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震災から5年、新たな岩手の顔・山本聡哉騎手の決意

  • 2016年03月15日(火) 18時00分
山本聡哉騎手

「船橋・岩手ジョッキーズ交流競走」で優勝した山本聡哉騎手



山本聡哉騎手「今も全国の方々がこうして支えてくれていることに心から感謝しています」



赤見:3月11日に船橋競馬場で、被災県である千葉県と岩手県の競馬場所属騎手の交流競走「船橋・岩手ジョッキーズ交流競走」が行われました。東日本大震災から5年を迎えるにあたって、被災地の復興支援に寄与することを目的として行われたこのレース、第1戦、第2戦ともに快勝して2連勝を飾りましたね。

山本聡哉騎手

被災地の復興支援に寄与することを目的として行われた「船橋・岩手ジョッキーズ交流競走」の出場騎手



山本:まずは、こういう形で交流レースを組んでいただき、復興支援に協力していただいたたくさんの方々に感謝しています。レースに関しては、両方ともいい馬に当たったお蔭です。今は岩手競馬がシーズンオフなので、2か月ぶりのレースだったんですけど、前乗りで2鞍に乗せていただいて、だいぶ緊張がほぐれました。交流競走の第1戦は、少し掛かるところのある馬だと聞いていましたが、1200mだったので上手く折り合いがついたし、スムーズに流れに乗れて強い競馬でした。第2戦は、なかなか勝ち切れないところのある馬だと聞いていたので、直線で最後の脚を活かすよう心掛けました。行く場所が狭くて(森)泰斗さんを押し出す感じになってしまい、強引だったと反省しています。

赤見:震災から5年目を船橋競馬場で迎えたお気持ちはいかがでしたか?

山本:震災の日に競馬が開催していることの重みを感じました。当時は本当に辛い想いをしている方が多くいらして、競馬だけじゃなくいろいろなことが自粛ムードでした。競馬が開催できなかった時期を乗り越えて、5年かけて1歩1歩進んで来て、今も全国の方々がこうして支えてくれていることに心から感謝しています。風化させたくないという気持ちが強いので、これからも被災地はもちろん全国の方々にもアピールしていきたいです。

山本聡哉騎手

「船橋・岩手ジョッキーズ交流競走」2位の菅原俊吏騎手(右)と



赤見:当時は山本騎手も大変な想いをされたのではないですか?

山本:僕は幸いにも大きな被害はなかったんです。ただ、嫁さんが妊娠中で、遠野の実家に帰っていて、避難しなければいけない場所だったのでかなり心配しました。それに、しばらくはちゃんと食べる物がなくて、お菓子とかしか食べられなかったので、妊娠中だし体のことも心配でした。そんな中で競馬がいつ開催できるのかとかは、ちょっと考えられない状況でしたね。

赤見:一つの区切りの5年という年月を迎えて、その辺りのお気持ちはいかがですか?

山本:自分に何ができるのかというのは、変わらず考えています。ただ、テーマが深すぎて簡単には答えは出せないですけど。自分の今置かれた立場で、社会の一員としてしっかりと歯車を回すことが、先々に繋がっていくんだと思っています。

赤見:山本騎手は、岩手の昨シーズンで念願のリーディングを獲得しました。これからは岩手の顔としてさらに存在感が増しますね。

山本:リーディングに関しては、ここ何年かずっと目標にやってきて、でもなかなか村上(忍)さんを抜けなくて…。焦って空回りした時期もありました。でも昨年は本当に流れが良くて、いい馬にたくさん乗せていただき、「今年獲れなかったら当分無理だな」という気持ちでやっていました。実際にリーディングが確定した時は、嬉しいというよりもホッとしたという気持ちの方が大きかったです。たくさんの方に応援していただきましたから、一つ恩返しができたなという気持ちで。ただ、リーディングはその競馬場の顔ですから、岩手を背負う責任とか、プレッシャーを強く感じました。達成感よりも、そっちの方が大きかったです。なってみて初めて、リーディングの重みがわかりました。

赤見:昨シーズンは本当に大活躍で、特に重賞を勝ちまくりましたね(重賞7勝)。

山本:強い馬たちに乗せ続けていただいたお蔭です。特に大きかったのはロールボヌールで岩手ダービーを勝ったことです。ものすごく強い馬なので、負けるはずはないとわかってはいるんですけど、やっぱり競馬なので何が起こるかわからないじゃないですか。なので、さすがにレース前は緊張しました。でもあそこで勝てたことで、少しだけ気持ちに余裕が持てるようになったと思います。

赤見:さらにラブバレットとのコンビで全国的な活躍も期待できそうですね。

山本聡哉騎手

2015年の笠松グランプリを制したラブバレット



山本:笠松グランプリを勝てたことは本当に嬉しかったです。次走黒船賞(3月15日高知)のメンバーは強いですけど、状態がいいのでなんとか食らい付いていきたいですね。地元でリーディングを目指すのはもちろんですが、ラブバレットのような強い馬に乗せていただき、全国の競馬場で勝負できることは本当に刺激になります。これからは岩手の看板を背負うので、僕が不甲斐ないレースをすれば岩手競馬が不甲斐ないと思われてしまいますから、責任を持ってしっかりと騎乗していきます!

山本聡哉騎手

2015年の笠松グランプリの口取り写真



***岩手競馬のシーズンは、今週19日(土)から水沢でスタートします。ぜひご注目下さい。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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