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冬季繁殖馬セール

  • 2016年01月21日(木) 18時00分

繁殖セール


安価な落札馬が、今年はすっかり姿を消したのが印象に残る

 株式会社ジェイエスの主催する「冬季繁殖馬セール」が、20日(水)、新ひだか町静内の北海道市場を会場に開催された。週明け月曜日から北海道は低気圧接近により悪天候に見舞われたが、ここ日高は道東やオホーツク海沿岸の地方に比べると至って平穏で、雪も少なく穏やかに推移した。20日も当初は荒れた天候が懸念されたものの、当日は晴天に恵まれ、コンディションとしては上々のセリ日和となった。

 ただし、一年で最も寒くなるのがこの季節だから、北西の季節風が強くなると体感温度も急低下する。

 さて、今年の冬季繁殖馬セールには当初、受胎馬と空胎馬(未供用含む)合わせて47頭がエントリーしていたが、受胎馬が5頭、空胎馬が4頭の計9頭が欠場してしまい、最終的には受胎馬20頭、空胎馬18頭の計38頭というややさびしい上場頭数となってしまった。

 しかし、昨年の各市場(当歳馬、1歳馬、2歳トレーニングセール)の好調さが反映してか、今回もひじょうに活発な取引が続き、終わってみれば、受胎馬が20頭中13頭(売却率65%)、空胎馬に至っては18頭すべてが落札され完売となる好成績を残した。合わせて38頭が上場され、落札は31頭。売却率は81.58%であった。

 売り上げ総額も1億2231万円(税込)で、昨年よりも約8000万円近い増加となった。落札平均価格は394万5484円。内訳は受胎馬が400万7631円、空胎馬が390万600円である。

 今回のセールは、空胎馬の方が受胎馬よりも高額で落札される“逆転現象”が目についた。

 最高落札価格馬は60番(名簿上47頭の上場頭数だが、番号が1番〜25番=受胎馬、51番〜72番空胎馬と区別されている)の未供用馬「スウィートレイラニ」(5歳鹿毛、安平産、父ディープインパクト、母ウィキウィキ、母の父フレンチデピュティ)の税込2214万円。金子真人ホールディングス(株)が販売申込者、落札者は(有)ビッグレッドファーム。本馬は全姉にエンドレスノット(4勝)、ウリウリ(6勝、京都牝馬S、CBC賞)のいる良血馬で、注目を集めていた。



 次点も空胎馬で57番「ペイパーチェイン」(父Dubawi 母Papabile 母の父Chief's
Crown)8歳栗毛の1620万円。半兄にはグランドロッジ(種牡馬)がいる。井高牧場が販売申込者、落札者は増田和啓氏。



 受胎馬の最高価格馬は5番「ドリームローズ」(11歳鹿毛、父サクラバクシンオー、母ビスクドール、母の父サンデーサイレンス。クロフネを受胎)の1188万円。金子真人ホールディテングス(株)が販売申込者、落札者は(有)ビッグレッドファーム。



 なお、今をときめくスクリーンヒーローを受胎している23番「クライフォージョイ」(5歳黒鹿毛、父サクラバクシンオー、母ノーモアクライ、母の父Cozzene)は540万円でチバスタッドが落札した。販売申込者は(有)メリーゴーランド。


 さらに、もう1頭。こちらは昨年スクリーンヒーローを配合したものの、不受胎に終わった空胎馬だが、本年、フリーリターン特約(再度配合できる)の付帯している54番「ハピネスフォーユー」(11歳栗毛、父A.P.Indy、母ソフォリフィク、母の父ディンヒル)も540万円で落札されていた。販売申込者は(有)千代田牧場、落札者は了徳寺健二氏。


 市場を振り返って主催者代表の藤原悟郎社長は「欠場馬が9頭いたのは残念でしたが、ひじょうに活発に競り合っていただき、良い市場でした。国内唯一の牝馬市場として定着してきている本市場ですが、今後もさらに多くの頭数が上場されますよう願っております」と結び、90点の評価をつけた。

 空胎馬の人気の高さは、確実に良質牝馬の需要が高まってきている証左であろう。また生産者だけではなく、今回は馬主層の落札も目についた。何より、以前ならば肉値で取引されていたような安価な落札馬が、今年はすっかり姿を消したのが印象に残る。サラブレッド市場が好調に推移した昨年の結果を踏まえ、生産頭数は今年から増加に転じて行きそうな気配を感じる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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