時計が示す以上にスタミナが問われる
芝1800mはごく一般的な距離であり、JRA10場で番組が組まれていないのは中京コースだけ。だが、多くのGIが行われる芝1600mや、2000mと対峙すると、なんとなく器用な中距離タイプが好走する軽いスピードレースの印象があり、1600mや2000mほど主要レースではないところがあった。
なぜ、伝統的に芝1800mにビッグなレースがないのか。推測するに、もともとJRAの競馬場は芝の競走だけの時代が長くあり、その競走体系の範を採ったイギリスの主要レースには、「6、8、10、12ハロン」のレースはあっても、7ハロン、9ハロンのレースがなかっただけのこと、と思われる。実際、1400mにもGIは組まれていない。
多くの競馬場で並んで設置されているダート1800mには、ダート競馬はアメリカが中心になって発展してきたので、ダート9ハロンは基本距離にも相当し、GIレースが並んでいる。だから、日本でも最初からダートには1800mの重要なレースが組まれている。
中山記念1800mは、遠くソシアルバターフライ(トウショウボーイの一族)の時代から、1800mのスペシャリストが大活躍し、リピーターの出現するレースとして知られてきたが、近年はちょっとレースの様相が変化してきた。ドバイに(招待されて)遠征するトップホースにとって、理想の位置にあるステップレースになったこと。また、マイル〜中距離指向が一段と進むにつれ、同じ1800mの「毎日王冠、チャレンジC」、牝馬なら「クイーンS、府中牝馬S」、2-3歳馬なら「東スポ杯2歳S、きさらぎ賞、共同通信杯」などのレースランクが上昇したのと同じように、GIこそ組まれていなくとも、1800m重賞には、中距離タイプのトップホースが当然のように出走することになってきたのである。
2011年のヴィクトワールピサは、「有馬記念1着→中山記念1着→ドバイWC1着」であり、2014年のジャスタウェイは、「天皇賞・秋1着→中山記念1着→ドバイデューティーフリー1着」だった。
レースレベルが高くなると、スローでも息の入れにくいせめぎ合いになり、総合力の勝負になるケースが増える。時計が示す以上にスタミナが問われる。迫力のヴィクトワールピサの前に、マイペースで逃げたキャプテントゥーレ(皐月賞など2000m以下に良績集中)がひねりつぶされ、確勝の形になった昨年の
ロゴタイプ(2000m以下で全5勝)が、ゴール寸前ヌーヴォレコルト(オークス馬)に屈したのも、以前の中山記念ではなくなったからかもしれない。たまたまではあるが、近年はリピーターもいない。
今年の有力馬のレベルは高い。1800mだからこそ、ではなく、総合力=底力が問われてしのぎ切れる魅力は、ダービーレコードの4歳
ドゥラメンテ、ライバルで菊花賞2着
リアルスティール、天皇賞・秋を小差5着の
アンビシャス。この4歳馬3頭に、古馬ではジャパンC2着、3200mの天皇賞でも小差4着がある
ラストインパクトか。配当面の魅力と、F.ベリー騎手なら強気に途中からでもスパートしてくれる可能性のあるラストインパクトを買いたい。ナリタブライアン、ビワハヤヒデ、キズナが近親馬に並ぶファミリー出身。底力は秘められている。