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日本馬が出走する注目のドバイワールドCナイト後半3レース展望

  • 2016年03月23日(水) 12時00分


ソロウ回避でリアルスティールで充分に勝負になるドバイターフ

 いよいよ今週土曜日に開催が迫ったドバイワールドCナイトから、G1ドバイターフ(芝1800m)、G1ドバイシーマクラシック(芝2410m)、G1ドバイワールドC(ダート2000m)の3競走を展望したい。

 今年のドバイ開催9競走で最も強固な軸馬とみられていたドバイターフのソロウ(セン6、父シングスピール)にアクシデント発生というニュースが伝わってきたのが、16日(水曜日)のことだった。この朝、シャンティー調教場における調教中に足をぶつけ、外傷を負ったとの情報が入ってきたのである。

 陣営は、翌17日(木曜日)の朝まで様子を見た上で、ドバイターフの回避を発表。レース当日までには完治する程度の軽症ではあったものの、輸送を18日(金曜日)に控えていたこと、シーズン序盤で目標とするレースがこの後たくさんあるなどの理由から、ここは無理をしないという結論に達したのである。

 大本命が突然いなくなってしまったことで、俄然色めき立つことになったのがライバル陣営である。

 17日の午後には早速、ドバイワールドCに出走予定だった英国調教馬インティラーク(牡4、父ダイナフォーマー)の陣営が、ドバイターフに矛先を変えることを表明。メイダンのダートに対応すべく、チェルムスフォードやサウスウェルのオールウェザートラックで調教を重ねていたインティラークについて、陣営は「本分の芝を走らせる方がベター」と出走レース変更の理由を説明したが、『ソロウ不在の顔触れならば』が内心であることはバレバレである。

 他馬の不幸を喜ぶわけではないが、ソロウ欠場は日本から参戦するリアルスティール(牡4、父ディープインパクト)にとっても追い風であることは間違いない。

 ブックメーカー各社の前売りで、ソロウに代わって1番人気に浮上したのは、前哨戦のG1ジェベルハタ(芝1800m)勝ち馬トリスター(セン5、父シャマーダル)だが、そのジェベルハタのメンバー構成はと言えば、南アフリカでG1勝ちの実績がある馬が2頭いた以外は極めて手薄なもので、2着に来たファリアー(セン8、父タピット)は、重賞はもとより準重賞すら勝ったことのない馬であった。

 更に、2番人気に浮上したのが、急きょここに矛先を向けてきたインティラークなのだが、素質の高さこそ認められているものの、実績はまだG3までしか勝ったことのない馬である。

 こうした顔触れならば、リアルスティールで充分に勝負になると見ている。

ドバイという異空間で自分を見失わないかが心配なドゥラメンテ

 芝2410mという日本馬の得意とする舞台に、昨年のダービー馬とジャパンC2着馬、そして一昨年のダービー馬という、豪華な陣容で臨むのがシーマクラシックである。

 ましてや3頭のうち1頭は、秋の凱旋門賞を狙おうというドゥラメンテ(牡4、父キングカメハメハ)ゆえ、ファンの期待は否応なく膨らむが、相手関係で言えばここはドバイターフよりはかなり強い。

 相手馬の筆頭は、英国のブックメーカー各社の評価もドゥラメンテより上になっているポストポーンド(牡5、父ドゥバウィー)である。

 昨年のG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝12F)の勝ち馬で、このパフォーマンスをもってレイティング121を獲得。ダービーで121を獲得しているドゥラメンテとは同格(ワールドランキング芝Lコラム世界8位)との評価を受けた馬である。

 圧巻だったのが今季初戦となったスーパーサタデーのG2ドバイシティオヴゴールド(芝2410m)で、約半年ぶりの実戦だったにも関わらず、これもシーマクラシックに出て来る昨年暮れのG1香港ヴァーズ(芝2400m)3着馬ダリヤン(牡4、父シャマーダル)を相手に3馬身差の快勝。キングジョージ勝ち馬としての、格の違いを見せつけることになった。

 更に、大手ブックメーカーのコーラルが、3月21日現在でドゥラメンテと横並びの2番人気に評価しているのが、A・オブライエン厩舎が差し向けた刺客ハイランドリール(牡4、父ガリレオ)である。

 ヨーロッパではG1仏ダービー(芝2100m)2着が最良の成績で、期待が高かった割には物足りない成績に終わったが、だからこそと言うべきが、バリードイルにおける海外キャンペーン要員に指名され、北米でG1セクレタリアトS(芝10F)、香港でG1香港ヴァーズ(芝2400m)に優勝。豪州でもG1コックスプレート(芝2040m)3着という、立派な成績を収めている。アウェイの環境に動じないという側面ももちろんあろうが、ヨーロッパのタフな馬場よりは、いささか軽めの馬場の方が良いという側面もありそうで、いずれにしてもメイダンのシーマクラシックが適鞍であることは間違いなく、日本馬にとって要警戒の1頭となろう。

 期待のドゥラメンテは、出国検疫の際に既に環境の変化に動じていたとの報道もあり、ドバイという異空間で自分を見失わないかが心配だ。

 一方、ドゥラメンテばかりに注目が集まる日本勢だが、ジャパンC2着の脚を再現出来れば、ラストインパクト(牡6、父ディープインパクト)も争覇圏にいる1頭である。近走は精彩を欠くワンアンドオンリー(牡5、父ハーツクライ)も、昨年のこのレースでは3着に好走しており、異空間で再び覚醒して、3歳時の輝きを取り戻して欲しいものである。

いよいよダートの本場アメリカが大攻勢を仕掛けてきたドバイワールドC

 相手が揃ったと言えば、シーマクラシックの上を行くのが、ドバイワールドCだ。ダート回帰2年目を迎え、いよいよダートの本場アメリカが大攻勢を仕掛けてきたのである。

 その筆頭が、カリフォルニアクローム(牡5、父ラッキープルピット)だ。一昨年、春の3歳2冠に加えて秋には芝のG1ハリウッドダービー(芝9F)を制し、全米年度代表馬のタイトルを獲得。昨年のこのレースで2着となった後、遠征先の英国で蹄を傷めて残りのシーズンを棒に振ったが、今年1月にサンタアニタのG2サンパスカルS(d8.5F)で戦列に復帰し、ここを快勝。早目にドバイ入りし、2月25日にメイダンで行われたハンデ戦(d2000m)も楽勝。5歳を迎えて競走馬として完成した姿を見せている。

 こちらも早目にドバイ入りし、2月4日にメイダンで行われたG2アルマクトゥームチャレンジ(d1900m)を快勝したのが、フロステッド(牡4、父タピット)だ。アメリカンフェイロー世代にあって、G1サンタアニタダービー(d9F)に勝ち、G1ベルモントS(d12F)2着、G1トラヴァーズS(d10f)3着などの実績を残した、トップホースの1頭である。

 昨年秋に芝からダート路線に転向し、今年に入ってG3ハルズホープS(d8F)、G1ドンH(d9F)を連勝しているムシャウィッシュ(牡6、父メダグリアドロー)。一昨年のG1クラークH(d9F)勝ち馬で、層の厚い古馬ダート中距離の重賞戦線で常に掲示板を外さない堅実な走りを見せているホッパーチュニティ(牡5、父エニーギヴンサタデー)。そして、近走の成績振るわぬものの、昨年8月にG1トラヴァーズSでアメリカンフェイローを破るという大駆けを演じたキーンアイス(牡4、父カーリン)という、5頭を擁した北米勢の戦力は分厚い。

 ホッコータルマエ(牡7、父キングカメハメハ)には、3年連続の参戦という経験値を活かして、なんとか前年を上回る成績を挙げて欲しいものである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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