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北関東の絆

  • 2016年03月18日(金) 18時00分


 16日に大井で行われた京浜盃を勝ったのは、浦和のタービランス。2歳時にはホッカイドウ競馬でもっとも注目されたうちの1頭で、転入初戦の浦和・ニューイヤーCでは惜しくも2着だったが、移籍後2戦目での勝利となった。南関東三冠へ向けての最重要ステップレースだけに、羽田盃から東京ダービーでは期待を集めることになりそうだ。

 そしてタービランスの鞍上、森泰斗騎手は、表彰式のインタビューの最後で、「昔からの先輩である水野さんの馬で勝てたのが一番嬉しいです」と締めた。

 森騎手は、もともと北関東の足利・宇都宮競馬の所属。廃止後に船橋に移籍し、当初はなかなか勝てない時期もあったが、ついに昨年南関東のリーディングにまで昇り詰めた。

 “水野さん”とは、タービランスを管理する水野貴史調教師。北関東の高崎競馬でトップジョッキーとして活躍し、廃止後に浦和に移籍。2013年から調教師となり、これが調教師としての重賞初制覇だった。

 移籍後の南関東ではそれぞれに苦労があり、北関東の競馬がすべて廃止になってから10年以上が経ち、こうして激戦区の南関東で一緒になって結果を残したということでは、思うところがあったのだろう。北関東の現役時代を知る我々にとっても、見ていて感慨深いシーンだった。

地方競馬に吠える

森泰斗騎手と水野貴史調教師。元北関東コンビで京浜盃制覇


 そしてもうひとつ、近年、南関東で注目されているのが、浦和所属馬の活躍だ。

 1980年代から90年代前半にかけては、かなりの活躍馬がいた浦和競馬だが、その後90年代後半から2000年代に入って、浦和にはオープン馬がほとんどいないという時期もあった。それゆえ浦和の重賞が浦和以外の馬たちで争われるということもめずらしくなかった。

 浦和競馬場は南関東の中でも開催日数が少ないということもあっただろうし、厩舎がある野田トレセンの馬場は浦和競馬場よりさらに小回りのため、思い切った追い切りができないということもあっただろう。

 その浦和を変えたのが、小久保智調教師だ。2012年には131勝を挙げ、南関東所属調教師としての年間最多勝記録を更新し、初めて南関東リーディングとなると、昨年まで4年連続100勝超えで南関東リーディングを続けている。昨年の東京ダービーでは所属馬によるワンツーを決め、浦和所属馬による25年ぶりの東京ダービー制覇ともなった。

 また昨年52勝を挙げて南関東のトップ10入り(9位)を果たした平山真希調教師の活躍も注目されている。

 水野貴史調教師の重賞初勝利は、こうした浦和の勢いを感じさせるもの。京浜盃では、出走14頭中、6頭が浦和所属馬だったことも、ちょっとした話題となっていた。こうした浦和所属馬と調教師の活躍は、時代の大きなうねりを感じさせるものだ。

 さて、廃止された競馬場ということでは、3月26日(土)の高知競馬で、かつて福山競馬に所属し、現在でも地方競馬で現役の騎手を集めた『福山けいばメモリアル競走』が行われる。ぜひとも注目していただきたい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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