴクエースは父ウンカイ、母サダエリコという血統の3歳牡馬。馬主は千石貞子氏。管理調教師は槻舘重人師。鈴木恵介騎手がデビュー以来手綱を取り、これで通算成績は17戦12勝となった。生産は網走管内滝上町の芝桜高橋牧場。

鈴木恵介騎手

センゴクエースの手綱をデビュー以来を取っている鈴木恵介騎手



 なお、センゴクエースの母サダエリコは、138戦34勝の成績を残して引退した名牝で、ファンの多かった馬である。ばんえいオークス、ばんえいダービー、ばんえい菊花賞など数々の重賞を制しており、これでセンゴクエースは親子二代にわたるダービー馬となった。

ばんえいダービー

ばんえいダービーの口取り



 先ごろ、ばんえい競馬は、一部の騎手と厩務員が、ばんえいを含む地方競馬の馬券を購入していたことが明らかになったばかりだ。詳細については未だ分からないことが多いのだが、ネットを中心に少しずつ売り上げが伸びてきていただけに何とも残念でならない。

 報道によれば、本人名義でネット投票の口座を申し込んでいたとも言われており、それが本当ならば、あまりにも脇が甘すぎたと言わざるを得ない。

 ただその後も、開催は通常通り継続しており、少なくとも今のところ入場人員や売り上げにその影響は見られない。これ以上、マイナスイメージにつながるような事態にならぬことを願うのみである。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング