軽快なスピードだけの6ハロンではなくなった
フラワーパークが1分07秒4で快勝した1996年から、7歳キンシャサノキセキが勝った2010年まで、高松宮記念の中京1200mは平坦コース。春なので高速決着ではない年もあったが、レースレコードは中山のスプリンターズSとそう差がない「1分07秒1」だった。1200mこそベストの平坦巧者でも十分に通用したから、同じGIでも少しランクの落ちる評価だった気がする。
しかし、2012年に新装なった中京には坂ができた。また、あまり高速決着を追及する芝にはしたくない、という方向性も重なった。現在のコースレコードは「1分08秒0」であり、レースレコードは2013年、あのロードカナロアが記録した「1分08秒1」にとどまっている。平坦中京の軽いレースとは一変したのである(※注 土曜日の岡崎特別でコースレコードは更新)。
レベルの高い短距離戦はスタミナも、底力も問われる。あと1ハロンくらい長い距離も平気でこなせるような総合スピード能力が求められる。スプリンターズSや、1400-1600mのとくにハイレベルの重賞はこのパターンが多い。
新しい中京になっての高松宮記念はまだ4回しか行われていないから、たまたまかもしれないが、過去4年の連対馬「8頭」は、典型的スプリンターのように見えて、みんなそれまでに1200mを超える距離でも勝っている馬だけである。ハイレベルの短距離戦の形が生まれつつある。だから、1200m以下に勝ち星の集中する馬は苦しいとか、短絡は控えたいが、坂のある中山のスプリンターズSと同じように、軽快なスピードだけの6ハロンではなくなったと考えたい。傑出した能力を持たない限り、1200mまでにしか好走例のない馬の信頼度は下がるだろう。
馬場が痛みやすい季節で、芝の掘れるジャンプレースも多いから、高松宮記念は今回初めて、中ラチから3mの地点に移動柵のある「Bコース」で行われるが、内がいいわけではない。全体に少し時計のかかるタフな芝に変化はないと思える。
前回、
ハクサンムーンの高速の逃げを捕まえて勝った
エイシンブルズアイの父ベルグラヴィアは、スプリングSの勝ち馬マウントロブソンの母父として登場したミスターグリーリーの直仔。このゴーンウエストの父系は迫力のアメリカの短距離ダート6ハロン、7ハロン、8ハロンを中心に活躍しているので、スピードだけでなくパワーがある。
エイシンブルズアイの血統図には、セクレタリアトと、シデラル(南米アルゼンチンからの輸入種牡馬エルセンタウロの父)。底力を秘め、パワーあふれる種牡馬2頭のクロスがある点が大きな魅力である。
エイシンブルズアイは、前回「33秒6-33秒9」=1分07秒5という素晴らしいバランスラップで快勝したように、総合スピード能力がある。だから、1600mで2勝。1800mの毎日杯でも1分46秒7の好時計で小差2着している。
「やっぱり行く形の方がいい」と、逃げ戦法に戻った
ミッキーアイル、なんとしても行きたいハクサンムーン、譲りたくない
ローレルベローチェなどが引っ張り、中京1200mにしては珍しいハイペースになる公算大。差して勝った前回が示すようにハイペースの展開は望むところ。追撃しつつ、スタミナ能力を生かして伸びてくるはずである。ゴチャつかない外枠を引いたのも幸運。1分06秒9(京都)の持ちタイムはあっても、同じ1200mなら少し時計がかかるくらいの方がいい。そういう底力を秘めるはずのスプリンター=エイシンブルズアイから入りたい。