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成長著しいサウンドトゥルーが展開も味方にGI初制覇/東京大賞典・大井

  • 2015年12月30日(水) 18時00分


サウンドトゥルー

(撮影:高橋正和)

活躍の舞台は今後も中央より地方で

 今年の大井2000mで争われた古馬(3歳以上)GI/JpnIの3戦は、当然のことながら有力馬は同じようなメンバーで争われたのだが、それぞれにペースや展開が違って興味深いものだった。

 クリノスターオーが逃げて掛かり気味にクリソライトが2番手を追走した帝王賞は、前半1000m通過が59秒9というハイペース。以前にどこかで書いたかもしれないが、かつてスマートファルコンはこの大井2000m戦でたびたび60秒を切るペースで逃げていたが、そのスマートファルコンが引退して以降で60秒を切ったのは初めてのことだった。直線先頭に立ったクリソライトを、道中は5番手からレースを進めたホッコータルマエがゴール前でとらえたというレース。このとき、ホッコータルマエに3/4馬身差で食い下がったクリソライトを評価したが、今回の東京大賞典の結果を見ると、逆にクリソライトに3/4馬身しか差をつけられなかったホッコータルマエは昨年の全盛時の力にはないとするべきだった。

 そしてコパノリッキーが単騎逃げとなったJBCクラシックは、一転して1000m通過が62秒7という楽なペース。4コーナーを向くまでコパノリッキーは楽な手ごたえで、そのまま後続を寄せ付けなかった。早めにとらえにかかったホッコータルマエは伸びず、それを直線でとらえて2着に入ったサウンドトゥルーの底力はやはり本物だった。

 今回はJBCのようにコパノリッキーが楽に逃げさせてもらえるとは思えず、もし仮にそうなれば他の有力馬の騎手は批判の対象となっただろう。コパノリッキーにからんでいくのは、個人的にはホッコータルマエかサミットストーンのどちらかと想像していたのだが、果たして、突いて行ったのはホッコータルマエだった。ホッコータルマエの秋2戦は3、5着。微妙な表現になるが、今年前半の2勝はともにJpnI。今年GIはまだ勝っていない。GI/JpnI・10勝目の記録もかかるし、ここを勝てば今年も疑いようのないダートのチャンピオンとして評価される。コパノリッキーを楽に逃がすわけにはいかず、勝負に行くのは当然のことだった。

 前半のラップは、12.6 - 11.9 - 12.2 - 12.5 - 12.1で、1000m通過は61秒3。メンバーを考えれば必ずしもハイペースではないが、2F目からは12秒台の後半に落ちることがなく、息が入らない、数字以上に厳しいペースだったようだ。「マークがキツかった」と武豊騎手。「(コパノ)リッキーに自分の競馬をさせない形に持ち込んで、それでペースが速くなったかも」と幸英明騎手。それでサウンドトゥルーの末脚が生きる展開になった。

 レース中間地点でサウンドトゥルーは前から10馬身ほども離れた中団を追走。直線を向いたあたりでもまだ先頭から5〜6馬身ほども離れていたが、先頭で粘っていたホッコータルマエを、馬場の三分どころから伸びて差し切った。後半のラップタイムは、11.9 - 12.0 - 12.6 - 12.3 - 12.9で、勝ちタイムは2分3秒0。レースの上り3Fが37秒8のところ、サウンドトゥルーは36秒7で上ってきた。ちなみに2着だったJBCクラシックでもサウンドトゥルーの上り3Fは36秒7と、ぴったり同じだった。ただ今回のペースでも追走に苦労するところがあったという。この1年で成長、充実したことは間違いないが、今後も展開次第という面はありそうだ。中央のダート重賞では2000mのシリウスS、1900mの平安Sがあるが、多くは1800m以下で、道中で息の入る流れになることはほとんどない。チャンピオンズCでも、結果的に惜しい3着だったが、道中はかなり追走に苦労していた。一方、地方のダートグレードではマイル戦あたりでも息の入る流れになることもあり、サウンドトゥルーの活躍の舞台は今後も中央より地方でということになりそうだ。

 そして2着のホッコータルマエから離されたとはいえ、直線失速したコパノリッキーをとらえて3着に入ったのが9歳のワンダーアキュート。もともと馬体重の変動が大きい馬で、今回マイナス13kgの509kgはまったく問題のない範囲。さすがに9歳になってパドックでは落ち着くようになったが、騎手が騎乗したらかなり気合が入っていた。積極的にホッコータルマエの直後を追走しての3着は健闘といっていいだろう。これがラストラン。種牡馬としてアロースタッドに繋養されるとのこと。

 地方期待のハッピースプリントは6着。強気の3番手、ワンダーアキュートと並走するような位置を進んだが、直線失速し、勝ち馬から1秒9離された。2歳時に全日本2歳優駿を制して地方の年度代表馬になって以降、陣営が目指してきたのはGI/JpnIで中央馬に勝つこと。それゆえ今年は前走の浦和記念以外、GI/JpnIのみを使われてきた。今回も勝ちに行く競馬は当然のこと。もう一段下げた位置取りから着を狙う競馬をしていれば3着争いにからむ程度の競馬はできただろうが、それはこの馬の目指すところではない。かしわ記念では4コーナーで外に膨れてしまう場面があって惜しい3着だったように、JpnIでもメンバーに恵まれれば勝てるチャンスはありそうだが、トップクラスが集結するレースとなると、もう一段階のパワーアップが必要のようだ。

 さて、今回の東京大賞典は好天にも恵まれ、入場人員34,076人は、昨年(24,125人)から41.2%ものアップ。今年のJBC当日(34,153人)ともほぼ同じほどの入場があった。

 東京大賞典1レースの売上げ27億4963万900円は、2年前の東京大賞典の記録(26億824万5900円)を上回り、地方競馬の1レースあたりの売上げレコード。さらに1日の総売得額48億5144万4950円(SPAT4LOTO含む)も、今年のJBC当日(48億4980万5050円)をわずかにではあるものの上回ってのレコードとなったのにはちょっと驚いた。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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