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馬主服と騎手服

  • 2016年03月11日(金) 18時00分


◆全国を通じたルールづくりが望まれる

 前々回のこのコラムでは、岩手競馬にグレード制が導入されることについて触れた。岩手競馬ではその後さらに新年度の新たな取り組みについてのリリースがあり、その中に「馬主服の導入」というのがあった。発表は以下のとおり。

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 岩手競馬では、平成28年度より岩手競馬で騎乗する際の服色について、これまでの騎手服に加え、馬主服の使用を認めることといたします。
 ◯対象競走
 ・ダートグレード競走
 ・地方交流重賞競走
 ・2歳馬の競走のうち新馬戦及びJRA認定競走
 ・JRA条件交流競走
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 地方競馬ではすでにホッカイドウ競馬で、JRA認定競走、オープン競走、重賞など一部のレースで馬主服の着用が認められている。中央・地方双方で馬主となっている場合には、中央と同じ服色を登録している人もいるし、中央とは異なる服色を登録している人もいる。また地方のみに馬主登録を持っている人も服色を登録できる。

 岩手の馬主服導入では服色登録について触れられていなかったので、主催者に問い合わせてみたところ、ホッカイドウ競馬とはかなり違うものだった。

 対象馬主については、<岩手競馬所属調教師と預託契約を締結している馬主(共有馬主にあっては共有代表馬主)で、日本中央競馬会に服色の登録をしている者>で、服色については、<日本中央競馬会に登録している服色と同一規格(色・表示)のものに限る>となっている。

 つまり、ホッカイドウ競馬のように同一馬主が中央と異なる服色を登録することはできないし、中央で馬主になっていない人には馬主服の使用は認められない。

 そもそも騎手ごとに服色が決まっている「騎手服」は、日本の地方競馬のほかには韓国くらいしかなく、世界的に見ればきわめて特殊なもの。それゆえ以前から地方競馬でも馬主服の導入を望む声はあり、それをいち早く(2006年度から)導入したのがホッカイドウ競馬だった。

 おそらく今後、ホッカイドウ、岩手に続いて馬主服を認める地方競馬の主催者も出てくることだろう。しかしその対応や規定が主催者ごとに異なるというのは、また新たな混乱の元となるに違いない。

 ホッカイドウ競馬は最初なので、いわば“やったもの勝ち”というところがあった。しかし今後主催者ごとに馬主服の登録があったのでは、同じ馬主でも主催者ごとに勝負服が異なるという状況が生じかねない。また岩手のように、中央に馬主登録のある馬主のみに同じ服色の使用を認める、ということにも不満の声が出てくるだろう。

 そもそも騎手服にしても地区ごとに使える色やデザインの規定が異なっていて、一方で登録する地域が異なると、まったく同じ勝負服というのも存在している。地方競馬が地区ごとに行われほとんど交流がなかった時代はそれでもよかったが、今では地方同士での交流も当たり前になり、また重賞なら所属に関係なく騎乗できる。さらに期間限定騎乗の制度もあり、騎手の移動は日常となっている。

 地方競馬は、その成り立ちゆえ主催者ごとにさまざまなローカルルールがある。先日、JRAの藤田菜七子騎手が川崎でデビューする際に減量が適用にならないことが話題になったが、地方競馬では見習い騎手の減量の規定が主催者ごとに異なっているということも、その一例だ。

 地方競馬の馬主服については、“主催者の数だけルールが存在する”という状況にならないよう、全国を通じたルールづくりが望まれる。併せて、地区ごとに異なる騎手服の規定についても見直される時期が来ているのではないだろうか。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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