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アメリカでも『ここ半世紀で最強の2歳牝馬』と認定されたソングバード

  • 2016年02月03日(水) 12時00分


ヨーロッパ同様に2歳馬考察のハイライトとなったのは牝馬だった

 先週のヨーロッパ編に引き続き、今週は2015年2歳馬考察のアメリカ編をお届けする。

 伝統のイクスペリメンタルフリーハンデが1月29日に発表され、大方の予想通り、牡馬はナイクィスト(父アンクルモー)、牝馬はソングバード(父メダグリアドロー)が首位に立った。

 イクスペリメンタルフリーハンデとは、ヨーロッパの2歳フリーハンデに匹敵するものとして、1933年からジョッキークラブが発表(1934年は発表なし)している2歳馬ランキングだが、ヨーロッパ版と一線を画するのは、アメリカ版の査定基準が「ダート8.5Fのハンデ戦に出走してきたとして、各馬の負担重量はどれだけになるのか」となっている点にある。すなわち、より実践に即した評価を試みているのがアメリカ版である。

 そして、査定の対象となる馬が、前年に続いて今年も拡大されることになった。2013年版までは、「アメリカで施行された賞金総額7万5千ドル以上の、生産地などの出走制限がない重賞・準重賞で、上位4着までに入った馬」だったのが、2014年版では「アメリカで施行された重賞・準重賞に出走した全馬」に拡大。これが2015年版では「アメリカとカナダで施行された重賞・準重賞に出走した全馬」と、カナダの重賞が初めて査定の対象となったのである。

 牡馬で首位に立ったのは冒頭でも記したように、エクリプス賞2歳牡馬チャンピオンとなったナイクィストで、ハンデは2歳牡馬の首位としてはスタンダードの126だった。

 G1BCジュヴェナイル(d8.5F)を含めて5戦5勝という抜群の実績を残しており、水準値以上の評価もありうるかという見方もあったが、G1BCジュヴィナイルが2着馬と1/2馬身差、その前走のG1フロントランナーS(d8.5F)が2着馬と3/4馬身差と、それほど大きく勝っているわけではないあたりが響いたか、126という評価に落ち着いた。

 ちなみに近年、スタンダード以上の評価を受けた2歳牡馬は、4.1/4馬身差で制したG1BCジュヴェナイルを含めて3戦3勝の戦績を残して128をもらった2010年のアンクルモー、4.3/4馬身差で制したG1BCジュヴェナイルを含めて4戦4勝で127をもらった2007年のウォーパス、G1BCジュヴェナイルを10馬身差で大楽勝して127を貰った2006年のストリートセンス、5.1/2馬身差で制したG1BCジュヴェナイルを含めて8戦8勝の成績を残し、2歳馬にして年度代表馬となった実績を評価されて128をもらった1997年のフェイヴァリットトリック、そして、初ダートのBCジュヴェナイルを5馬身差で制し130をもらった1991年の“ワンダー”アラジらがいる。

 牡馬第2位は、G1BCジュヴェナイルを含めて4つの重賞でナイクィストの2着となっているスワイプ(父バードストーン)で、ハンデは124。牡馬第3位は、G1ブリーダーズフューチュリティ(d8.5F)勝ち馬で、G1BCジュヴェナイル3着のブロディーズコーズ(父ジャイアアンツコーズウェイと、G1BCジュヴェナイルターフ(芝8F)勝ち馬ヒットイットアボム(父ウォーフロント)の2頭が、ハンデ121で横並びとなっている。

 そして、ヨーロッパ同様にアメリカでも、2歳馬考察のハイライトとなったのは、牝馬だった。

 首位に立ったソングバードの2015年の成績は4戦4勝。2着馬につけた差は、デルマーのデビュー戦(d6F)が6.1/2馬身、続くG1デルマーデビュータントS(d7F)が5,1/4馬身、G1シャンデリアS(d8.5F)が4,1/2馬身、そして大外枠からの発走となったG1BCジュヴェナイルフィリーズ(d8.5F)が5.3/4馬身と、いずれもライバルたちに影をも踏ませぬ楽勝で、査定にあたったハンディキャッパーたちは彼女に、牝馬首位のスタンダードである123を2ポンド上回る、125というハンデを与えたのである。

 水準より1つ上の124であれば、3馬身差で制したG1BCジュヴェナイルフィリーズを含めて4戦4勝だった2011年のマイミスオーレリア、1.1/2馬身差で制したG1BCジュヴェナイルフィリーズを含めて3つのG1を制した2008年のスターダムバウンド、G1BCジュヴェナイルフィリーズを3.3/4馬身差で制した2004年のスウィートカトマイン、2.1/2馬身差で制したG1BCジュヴェナイルフィリーズを含めて4戦4勝だった2003年のハーフブライドルドらがいるが、125となると、1997年のG1BCジュヴェナイルフィリーズを8.1/2馬身で制したカウンテスダイアナに与えられて以来、18年ぶりという高評価である。

 そして、これを越える数字を探してイクスペリメンタルフリーハンデの歴史を遡ると、2歳戦としては当時の最高峰と言われたフューチュリティSで、翌年のケンタッキーダービー馬ジェットパイロットを含む牡馬の一線級を破って優勝し、ハンデ126をもらった1946年のファーストフライトまで見つけることが出来ない。すなわちソングバードは、1997年のカウンテスダイアナと横並びで、1947年以降の59年間では最強の2歳牝馬と認定されたのである。

 ちなみにソングバードは、今週末の6日(土曜日)にサンタアニタで行われるG2ラスヴァージネスS(d8F)が今季初戦となる予定で、『ここ半世紀で最強の2歳牝馬』のレース振りに、ファンの熱い視線が注がれることになりそうである。

 牝馬第2位は、G1BCジュヴェナイルフィリーズターフ(芝8F)の勝ち馬キャッチアグリンプス(父シティージップ)と、G1スピナウェイS(d7F)勝ち馬で、G1BCジュヴェナイルフィリーズ2着のレイチェルズヴァレンティーナの2頭が、ハンデ120で横並びとなっている。

 ハンデ100以上をもらった、218頭(牡馬113頭、牝馬105頭)を種牡馬別に見ると、最多ランクインは10頭(牡馬5頭、牝馬5頭)を送り込んだアンクルモーだった。

 前述したように、アンクルモーは2010年の2歳牡馬チャンピオンで、昨年の2歳が初年度産駒となるフレッシュマンサイヤーである。種牡馬として抜群のスタートを切ったことで、2月から5月にかけて北半球の各地で行われる2歳トレーニングセールでは、おおいに人気を博すことになりそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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