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第48回ばんえい記念

  • 2016年03月23日(水) 18時00分
フジダイビクトリー

第48回ばんえい記念を制したフジダイビクトリー


例年にも増して、大変な賑わいだった当日の帯広競馬場

 毎年3月の北海道は、寒さと温かさが行ったり来たりしながら、ゆっくりと季節が進む。本州(とりわけ関東以西)ではサクラ開花のニュースが話題になるこの時期でも、北海道だけはまだ先の話で、どうかすると気温が一気に低下し、冬に戻ったような気候になる日もある。

 ばんえい記念前の数日間、北海道では季節外れの暖気となり、雪融けが一気に進んだが、ばんえい記念当日の20日には、晴天に恵まれたものの、平年並みどころかそれ以下の厳しい寒さに震える一日となり、北風の冷たさが身にしみた。

 しかし、帯広競馬場は、例年にも増して、大変な賑わいであった。何を措いてもこの日だけは現地観戦するという熱心なファンが数多く来場し、ここかしこで旧交を温める光景が見られた。道内はもちろんのこと、本州方面から遠征してくる人々も少なくないのが、ばんえい記念の最も大きな特色である。第1レース(12時15分)から、埒沿いに設置されたエキサイトゾーンに、カメラを持ったばんえいファンがズラリと並び、発馬とともに、馬と一緒にゴール方向へと歩きながら声援を送る人々が大勢いた。

 第48回ばんえい記念は、第9レース。発走時間は午後5時15分。日照時間の延びたこの時期は、日没がちょうどこれくらいの時間で、パドックではまだ西日が当たっていたが、出走馬が発走地点まで移動し、スタンドにファンが集まってきてファンファーレが鳴り響く頃には、日が落ちた。日没になると、いっそう気温が低下し、感覚的には0℃を下回っているのではないかと感じるほど。

 前日、雨に見舞われた帯広だったが、天候の回復した20日には折からの北風で馬場水分がどんどん低下し、ばんえい記念出走の時間には1.7%まで回復した。

 ばんえい記念の出走馬は10頭。1着賞金は900万円。負担重量は1000キロ。この重量を曳くレースはこのばんえい記念だけであり、過去、幾多のドラマを生んできた。昨年はキタノタイショウが初制覇、そして、同馬を管理する服部義幸調教師にとっても待望の初タイトルであった。

 昨年のこのレースで、先行しながらゴール前ばったりと脚が止まり、4着に敗れたフジダイビクトリーが今年は断然の1番人気で、昨年の覇者キタノタイショウが2番人気、ニュータカラコマが3番人気と続いた。

 陸上自衛隊第5音楽隊がファンファーレを奏でて、ゲートが開く。各馬が一斉にスタートし、まず第1障害を乗り越える。息を整えて、第2障害の前で各馬が並ぶ。坂にさしかかり、最初に第2障害を越えたのは、ニュータカラコマであった。ほとんど独走気味にどんどんゴール目指して進んで行く。続いてコウシュハウンカイ、トレジャーハンターと上がり、1番人気フジダイビクトリーは4番目で坂をクリアする。

ニュータカラコマ

先頭で第2障害を越えたニュータカラコマ



 そのままニュータカラコマが圧勝かと思われたが、フジダイビクトリーの松田道明騎手は落ち着いており、ゴール手前10mのところでついにニュータカラコマを捉え、見事に差し切って逆転勝利を収めた。低い姿勢でぐんぐん1000キロを曳く力強さがひときわ目立つ会心の勝利で、昨年の雪辱を果たした。勝ちタイムは3分41秒5。

 フジダイビクトリーは、かつて騎手時代に「ミスターばんえい」と称された金山明彦調教師の管理馬で、牡8歳。父半血ウンカイ、母半血シュクノハルヒメ。馬主は(株)三上建設。生産者は中川郡本別町・本寺政則氏。戦績は152戦27勝。

 金山明彦調教師は、騎手時代にこのレースを6度も制しており、未だにその記録は破られていないが、調教師になってからはこれが初めての勝利で、感慨深いものがあったに違いない。「良い馬を預けて下さった馬主、この馬を仕上げてくれた厩舎スタッフ、そして、勝利をもたらしてくれた松田騎手に感謝したい」と語っていた。

ニュータカラコマ

レース後の記者会見、握手を交わす松田騎手と金山調教師



 また手綱を取った松田道明騎手は、2011年、13年のカネサブラックに続き、これで3度目の優勝。レース後、「金山調教師と相談しながら、計画を立ててこの大一番に向けて調教を重ねてきました。昨年の4着に負けた時のことが頭から離れずにいたので、勝てて本当に良かったです」とコメントした。

 ばんえい記念では、全馬が完走するまで見届けて声援を送るというのが、観戦上の「マナー」である。今年も、第2障害でフクドリが躓き、ハラハラさせられたが、勝ち馬から5分近く遅れ8分33秒6で最後にゴールイン。その時には場内から盛んな拍手が巻き起こった。

フクドリ

最後にゴールインしたフクドリ



 今年のばんえい記念当日の売り上げは1億3038万6800円(前年比1074万8200円増)、入場人員は4443人(前年比267人増)と、まずまずの成績だったが、昨年来の不祥事のあおりを受け「農林水産大臣賞典」の称号がなくなり、関係者のより一層の綱紀粛正が求められる。

ばんえい記念

第48回ばんえい記念口取り風景



 なお、今週末で2015年度の開催は終了し、新年度(2016年度)は4月22日(金)より開幕予定となっている。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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