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格が違ったアウォーディーのパフォーマンス/名古屋大賞典

  • 2016年03月18日(金) 18時00分


改修が行われて以降、ややタイムがかかる傾向の名古屋競馬場

 アウォーディーが芝からダートに転向して3連勝。その勝ち方はレースを重ねるごとに強くなっている。もともとその血統背景もあったのだろうが、1000万条件あたりでしばらく足踏みが続いていたことを思えば、なぜもっと早くダートを使わなかったのだろうと思わせるほどだ。

 今年から中央枠が4頭から5頭に拡大された名古屋大賞典だが、ダートグレード勝ち馬はアウォーディーだけ。さらに中央の5頭中、地方の出走経験があるのは門別デビューで昨年のマイルチャンピオンシップ南部杯(盛岡)に出走していた(4着)ダブルスターだけ。中央勢にこの路線の“常連”がいないという、めったにない顔ぶれとなった。

 戦前の予想では、アウォーディーの実力はおそらく抜けていて、条件に恵まれて芝のオープンを勝ってしまったマドリードカフェは蚊帳の外という感じで、人気も実際にそうなっていた。馬券的な興味の対象は、2番人気のダブルスターが先行して粘れるのか、それとも3番人気モズライジンと4番人気バンズームの末脚が生かせる展開になるのか、ということだったと思う。

 予想通り最内枠に入ったダブルスターが逃げて、最初の3F通過は39秒くらい、4F通過が51秒ちょっとで、かなり落ち着いたペース。向正面あたりではダブルスターが粘る流れに思えた。粘るといっても、もちろん勝つのはアウォーディーだが。しかし3コーナー過ぎでアウォーディーに並びかけられると、ダブルスターはまったく抵抗できずに後退。1〜2コーナーあたりからぴたりとうしろに付かれたアウォーディーのプレッシャーはあったかもしれない。中団から押し上げてきたバンズーム、モズライジンがそれぞれ2、3着に入ったが、この2頭の上り3Fがそれぞれ40秒2、40秒1もかかっていることから、ダブルスターをとらえたとはいえ、末脚が生きたというほどでもない。

 アウォーディーの圧倒的な勝ち方だけが目立ったレースになったが、ダブルスターを突き放すあたりで軽く追われただけで、出したタイムが2分1秒2、上り3Fは38秒2(レースの上りは38秒3)。名古屋競馬場は昨年夏に馬場の改修が行われて以降、ややタイムがかかる傾向があり、それを考えればアウォーディーのパフォーマンスはJpnIIIとすれば水準よりは高いが、着差ほどびっくりするほどのものではない。むしろ2着以下のパフォーマンスがやや低調で、その差が大差という結果になったのだろう。

 とはいえアウォーディーは直線ほとんど流してのゴールだっただけに、GI級のメンバーとの対戦となればそれなりの能力を発揮する可能性は期待できる。

 武豊騎手は、エンプレス杯(アムールブリエ)、ダイオライト記念(クリソライト)、そして今回と、地方のダートグレードで騎乗機会3連勝(黒船賞は騎乗なし)。3頭ともにどうやら帝王賞が目標となるようで、そうなれば、アウォーディーとアムールブリエのきょうだい対決が興味深い。アムールブリエには浜中騎手の復帰が間に合いそうで、クリソライトは外国人や戸崎騎手、川田騎手らも騎乗しており、そうなると武騎手はアウォーディーとなるのだろうか。

 中央枠が5頭になったが、なんとか掲示板の独占は逃れ、兵庫のアクロマティックがマドリードカフェをとらえて5着に入った。4着のダブルスターから5馬身差で、走破タイムは2分5秒3。相手のレベルが上がったぶん、トライアルの梅見月杯よりコンマ9秒詰めており、アクロマティックは自分の力は発揮した。ダートグレードとなるとややハードルは高いが、今回の経験で地方同士の重賞ならさらなる期待はできそうだ。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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