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古馬も活躍した北海道

  • 2016年01月15日(金) 18時00分


◆評価に値する2頭の受賞

 12日にNARグランプリ2015の表彰馬・表彰者が発表された。年度代表馬は、やはり昨年地方馬として唯一JpnII(浦和記念)を制したハッピースプリントで、2歳時に続いて2度目の受賞となった。

 選考が難しかったと思われるのが3歳最優秀牡馬。東京ダービーを勝ってJpnIのジャパンダートダービーで3着だったラッキープリンスが選ばれたが、羽田盃と地方全国交流のダービーグランプリを勝ったストゥディウムとでは、甲乙つけがたかったのではないか。お互いに勝ったり負けたりで、両馬ともに成績が安定していたわけではなく、惨敗というレースもあった。

 そうした中でこれまでと傾向が変わったと思ったのが、4歳以上最優秀牝馬に選ばれたサンバビーンと、最優秀短距離馬を受賞したポアゾンブラック。ともに北海道・田中淳司厩舎の所属だ。

 かつて競馬場や地区ごとに独立して行われていた地方競馬だが、交流が進むにしたがって、馬産地・ホッカイドウ競馬はレース体系的に2歳馬が中心になった。以降、NARグランプリの2歳馬部門では北海道からたびたび最優秀馬が選出されているが、馬齢別に優秀馬が選出されるようになった1994年以降、3歳および4歳以上の部門では北海道所属馬が選ばれたことがなかった。

 2歳部門以外にも、最優秀ターフ馬には北海道所属馬が多数選ばれているが、2005年のモエレジーニアス以外、コスモバルク(3回受賞)、イグゼキュティヴ、プレイアンドリアル(2回受賞)は、いずれもビッグレッドグループの岡田繁幸さんの、地方に在籍したまま中央の大レースを勝ちたいという熱意によるもの。

 今回のサンバビーン、ポアゾンブラックは、ともに2015年の前半に中央から移籍。サンバビーンは、グランダム・ジャパン古馬シーズンのタイトルを狙っての移籍で、見事女王となった。ポアゾンブラックは、中央所属のままでは地方のダートグレードで除外されることが多かったため、ダートグレードを狙っての移籍。JpnIIIで2着2回、3着1回という成績で、残念ながらグレードのタイトルには手が届かなかったものの、最優秀短距離馬に選ばれたのであれば、半分は目的達成といっていいのではないか。

 地理的に日本の中心付近にある南関東や東海地区はさまざまな場所に遠征しての競馬が容易だが、北海道(門別)の場合、もっとも近い岩手に遠征するのも海を越えなければならない。それだけでもこの2頭の受賞は評価に値する。

 少し以前でも、ホッカイドウ競馬には、古馬の牝馬ならショウリダバンザイ、クラキンコ、短距離ならアウヤンテプイという、全国レベルといってもいい活躍馬がいたが(アウヤンテプイは引き続き現役)、サンバビーン、ポアゾンブラックは、移籍馬とはいえ、ホッカイドウ競馬における古馬のレベルを引き上げたと言っていい。2歳馬だけではないホッカイドウ競馬を全国にアピールした田中淳司調教師と関係者の功績は評価されていいと思う。

 蛇足になるが、裏を返せば、牝馬のダートグレード競走(2歳戦を除く)が集中的に行われている南関東で、近年古馬の牝馬の活躍が目立っていないというのはちょっと寂しい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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