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ハイペースの展開は望むところ/高松宮記念

  • 2016年03月26日(土) 18時00分


軽快なスピードだけの6ハロンではなくなった

 フラワーパークが1分07秒4で快勝した1996年から、7歳キンシャサノキセキが勝った2010年まで、高松宮記念の中京1200mは平坦コース。春なので高速決着ではない年もあったが、レースレコードは中山のスプリンターズSとそう差がない「1分07秒1」だった。1200mこそベストの平坦巧者でも十分に通用したから、同じGIでも少しランクの落ちる評価だった気がする。

 しかし、2012年に新装なった中京には坂ができた。また、あまり高速決着を追及する芝にはしたくない、という方向性も重なった。現在のコースレコードは「1分08秒0」であり、レースレコードは2013年、あのロードカナロアが記録した「1分08秒1」にとどまっている。平坦中京の軽いレースとは一変したのである(※注 土曜日の岡崎特別でコースレコードは更新)。

 レベルの高い短距離戦はスタミナも、底力も問われる。あと1ハロンくらい長い距離も平気でこなせるような総合スピード能力が求められる。スプリンターズSや、1400-1600mのとくにハイレベルの重賞はこのパターンが多い。

 新しい中京になっての高松宮記念はまだ4回しか行われていないから、たまたまかもしれないが、過去4年の連対馬「8頭」は、典型的スプリンターのように見えて、みんなそれまでに1200mを超える距離でも勝っている馬だけである。ハイレベルの短距離戦の形が生まれつつある。だから、1200m以下に勝ち星の集中する馬は苦しいとか、短絡は控えたいが、坂のある中山のスプリンターズSと同じように、軽快なスピードだけの6ハロンではなくなったと考えたい。傑出した能力を持たない限り、1200mまでにしか好走例のない馬の信頼度は下がるだろう。

 馬場が痛みやすい季節で、芝の掘れるジャンプレースも多いから、高松宮記念は今回初めて、中ラチから3mの地点に移動柵のある「Bコース」で行われるが、内がいいわけではない。全体に少し時計のかかるタフな芝に変化はないと思える。

 前回、ハクサンムーンの高速の逃げを捕まえて勝ったエイシンブルズアイの父ベルグラヴィアは、スプリングSの勝ち馬マウントロブソンの母父として登場したミスターグリーリーの直仔。このゴーンウエストの父系は迫力のアメリカの短距離ダート6ハロン、7ハロン、8ハロンを中心に活躍しているので、スピードだけでなくパワーがある。

 エイシンブルズアイの血統図には、セクレタリアトと、シデラル(南米アルゼンチンからの輸入種牡馬エルセンタウロの父)。底力を秘め、パワーあふれる種牡馬2頭のクロスがある点が大きな魅力である。

 エイシンブルズアイは、前回「33秒6-33秒9」=1分07秒5という素晴らしいバランスラップで快勝したように、総合スピード能力がある。だから、1600mで2勝。1800mの毎日杯でも1分46秒7の好時計で小差2着している。

「やっぱり行く形の方がいい」と、逃げ戦法に戻ったミッキーアイル、なんとしても行きたいハクサンムーン、譲りたくないローレルベローチェなどが引っ張り、中京1200mにしては珍しいハイペースになる公算大。差して勝った前回が示すようにハイペースの展開は望むところ。追撃しつつ、スタミナ能力を生かして伸びてくるはずである。ゴチャつかない外枠を引いたのも幸運。1分06秒9(京都)の持ちタイムはあっても、同じ1200mなら少し時計がかかるくらいの方がいい。そういう底力を秘めるはずのスプリンター=エイシンブルズアイから入りたい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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