可能性が残ったのは2着に突っ込んだアットザシーサイド
3月21日(月)のG3「フラワーC」中山1800mで、出走可能な賞金獲得額に達する馬が新しく1〜2頭加わるだろうが、フィリーズレビューが終了した時点で、今春の「桜花賞」に出走可能な獲得賞金最低額は、優先権を得た馬以外「条件賞金1200万」となる見込みとなった。ふつうの2勝馬「条件賞金900万」にとどまるグループは、残念ながら出走できる可能性はきわめて低い。重賞レースが増えたこともあり、ボーダーラインは昨年とほぼ同様である。
新しく優先出走権を得たのは「
ソルヴェイグ、
アットザシーサイド、そしてすでに賞金額をクリアしていた
キャンディバローズ」の3頭。目下、評価NO.1のメジャーエンブレム、さらにはチューリップ賞快走のシンハライト、ジュエラーなどと対戦する桜花賞で、勝ち負けに持ち込める可能性はどのくらいあるのだろうか。チューリップ賞組が断然となった最近7年に限ると、フィリーズレビュー組は桜花賞での連対はなく、2012年の勝ち馬アイムユアーズが本番で3着(3番人気)しているだけである。
勝ちタイムの1分22秒1「35秒0-(12秒2)-34秒9」は、最近10年間では、本番を2番人気で7着だった2007年アストンマーチャンの1分21秒8に次ぐ時計で、2013年メイショウマンボ(桜花賞10着)の1分22秒1と同じ。そのうえ、高速馬場だった1週前の「チューリップ賞」ほどタイムの速い馬場ではないにしても、土曜日の3歳未勝利戦が「1分22秒3」、古馬1000万特別が「1分21秒4」だったことからみて、今週も標準よりだいぶ速いタイムが記録される馬場状態だった可能性が大きい。過去数年のフィリーズレビュー組と良くて同じようなレベルか、あるいは一枚落ちる危険がある。
チューリップ賞は1分32秒8(46秒8-46秒0)という異常なレースレコードであり、ウオッカのレースレコードを「0秒9」も更新したどころか、桜花賞レコードさえ「0秒5」も上回っている。また、たしかに圧倒的なスピードを誇るメジャーエンブレム(阪神JFの1着は1分34秒5の水準時計)にしても、クイーンCの1分32秒5だけは従来のレースレコードを「1秒5」も更新する驚異的な時計だから、比較の対象として適さない危険がある。
たとえば、フィリーズレビュー1400mの「1分22秒1」に対し、先週のチューリップ賞の1400m通過は「1分21秒2」なので、大きな馬場差を考慮しなければ、フィリーズレビュー組は、チューリップ賞の上位グループとはクラスが2つくらい異なる印象を与えかねない。
今年、同じ阪神1600mでも、チューリップ賞の週はちょっと異常であり、阪神JFを7着(1分35秒4)のデンコウアンジュは、チューリップは5着(2秒3も速い1分33秒1)であり、阪神JFを2着(1分34秒8)にがんばったウインファビラスは、チューリップ賞は10着止まりでも(1秒2も速い1分33秒6)。阪神JFを3着(1分35秒0)のブランボヌールは、望みがついえたような14着に沈んだものの、やっぱり「1秒2」も時計短縮の1分33秒8だった。
フィリーズレビュー組は、1週前のチューリップ賞組にはその評価は大きく見劣るだろうが、チューリップ賞は少なくとも「1秒2」以上の馬場差があり、実際には例年の勝ちタイムより少し速い「1分34秒台前半」くらいに相当するのではないか、と推測するなら、表面上のタイムが示すほどの決定的な差はないと考えることもできる。
勝ったソルヴェイグ(父ダイワメジャー)は、好スタートから先団のインにおさまると逃げるキャンディバローズをピタッとマーク。直線、その外に回って抜け出し、自身の中身は「推定35秒3-(12秒2)-34秒6」=1分22秒1。これで1400m以下【2-0-2-1】。全体にスピード色の強い牝系に、父ダイワメジャー。折り合い不安はないが、今回は川田騎手のそれこそ一分のスキもないような好騎乗が重なった印象が強い。今年のダイワメジャーは、メジャーエンブレムを送るなど評価再上昇の世代。その強みはあるが、軽快なスピード系にまとまった印象は否定できず、本番が初めての1600mとなるのは大きな死角か。
2着に突っ込んだアットザシーサイド(父キングカメハメハ)は、ここを本番前のステップに選んだのは正解と出る公算大。たまたま1分22秒3(推定35秒8-(12秒1)-34秒4)の2着にとどまったが、追い出した直線の反応が鈍く、明らかにまだ脚が残っていた印象がある。今回は負担のかかるような厳しいレースではなかったのも、ローテーションのうえで好材料。減っていた馬体も440キロまで回復し、道中のフットワークも大きくなっていた。メジャーエンブレムから0秒6差の5着に終わった阪神JFは、上位馬の中ではもっとも外に回って、完勝したメジャーエンブレム(上がり35秒6)に対し、こちらはメンバー中NO.2の上がり35秒3。決して1400mがベストとは思えず、本番で3〜4番手の支持を受ける候補か。この馬は可能性が残った。
3着キャンディバローズ(父ディープインパクト)は、絶好のスタートから自身で主導権をにぎって「35秒0-(12秒2)-35秒1」=1分22秒3。終始、単騎マイペースであり、休養明けとはいえこの決着時計で内回り1400mなら、あのまま楽に押し切るくらいでないと「1600mの本番は…」の印象が残った。出負けして1分35秒5の9着に終わった阪神JFと比較すれば、直前もビシッと追えるほど丈夫になり、406キロの小柄馬には見せない鋭い動きだったが、上のファインチョイス(父アドマイヤムーン)は桜花賞7着。好走は短距離戦に集中していた。こちらは小柄な体つき以上にパンチはあるが、同じ先行タイプにメジャーエンブレムがいる本番は、展開面できびしいだろう。
獲得賞金から、ここは8着(1分22秒9)でも本番に出走できる可能性のある
メイショウスイヅキ(父パイロ)は、たしかに外枠の不利は大きかった。だが、2歳時からの進境が少なく、同じく獲得条件賞金1200万の
ボーダレス(父アドマイヤムーン)も、途中で下がってしまうようではレースの内容に進展が乏しい。ともに桜花賞での好走は難しいと思える。