スマートフォン版へ

“近年最強の2歳牝馬”の評価が与えられたマインディング

  • 2016年01月27日(水) 12時00分


首位に立ったのは、GI・3連勝を飾ったエアフォースブルー


 2015年版ワールド・ベストレースホースランキングと同時に19日に発表になった、かつてのヨーロピアン・クラシフィケーション2歳部門に相当する、欧州2歳馬ランキングをご紹介したい。

 首位に立ったのは、大方の予想通りエアフォースブルー(父ウォーフロント)で、レイティングは124だった。

 米国産馬で、キーンランド9月市場にて49万ドル(当時のレートで約5220万円)で購買されたエアフォースブルーは、2歳牝馬チャンピオンのフランダーズや、その産駒で3歳牝馬チャンピオンのサーフサイドらと同じファミリーの出身で、日本で走り勝ち馬となっているシェーンメーアが3歳年上の半兄にいるという血統背景を持つ。

 2歳5月にカラのメイドン(芝6F)でデビュー勝ち後、ロイヤルアスコットのG2コヴェントリーS(芝6F)では2着に敗れたが、その後はG1フェニックスS(芝6F)、G1ナショナルS(芝7F)、G1デューハーストS(芝7F)を3連勝。それもレースを重ねる毎にレース内容が良くなり、デューハーストSは後続に3.1/4馬身差をつける完勝で、ブックメーカー各社が今年の二千ギニーに向けた前売りで、2倍前後のオッズを掲げて1番人気に支持しているのがエアフォースブルーである。

 レイティングの124は、過去10年では、2007年にニューアプローチに与えられた126、2010年にドリームアヘッドとフランケルに与えられた126に次ぐ3番目の値で、2009年のセントニコラスアビー、2012年のドーンアプローチと同等だから、まずまずの評価である。ただし、二千ギニーのオッズを見てもわかるように、この世代では少なくともマイル以下では1頭抜けた存在と見られているのがエアフォースブルーで、例えばレイシングポスト独自のレイティングでは2位の馬との間に5ポンドの開きがある125をもらっていることを考えると、若干低めに抑えられたかなという印象はある。

 公式ランキングの第2位は、レイティング121でシャラー(父インヴィンシブルスピリット)だった。

 愛国産馬で、G1ミドルパークS(芝6F)勝ち馬ハイールの甥にあたるシャラーは、タタソールズ10月1歳市場にて17万ギニー(当時のレートで約3107万円)で購買されている。2歳5月にニューマーケットのメイドン(芝6F)を制してデビュー2戦目にして初勝利を挙げると、その後は、G2ジュライS(芝6F)、G2リッチモンドS(芝6F)、G1モルニー賞(芝1200m)、G1ミドルパークS(芝6F)と一気呵成の5連勝。主戦を務めるフランキー・デトーリをして、「自分が騎乗した最速の2歳馬」と称賛する快速馬である。そういう適性ゆえ、陣営は今年春の目標を、クラシックではなく、ロイヤルアスコットのG1コモンウェルスC(芝6F)に置いており、同競走へ向けた前売りでオッズ4〜5倍の1番人気に支持されている。

2歳牝馬としては過去10年の最高値を与えられたマインディング


 そして、レイティング120の第3位が牝馬のマインディング(父ガリレオ)で、同馬が牝馬の首位となった。

 コロネーションS(芝8F)、メイトロンS(芝8F)と2つのG1を制したリリーラングトレーの2番仔となるマインディング。1歳年上の全妹キストバイエンジェルスは、昨年のG3デリンズタウンスタッド愛千ギニートライアル(芝8F)の勝ち馬である。

 2歳6月にレパーズタウンのメイドン(芝6F)を制してデビュー2戦目にして初勝利を挙げた後、カラのG2デビュータントS(芝7F)は2着に敗れたが、続くG1モイグレアスタッドS(芝7F)で重賞初制覇。更にG1フィリーズマイル(芝8F)も勝ち、G1連勝で2歳シーズンを終えている。ことに圧巻だったのが、後続に4.1/2馬身差をつけての快勝となったG1フィリーズマイルで、同馬は現在、千ギニーの前売りでオッズ3.5倍〜4倍の1番人気に推されているだけでなく、オークスの前売りでもオッズ5倍から6倍の1番人気に支持されている。

 実は、同馬のレイティング120が、2015年版の欧州2歳ランキングのハイライトである。この数字、2歳牝馬としては過去10年の最高値なのだ。すなわち、G1マルセルブーサック賞を含む2戦2勝だった2007年のザルカヴァ、5馬身差でG1マルセルブーサック賞を制した2006年のフィンスケールビオに与えられた119を越えたのである。マインディングを越えるレイティングを獲得した2歳牝馬は、2002年にG1マルセルブーサック賞を2馬身差勝ちして121を獲得したシックスパーフェクションズまで遡らなくては存在せず、「近年最強の2歳牝馬」というのがマインディングに対する公式ハンディキャッパーたちの評価である。

 2015年は北米にも、ソングバード(父メダグリアドロー)という傑出した2歳牝馬が出現したが、今年は彼女たちが、果たしていつどこで牡馬とぶつかるかが、1つの大きな見どころとなりそうである。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング