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10年間で3割減少

  • 2016年03月09日(水) 18時00分
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昨年、市場が盛況に推移した日高だがその一方で…(写真はイメージです)


牧場の軒数が減少しつづけており日高軽種馬農協の組合員数も年々減り続けている


 来る3月11日(金)に、新ひだか町静内にて日高軽種馬農協総代会が開催される予定だが、それに先立ち、先月、組合より議案書と平成27年度の業務成績資料が送付されてきた。内容は、市場成績を中心に、牝馬数、日高管内の組合員数、繁殖牝馬数、種牡馬数、JRA重賞競走の地区別勝鞍一覧まであって貴重なデータが並ぶ。

 昨年、日高は市場が盛況に推移し、1歳市場においてはいずれも前年を上回る好成績を残した。2歳トレーニングこそ、売却率は前年を下回ったものの総額、平均価格は増加した。その好調の波は1歳市場においても持続し、オータムセールまで活況を呈したことは記憶に新しい。

 ただ、その一方で、日高管内においては、牧場の軒数が減少しつづけており、日高軽種馬農協の組合員数も、年々減り続けている。牧場数と組合員数は必ずしもイコールではないが、ほぼ日高の現状を忠実に反映した数字と捉えて差し支えない。中には、組合員でありながら、すでに生産を休止、廃業してしまっていたり、あるいは近々廃業することを前提にして繁殖牝馬を1頭、2頭程度に減らしている牧場も少なくない。

 業務成績資料には平成18年からの組合員数の推移が一覧表で示されているが、それによると、この年1024人いた組合員が、年々減り続け、翌19年には965人となり、それ以後も、毎年二桁ずつのマイナスで平成27年には737人になってしまっている。

 ちょうど3割減の計算だが、町ごとの集計でも、ほぼこの減少率は変わらず、多少の違いはあっても、どの町でも概ね3割の組合員が脱退してしまった計算になる。

 因みに平成18年→20年の推移を町ごとに挙げると、えりも6→4、様似32→24、浦河153→111、荻伏94→63、三石149→105、静内187→137、新冠150→112、門別225→158、平取28→23という内訳である。

 浦河と荻伏、三石と静内は、行政単位としては現在ひとつの町になるが、生産地はもともと軽種馬生産振興会という単位で分類されるならわしになっており、ここでは未だに同じ町でありながら二つの団体が並立している。こうして見て行くと、日高全体でまんべんなく減少していることが分かる。

 これらの牧場で繋養されている繁殖牝馬(サラブレッド)の頭数もまた18年には8804頭だったのが、27年には7800頭と1000頭強の減少になる。平成26年だけは前年比で64頭増加に転じたものの、それ以外の年は確実に繁殖牝馬数が前年を下回っている。

 繁殖牝馬飼養規模別牧場数というデータもある。これは23年〜27年の5年間の数字しか記載されていないが、27年で見ると、1頭〜3頭が195戸(23年207戸、以下同)、4頭〜5頭が99戸(153戸)、6頭〜10頭が219戸(255戸)、11頭〜14頭が101戸(94戸)、15頭〜19頭が58戸(58戸)、20頭以上が73戸(69戸)であり、この間の減少で目立つのは4頭〜5頭及び6頭〜10頭という規模のおそらく家族経営と思われる牧場数が少なくなっている点だ。23年は836戸だから、それから27年までに91戸の減となる計算で、うち4頭〜5頭規模の牧場の54戸減、6頭〜10頭規模の牧場の36戸減が割合としては大きい。11頭以上の規模になるとそれほど大きな変化は見られず、11頭〜14頭規模と20頭以上の規模はむしろ増加している。また1頭〜3頭規模でも減少率は緩やかだ。

 ついでに全国馬名簿掲載頭数(ほぼ生産頭数と考えて良い)の推移では、18年産が全国で7325頭、うち日高管内分が5863頭だったものが、20年産になると、全国で6249頭、うち日高が4867頭である。繁殖牝馬数の減少分が、そのまま生産頭数にも反映されていることになる。その一方で、逆に胆振管内は18年が857頭、27年には939頭に増加している。また千葉県は18年産が282頭、27年が311頭となっていて、この大部分は社台ファーム生産馬(名簿では千葉県に分類されている)である。

 一口に牧場といってもその中身は実に様々で、経営者の年齢や後継者の有無など、これらの数字だけでは推し量れない要素も多い。しかし、かなり乱暴に言ってしまうと、今後そう時間の経たないうちに、繁殖牝馬1頭〜3頭規模の牧場はいずれ廃業に向かうであろうことが予想される。また経営主が60代以上の牧場は、後継者がいない限り「後がない」状態と考えられ、今後数年か、せいぜい10年ほどで姿を消す牧場が少なくないはず。

 昨年の市場の活況が、牧場数の減少にある程度歯止めをかける結果になれば良いが、現実はそう甘いものではなさそうだ。今後、牧場数がどのように推移して行くのかひじょうに気になる。10年後には現在の半数以下にまで激減してしまう予感もある。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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